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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
「ヴェニスに死す」とインフルエンザ患者との出会い
5月の話。
ヴェニスに出発する前、国内外でインフルエンザ流行の話が取りざたされて、ことさら恐怖を感じたのにはワケがある。トーマスマンの「ヴェニスに死す」がいけなかった。

今年になって読んだこの小説には、ペストがヴェニスを不気味にむしばんでいく様子が描かれている。おかげで、水の都でひとり、またひとり、とインフルエンザ患者が増殖していくイメージが頭にこびりついてしまった。

実際、ヴェニス到着2日目にして、インフルエンザ患者と対面!なんていうドラマ(?)が待っていた。

(下記写真は持っていった予防道具。使い捨て手袋、以前鳥インフル対策用に会社から配布されたなんかすごそうなマスク、うがい薬、消毒ジェル。それに、写真にはないけど普通のフィルターマスク。)
P1540025.jpg

プレスルームで。

「あら、それってインフルエンザじゃない~」と ひどくのんびりした声が目の前で響いて、ぎょっとした。

私のプレスパス発行手続きをしていた女性の隣の隣を見ると、だるそうに腰かけている女性がひとり。
鼻水が出るせいか、鼻の頭が真っ赤。目はうるんでいて、激しく発熱している様子。
本当にこれはインフルエンザだ。

で、その次の瞬間、何が起こったかというと・・・

・・・ 何も起こらなかったのだ。

熱のある具合悪そうな女性は、そのままプレスパス発行作業を続け、周囲は何事もなかったかのようにまた仕事に戻った。
「病院に行ったら?」なんて言う人はひとりもいない。そのまま放置プレー。

「A型かどうか保健所に行って調べたら?」なんていうフレーズは、ヴェネチアっ子の思考回路の中には存在しない。

周囲では何十人もの人たちが働いていたけど、みな無関心。

泡を食ってその場からほうほうのていで逃げだした私は、宿でうがいと手洗い。その後数日間は、朝起きて、喉が痛くないかびくびくした。

そうなのだ。イタリアでは、豚インフルエンザなんて、その他大勢の風邪と同じ認識。感染者数なんて、数えちゃいないのだ。

ヴァポレットだって日本の通勤電車のごとく大混雑。いやーな湿った咳をしている人も多い。狭い路地ではあふれる人で前に進まない。こんな人口密度の高いところで、しかもこんなに無防備ならば、多分相当感染者を出しているのでは、と思った。

改めて「ヴェニスに死す」を思い出しつつ街角を歩いていたら、「黒い水の通り」なんていうのを見つけて、思わず身震いする。ますます不衛生なイメージをかきたてるではないか。

しかしよく見たら、「黒い水(acqua)」じゃなく、「黒い鷲(aquila)」だった。
(大文字にすると地震の被害を受けた都市ライクア(L’Aquila)になる)
神経質になり過ぎてる自分に苦笑。

machiP1540061.jpg


幸い体調に支障をきたすことなく帰国。
日本の報道ぶりを目にした途端、その余りの落差に混乱してしまった。

律義に感染者数を数え続ける日本:
どこ吹く風のイタリア:

成田で北米便だけ監視しても、国内だけでせっせと検査しても、封じ込めは万全とはいえない。世界をトータルで考えれば、ザル状態。
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2009.06.02 Tue | Travel-Italy| 0 track backs,
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