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狩野一信の五百羅漢図展 / 増上寺 宝物展示室 その2 <感想>
絵師・狩野一信がプロデュースした 壮大な羅漢の物語


狩野一信の五百羅漢図展 その1
に引き続き、今回は具体的な感想など。


五百羅漢図展<前期>は、第21幅から第40幅の展示となり、
生前罪を犯した人たちの六道=天、人、修羅、畜生、餓鬼、地獄の世界
が描かれている。


畜生道に堕ちた人間たちを描く「六道 畜生」の中の鳥や動物は、
そこだけ切り取って狩野派の花鳥風月の屏風として、成立しそうだ。

*写真はブロガーナイトの折りに許可を得て撮影しています。

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羅漢のお腹から現れる如来像や、
口から飛び出る三尊仏を目の当たりにして、
敬服・驚嘆する猿たちの表情も豊か。


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近づいて見てみると、
羅漢の胸毛、手や腕の静脈、筋肉のシワなども繊細で、
波打つ衣の襞、文様にも神経が行き届いている。

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羅漢は西洋の聖人を彷彿とさせる光輪をもち、
場面に応じて怒りや慈悲の表情を浮かべ、
1幅ごとの構図・ストーリーは、
一信が想像力の翼を羽ばたかせて描いたという。

その労力たるや計り知れない。
なにしろ100幅だ。

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表情、佇まい・衣服をひとりずつ描き分け、
この目力、みなぎる生命力。

こちらは第23幅、地獄を見下ろす羅漢たち。

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第25-26幅のテーマは「六道 鬼趣」。
強欲で嫉妬深い人が落ちる餓鬼道で、
人間の「業の深さ」「浅ましさ」が全開だ。

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羅漢から施された食物を奪い争う者たち、
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自らの子供を食せんとする鬼母。

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けれど残る第31-40幅については、
羅漢の描き方がこじんまりとして、目力も失せる。

羅漢たちの様子も、どこか日和見主義的だ。
第21-30幅に見られたダイナミズムは影を潜める。


本展及び森美術館の羅漢展に携わっておられる広瀬麻美さん(後述)のお話によると、
第31-40幅は、弟子の一純が描いた可能性が高いそうだ。
つまり100幅全て一人で描いた訳ではなかった。


4年前に江戸博で100幅を見たとき、
最後の方の絵から生気が失せているのに気が付いた。
病に冒された一信の筆の衰え、と捉えていたのだが
どうやら、弟子の代理筆が増えたためらしい。


なるほど、これで謎が解けた。
後半の10~20幅は確かにこじんまりとして勢いがないと感じたのだが、
その変化がリニア=直線的でないのが気になっていた。

後半は一様に繊細さが失せはするものの、
絵のパワーが日に日に衰えの一途をたどるわけではなく、
まったく覇気のない羅漢の絵の後に、
少し生気を取り戻した羅漢があったりする。

絵力に、行きつ戻りつのムラがある、と感じたのだ。

一信の健康が乱高下したのではなく、
弟子の力量の違い、
或いは、均質な画風を確立していない一純以外の不慣れな弟子の作、
と見た方がよさそうだ。


一信の真筆と太鼓判を押された第21-30幅のうち、
たとえば地獄篇は、このド迫力。
おどろおどろしいばかりの烈風・火焔の猛威。

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かと思えば、氷が張る寒地獄も。

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これに比べると、主題が違うので純粋な比較は不可とはいえ、
一純筆と見られる第31-40幅のうち、第36幅「六道 人」などは、
至ってこじんまりした印象だ。

ただ、描かれた橋などに表情があって -

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橋ごとの描き分けもあり、

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空気遠近法とでもいうべき、うっすら霞む遠景、
水墨画を想起させる岩の表現などを見ると、
この一純という人は背景専門絵師として歩んできた人だったのでは、
などと思った。

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同時に、第37-40幅「六道 天」を浮遊する天女が優美でイキイキしていて、


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好色系の人だったのかしら、などと思ったり。


実際、天女とアイコンタクトをかわす羅漢や
食い入るように天女たちを眺める羅漢たちは、
本当に愉しそう。


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今回参加させて頂いたブロガーナイトは、
スライドトーク付きだった。

担当されたのは、
浅野研究所の広瀬麻美さん(森美術館シニアコンサルタント)。
一目見て、ああ懐かしい・・と思わずひとりごちた。

白隠展でも心弾むトークがとても印象的だった。
古美術愛に溢れる語り口は、この日も健在。

聞き上手のTakさん(「青い日記帳」主宰)との掛け合いもスムーズで、
丹念に施された裏彩色の話や、
日本各地の羅漢寺の旅トークも興味深かった。



人間の弱さを容赦なく暴き、
人生の機微や悲哀を漂わせつつ
ユーモアも散りばめ、
壮大なストーリーが展開する五百羅漢図。

美味しいところがじっくり見られて、
後期も楽しみです。
(徳川家康公 薨去四百年記念の年ということで、
年明けに墓所拝観とセットにして伺うつもり。)





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【展覧会名】 : 狩野一信の五百羅漢図展
【展示会場】: 増上寺宝物展示室
【本展公式サイト】: http://www.zojoji.or.jp/takara/event/
【会 期】: 前期:2015年10月7日(水)~12月27日(日)| 第21幅~第40幅展示
: 後期:2016年1月1日(金)~3月13日(日)| 第41幅~第60幅展示
【住 所】: 東京都港区芝公園4-7-35
【休館日】: 2015年12月28日(月)~12月31日(木)、祝日以外の火曜日
【開館時間】: 10:00~16:00(最終入場15:45)
【夜間開館】: 金曜日は9:30~21:00 (入室は閉室の30分前まで)
【入場料】: 一般700円(税込)/ ※徳川将軍家墓所拝観共通券1,000円


※ 墓所拝観単独は500円なので、これはお得!
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2015.11.23 Mon | Art| 0 track backs,
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