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「正解のない言葉の冒険」 ・・ 絶妙な和訳
日経新聞文化欄で見つけた鴻巣友季子さんのエッセーが
興味深かった。


鴻巣さんは初夏のこの時期、学校をめぐるなどして
ご自身の専門である翻訳に関する認識を広める活動をされている。

実際子供たちに短文を訳させてみると、
予期せぬ秀逸な訳が見受けられるという。

中でも、「風と共に去りぬ」の最後のシーンで
スカーレットがつぶやく言葉、
Tomorrow is another day」を高校生に訳させたところ、
しごく秀逸な訳が飛び出たという。
(私自身、度肝を抜かれた。)

それはー
とりあえず寝よう」・・・


なんたる発想。
普通に「明日には明日の風が吹く」と私なら訳すところ。

原文の音の響きにもマッチして、
しかも、明日の事なんて今考えても無駄よ、
のニュアンスが、もうこれ以上ない端的な言葉で表されている。
絶妙に真意を組んだこの投げやりさ加減といったら。。


上記は言葉の上でずいぶん逸脱した訳なので、
文学作品の実際の訳に採用しうるかどうかは微妙だろう。
とはいえ、
たとえ原文から言葉の上では逸脱しても、
その根っこの部分を的確に押さえているので、
言葉が似ているけど意味やニュアンスが伝わらない、
というケースよりよほどいい。


以前読んだとある訳本は、
原文の細かいニュアンスがキーになる場面で、
それをばっさりそぎ落として、安易な慣用句に置き換えてしまっていた。

確かに日本語のその慣用句は、原文に出てくる言葉が丁度盛り込まれていて、
一見似た印象を受けるのだけど、
原文と比べると、エッセンスが完全にずれている。

言葉や文章の構造が似ていても、
ニュアンスに無神経な訳は残念すぎる。


翻訳って本当に難しい。
筆者の鴻巣さんが言うように、「翻訳に正解はない」のだろう。

それでも、プロの翻訳家さんなら、
言葉や文章に真摯に向き合ってほしいし、
そうした苦労がにじむ訳文であってほしい。
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2017.07.04 Tue | Books| 0 track backs,
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