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シスレー展@練馬区立美術館 <感想>
■ 描かれた風景に焦点を当て、「河川」という切り口を中心に、趣向を凝らした展覧会


余り大きくブレることなく、生涯風景画に拘った印象派の画家、アルフレッド・シスレー。

印象派展が開催されるたび、その中に必ず1枚か2枚は入っているといってもいいこの画家の絵の企画展が、
練馬区立美術館で開催されている。

中心となる20点のシスレーの絵は、日本国内にある40点弱のシスレーコレクションから集められた。
点数は決して多くはないが、これほどまとまって目にするのは初めてのことだった。

(ブリヂストン美術館でいつも見ていた「サン=マメス、六月の朝」にも再会できた一方で、
同じブリヂストン美術館所蔵の、暗く重たい色調で描かれた60年代の作品「森へ行く女たち」は、
何か事情があるらしく、今回はお目見えなしだった。)


第1章は、シスレーの絵のみ、第2章は、「シスレーが描いた水面・セーヌ川とその支流」と題して
河川工学的アプローチを試み、第3章はシスレーの地を訪ねた日本人画家で締めくくられている。

この構成からもわかるように、シスレーの絵に多く描き込まれている川の情景に注目し、
そこから絵を読み解いていく。


場所の特定をした上で、近い時代の絵ハガキや写真を並べて当時の実際の様子と対比したり、
その頃の河川の様子をパネルで展示解説したり、
同じ時代に洪水を起こした荒川とセーヌ川を対比したり。
国交省との協力により実現した展覧会ならでは、だ。

河川技術が印象派の絵にどのように影響を与えたか、など普段考えないようなことを考えさせるなど、
着眼点がユニークだ。

河川の整備・コントロールにより川のきらめきが戻り、
印象派の画家たちの格好の材料となったことが、展示を通して実感できる。


ややもすると平和すぎるシスレーの絵にこうしたアクセントを添えることで
会場内に活気が生まれている。


とはいえ、そうしたお題抜きでも、シスレーの絵は十分魅力的。

バルビゾン派的な初期の頃のやや重くるしい筆触から、
やがて光を意識して、明るい採光へ。

「サン=マメスの平原、2月」の赤い夕映えは、いつまでも見ていたかった。
かさこそ、と音が出そうな乾いた枯れ葉、やせ細った木々の間からは
赤紫色に染まる空と山がのどかに広がっている。


後半に行くにつれ、
ぬくぬくとした雲、水面のさざめき、木々のざわざわした感じが加わって、
無言の佇まいから、かすかに音が聞こえるような情景へと発展している。

ひろしま美術館所蔵の「サン=マメス」もいい。
あたり一面に、すがすがしい空気がみなぎっている
手前の草花の色が極上の明るいパステルカラーにも心をくすぐられた。
色彩に対して徐々に大胆になっていった様子がうかがわれる。


一同に彼の絵が会したことで、気が付いたこともある。
ほとんどの絵に、小さな人物が描き込まれていた。
自然を突き放した存在ではなく、身近な存在としてとらえることで、絵にいっそう引き寄せられる。


ごつごつした岩肌が際立つ「レディース・コーヴ、ラングアンド湾、ウェールズ」のように、
遠くから見ると、一瞬後期印象派の絵のようにも見える後期の作品もあり、
画風の変遷を実感した。

(この絵は実際は点描画ではないのだけれど、シニャックやリュスが使いそうな
藍色が入っていたせいで、後期印象派を想起したのだと思う。)

シスレーをよりよく知ることができる展覧会だった。


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開館30周年記念「アルフレッド・シスレー展-印象派、空と水辺の風景画家-」
http://www.neribun.or.jp/web/01_event/d_museum.cgi?id=10066

会 期  2015年9月20日(日曜)~11月15日(日曜)
休館日  月曜日
     ※ただし、9月21日(月曜・祝日)は開館、24日(木曜)は休館
      10月12日(月曜・祝日)は開館、13日(火曜)は休館
開館時間 10:00~18:00 ※入館は17:30まで
観覧料  一般1,000円、高校・大学生および65~74歳800円、
     中学生以下および75歳以上無料、
     障害者(一般)500円、障害者(高校・大学生)400円、
     団体(一般)800円、団体(高校・大学生)700円
     ぐるっとパスご利用の方500円(年齢等による割引の適用外になります)
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2015.10.16 Fri | Art| 0 track backs,
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