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『まるごとちひろ美術館― 世界で最初の絵本美術館 ―』展
現在ちひろ美術館・東京で開催中の
『まるごとちひろ美術館― 世界で最初の絵本美術館 ―』展を鑑賞してきた。

本美術館が所蔵するいわさきちひろと国内外の絵本作家の作品の展示のみにとどまらず、
美術館の建物自体にもスポットライトを浴びている点が今回の特色。

これまで何気なく巡っていた建物の魅力を引き出すべく、
7か所に「みどころポイント」と書かれた小ぶりの立て看板があった。

たとえばこの銀色の物体。(下の写真)
不思議なこの物体の秘密が、「みどころポイント」で明かされている。

展覧会名そのままに、まるごとお見せしましょう、という試みだ。


* 本エントリーの写真に関して)
ブロガー特別鑑賞週間に当選したため、撮影しています。

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みどころポイント全7ヶ所を制覇して、
建物全体も、床も天井も、何気ないけどすべて綿密に計画されているのを感じた。


これと呼応するかのように、
展示室4では、建築家・内藤廣さんが設計した安曇野ちひろ美術館と、
ちひろ美術館・東京の建築模型の展示があった。


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建設にあたって館長・黒柳徹子さんの要望書が興味深い。
「今までの、やさしい、Intimateなカンジ・・」などなど、
設計過程からして気持ちがこもった建物なのだった。

その他1階の展示スペースには、ちひろさんのスケッチや
手掛けた絵本の数々。

絵本の挿絵は、ストーリーの具現化が見事。

例えばアンデルセンの童話「赤いくつ」などは、
無慈悲の罰として続けるハメになった主人公を
宙に舞う姿いている。
背景では靴が飛び交い、淡い家並みや教会の尖塔が、
突き刺さるように林立している。

淡く優しいタッチで浮かぶ狂気が巧み。
描かれた教会らしき建物は、主人公が禁じられた赤い靴で
教会に出かけた場面をよみがえらせる。


こうしたストーリーに基づく絵の数々も魅力的なのだけれど、
筋書きにとらわれず、何気ない日常の子どもたちを描いた
作品がいつみても秀逸。

ちょっとした仕草にうかがわれる観察力の鋭さ。
ご自身の出産経験を経て生み出されたからこそのリアルさ。

きっと子育て中、我が子の様々な七変化の表情や動作に
日々感動を覚え、記憶にとどめ、絵筆に留めていったのだろうな
などと想像する。


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こんな感じで絵を眺めつつ、ふと見上げれば、
奥行きを見せることを意識した天井構造に目が留まる。
壁の向こうに消失点があるかのような奥行き感だ。


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2Fには、国内外の絵本がズラリ。


絵本=子どもの本とはいえ、子どもっぽく描こうとするのではなく、
大人の鑑賞者をも引き込む芸術作品に仕上がっているものが多く、
どこか子どもへの敬意を感じさせる。


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ちなみに昨年、
「まるごとちひろ美術館―世界で最初の絵本美術館コレクション・ガイド」
という本が刊行されているのだけれど、監修を務められたのは、
三菱一号館美術館館長の高橋明也さん。
本美術館の評議員なのだそう。

最初は意外な感じもしたけれど、
ちひろさんご家族とのつながりというご縁があったと聞く。
さらに、よく考えれば、2つの美術館にはある意味 共通の基本姿勢がある。
上掲の黒柳徹子さんの「Intimate(親密)なカンジ」という点。

プライベートな邸宅風の雰囲気を漂わす三菱一号館が目指しているのも、
まさにIntimateな美術館だったかと思う。

双方の美術館では、ともにぬくもりのある建物の中で、
じっくりと作品と向き合い慈しむ時間をもつことができる。


ちょっとタイプは違うけれど、
以前訪れたイタリアのパドヴァ市立博物館でもこうした暖かさを感じた。
パドヴァ博では、地元の人が監視員をしていて、
立ち止まって見ていると、あれこれ作家の説明をしてくれる。
みなさん、所蔵作品が大好きで仕方ない、博物館に愛着がある、という感じ。
地元出土のモザイクなどもあり、地元と密着しているせいもあるだろう。

ちひろ美術館も、ちひろさんやその作品、さらに世界中の絵本に対する
愛に溢れている。
今回はそんなことを改めて感じさせる展覧会だった。



まるごとちひろ美術館― 世界で最初の絵本美術館 ―
期 間 : 2015年10月28日(水)~ 2016年1月31日(日)
場 所 : ちひろ美術館・東京
http://www.chihiro.jp/tokyo/museum/schedule/2015/0119_1650.html
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2015.12.01 Tue | Art| 0 track backs,
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