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三菱一号館美術館「パリ♥グラフィック」展 ブロガー内覧会レポ
三菱一号館美術館「パリ♥グラフィック」展の内覧会に出席させていただきました。


これまでロートレックはある程度見てきたし、新婚旅行ではパリ~オーヴェールシュルオワーズ~バルビゾン~アンボワーズをまわった後アルビに行き、ロートレック美術館にも足を運んでいるので、期待値はそれほど高くはなかった、というのが正直なところでした。

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ところが行ってみると、想像していたような単なるポスター羅列の展覧会などではなく、
関連作品や付随資料がとっても豊富。
それにより、当時の世相が鮮やかに浮かび上がり、多面的で良質の展覧会になっていました。


展示の最後にはゴッホが実際に所有していた浮世絵の展示などという稀有なコーナーもありましたけれど、こちらは今回の協力先アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館ならではのサービス展示といった様相で、西洋版画におけるジャポニズムの影響に力点を置いた展覧会ではありません。

むしろ社会の中におけるリトグラフの立ち位置がくっきり見える内容で、先の日経新聞の評は的を得ていないのでは?、などと感じた次第です。


多面的な展覧会、の証拠は以下のとおり:
(写真は内覧会の折りに美術館の許可を得て撮影。)


1) 画中画により、当時の版画作品の扱われ方が如実に伝わります:

広告が貼られた街中の壁やカフェ・コンセールの様子、版画家の肖像、版画愛好家の肖像、印刷所の様子、印刷をチェックする人の様子、などを描いた作品が豊富で、ビジュアルで世相を伝えます。

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2) パリの街並みの再現コーナーも見どころのひとつ。圧巻の臨場感です。
ここはいにしえのパリ。キオスク、洋裁屋などが立ち並ぶ中、大判ポスターが街の壁に貼られていた様子を、パリの空気の中でじんわりと体感。(こちらは通常写真撮影OK)

実は私、コロン・モリス(パリの円柱広告塔)を中心に大判ポスター広告は展開していた、と思い込んでいたので、認識を正す いい機会でした。


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3) 当時、大衆向けの商品としてのポスターと、上流階級がひそやかに自室で覗き見るような個人向けのもの=ややセンシュアルな内容のもの=という2方向のベクトルがあったことが明確に示されています。

内覧会トークでは、この点に関する同美術館学芸グループ長の野口玲一さんと青い日記帖のTakさんの掛け合いが見事でした。


なるほど、ヴァロットンのあの意味深な絵も、そういう社会のコンテクストの中でとらえるべきだったのですね。
まるで浮世絵の2つの側面=浮世絵と春画の構図のよう。浮世絵コレクターの斎藤氏は「春画を集めないこと」、を条件に浮世絵収集を許された、と本美術館のトークで聞いたのを思い出します。



4) ポスター芸術にかかわった画家の層の厚さにびっくりでした。

中でもナビ派は精力的に取り組んでいた様子。
ヴュイヤールなどは油絵作品と版画を見比べても、アンビエントが変わりません。

(右が油絵)
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一方でゴーガンの作品も3点ありました。
ブルターニュの女性の版画はいかにもゴーガンですが後の2作品はちょっと意外でした。

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ムンクの版画作品も嬉しいサプライズ。
イプセン作「ペール・ギュント」のための劇場プログラムが出ていました。
ノルウェー人2人のコラボというわけですね。

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アンリ・リヴィエールとえば以前三越で見た『エッフェル塔三十六景』のイメージが強いけれど、シャ・ノワールで影絵芝居のプロデュースを行い、そのポスターも手掛けていたのですね。
その上演ポスターがありました。
エッフェル塔とは全然違うモノクロームのリヴィエールが新鮮です。

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5) 制作の媒体にも目を向けさせてくれます。
下絵+木版+リトグラフ作品の3点セットがそろっている珍しい例や、石板の展示も。
油彩の下絵としての版画から、リトグラフが独立する様子も述べられていました。


ジャン=エミール・ラブルールの洗濯(『化粧』より)のリトグラフ(右)、
下絵と木版の3点セット。これらがそろった稀有な例。
左の写真下には、別作品の石版があり、その繊細なタッチは木版とは大違いです。

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6) ロートレック作ロイ・フラー嬢の多色刷りリトグラフでは、色違いでグラデーションの美を堪能できます。
商業的にもなかなかのアイディアですね。

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7)質の違いにも目を向けさせてくれます。
ポスターは後から別の人の手で文字が書き足されることが多く、そうした書き込みの有無もコレクターにとっては重要なポイントなのだとか。
三菱一号館美術館は他人の文字入れがない良質のロートレック作品を所有しており、なかなか自慢のコレクションのようですのでお見逃しなく。==>ロートレックの『ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ』です。写真可能な部屋にあります。
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8) その他にも:
ロートレック3段階の版画からは、制作過程がわかりますし、ボナールが描いた挿絵入りのヴェルレーヌの『並行して』という本のファクシリミリ版を実際に手に取ることもできます・・・


といった具合に、多くのビジュアル素材を通して版画に対する視野も広がり、当時の世相も透けて見え、多角的にリトグラフを堪能できる展覧会だったなぁ、とつくづく思いました。


内覧会の機会を頂きありがとうございました。

******

 
展覧会名 : 「パリ♥グラフィック ― ロートレックとアートになった版画 展」
会場 :三菱一号館美術館
会期 : 2017年10月18日(水)~2018年1月8日(月・祝)
開館時間 :10:00~18:00(祝日を除く金曜、11月8日、12月13日、1月4日、1月5日は21:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日 :月曜休館(但し、1月8日と、「トークフリーデー」の10月30日(月)、11月27日(月)、12月25日(月)は開館)
年末年始休館:2017年12月29日~2018年1月1日

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2017.11.14 Tue | Private| 0 track backs,
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