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見ていて涙が出そうになった絵
社会人になってからフランス語を習い始めて、
上のクラスに進んだ時、原書で美術評論を読む機会があった。

ダニエル・アラスという一流の美術評論家のもので、
主に古典絵画との精神的対話がつづられていた。


特に印象深かったのは、ラファエロの「システィーナの聖母」の絵の章だ。
1時間絵の前に立ち尽くして、ようやくこの絵の意味がわかってきた、
ラファエルの心情に重なることができた、と述べている。


旧来の神という天上の存在が、キリストという生身の人間の形になって
立ち現れた時、これまでのひとつの常識がひっくり返った。
そのドラマティックな瞬間を
カーテンという小道具を使って表したのである、と。


Rafa.jpg 


ここで印象的だったのは、ラファエロの絵の読み解きだけでなく、
アラスが絵に向き合う時の態度だ。


1時間しげしげ眺めて、ある瞬間何かが自分に降りてくる。
そこまでしないと、絵を理解するには至らない。
アラスほどの人でも・・


インスタグラム流行りでレンズ越しに見て
アップして終わり、そんな現代人が多数ではあるけれど、
時々絵の前でまんじりともしない人を見かけることがある。


私はといえば、いつも割と慌ただしいな、
なかなかゆっくり絵と対話できないな、
と常々思っていたのだけど、
今日改めて東山魁夷の「道」の前に立ってみたら、
ずっと眺めていたくなった。
そして、ちょっと泣きそうになった。


IMG_0217.jpg


目の前にあるのはまっすぐに続く道。
すべてを見渡せそうだけど、実はよくみると奥の方で道は右に折れている。

その先は起伏になっていて、遠くの道はほんのり霞んで見えるだけ。

どんな未来が待っているのか、誰にもわからない。
けれど、まっすぐに続く白い道のようにたおやかに歩んでいくことができれば、
穏やかな道が待っている・・・

そう信じることが許されるような気持ちがした。
この絵から包容力や優しさを感じたのは、初めてのことかもしれない。


IMG_0289.jpg



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2017.10.02 Mon | Art| 0 track backs,
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