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「風の影」 <感想>
スペインの作家、カルロス・ルイス・サフォンの
「風の影」を読み終えた。

かなり読みごたえがある。

紙の分量もさることながら(文庫本で上下巻)
波乱万丈の内容で、決して軽い読み物ではない。


冒頭予感した
親子の心温まるホームドラマ、、、という筋書きはあっけなく覆され、
時代をまたぐ波乱万丈な人間ドラマへと発展する。


予想もつかぬめまぐるしい展開で、はらはらしたり、
息苦しくなったりと、心穏やかにページをめくることは
特に後半の大部分において難しく、
本をおいて深呼吸しないと読み進めないことも1度や2度ではなかった。

並行して描かれる2つの人生は、
予期せぬ方向へと流れ、
途中その重なりに気づいた時、
ダニエルの暴走が行きつく果てを想像し、
胸のざわめきが止まらない。


内戦、独裁政権が影を落とすバルセロナの街も丹念に描かれ、
街の残虐性と人間の凶暴性はシンクロし、
現実的な荒廃の中に、悲しさをたたえたメルヘンが入り混じる。


体験したことのない、壮大なドラマが一体
どんなカテゴリーに属するのか、単語を探し当てるのは難しい。

本流だけをつかめば、自己形成小説、Bildungsromanという言葉が思い浮かぶ。
プルーストの「失われた未来を求めて」が時折そう称されるように。

ただ、細やかな心のひだを積み重ねて描いていく「失われた・・・」とは異なり、
本書は、強力なストーリー性でぐいぐい引っ張っていく。

2つの人生を結び付ける手法は自然なやり方ではないものの斬新で、
すべてを一気にひとつの流れにまとめ上げていく。


バルセロナの暗い街角のごとく広がる重苦しさを希釈してくれるものは、
哀しみと優しさをたたえた存在感のない父センペーロや
はちゃめちゃなフェルミンの存在であり、
つまるところ、底辺に流れる作者のヒューマニズムや人間愛なのだと思う。

書物というものへの愛着も漂い、
残酷さの中にも救いを感じつつ読み進むことができた。

最後は爽やかな風を感じつつ
本を閉じた。




<風の影><読後感><ネタバレなし>
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2017.09.17 Sun | Books| 0 track backs,
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