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須賀敦子が歩いたトリエステ ー Via del Monte 「山の通り」 その1
先日ロードレース観戦で訪れたイタリア北部トリエステ。かつて国境紛争に巻き込まれ、スロベニア領になるなど、「未回収のイタリア」として、翻弄されたという過去を持つ。

14時40分、予定の10分遅れでトリエステ駅に到着し、すぐにプレスルームへ直行。駅から1kmと近かったのだけど、それでも少ない滞在時間を考えるとこの移動時間すらもどかしい。

そそくさと2つほどインタビューを取ってから町に繰り出す。16時過ぎからはプロトンが町の周回コースを走るため、それを見るつもり。となると、街中をぶらつく時間は1時間弱しか取れない。優先順位の高い方から片付けて行くことに。

まず地元出身の詩人ウンベルト・サーバが営んでいたという書店へ。そして次に向かったのは「山の通り」。その道 ”Via del Monte”は、すぐに見つかった。

P1560646.jpg

”Via del Monte”という名前のプレートの脇には、この通りを詠ったサーバの詩の一部が刻まれていた。
「A Trieste ove son tristezze molte,
e bellezze di cielo e di contrada,
c’è un’erta che si chiama Via del Monte.」


”山の通り”の話は、下記のエッセー(須賀敦子の「トリエステの坂道」)に登場する。トリエステを故郷にもつサーバは須賀敦子が傾倒していた作家で、彼女はサーバの詩集「三本の道」を訳している。その3本の道のうちのひとつがここ、”山の通り”というわけ。

「トリエステの坂道」には、彼女が必死でこの通りを探そうとした姿が綴られている。なかなか見つからず難儀していたら、ひょいと目の前にこの道があらわれたのだった。

トリエステの坂道―須賀敦子コレクション (白水uブックス―エッセイの小径)トリエステの坂道―須賀敦子コレクション (白水uブックス―エッセイの小径)
(2001/11)
須賀 敦子

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詩の原文をもう少し綴ってみると:

A Trieste ove son tristezze molte,
e bellezze di cielo e di contrada,
c’è un’erta che si chiama Via del Monte.
Incomincia con una sinagoga,
ha una cappella; indi la nera foga
della vita scoprire puoi da un prato,
e il mare con le navi e il promontorio,
e la folla e le tende del mercato.

対応する彼女の訳は:

「悲しいことも多々あって、空と / 街路の美しいトリエステには、 / 山の通り、という坂道がある。 / とばくちがユダヤの会堂で、/ 修道院の庭で終わっている。道の途中に小さな / 聖堂があり、草地に立つと、人生のいとなみの / 黒い吐息が聞こえ、 / そこからは、船のある海と、岬と、 / 市場の覆いと、群衆が見える。」(須賀敦子)

下記がその坂道の入り口。プレートは、”今どきの洋品店”といった風情の店の壁にかかっていた。

P1560647.jpg

TV朝日の番組「世界の車窓から」もこのサーバの故郷を訪れたことがあるらしく、サイトには、やはり同じ詩の一節が引かれていた。ただし、須賀の訳ではないので、言い回しが異なる:

「多くの悲哀と美しさを、空に、街に持つトリエステには山の通りという名の坂道がある」
TV朝日訳

「悲しいことも多々あって、空と街路の美しいトリエステには、山の通り、という坂道がある。」
須賀訳



見上げれば、急な坂道だ。須賀敦子が息を切らせて上った道。

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振り返ると下りの風景はこんな感じ。

P1560649.jpg

さて、この道のロケーションだけれど、実は須賀敦子の本に書かれていたのとは、起点が少しずれていた。

これは私の勝手な想像だけど、坂道の起点は最近ここに変更になったのではないだろうか?というのもこの道の脇にウンベルト・サーバの彫刻があり、完成年度は2004年と書かれている。つまり、それを契機に、坂道の起点を彫刻のあるこの場所に変更したのでは?そんなふうに推測している。(続く)
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2009.05.14 Thu | Travel-Italy| 0 track backs,
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