日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
最後の印象派展@ 損保ジャパン日本興亜美術館
◆ マルセル・プルーストの時代が蘇る展覧会


先日、損保ジャパンで開催中の展覧会「最後の印象派展」を見てきた。

ここでいう”最後の印象派”とは、印象派や後期印象派に続いた人たちではあったものの、
発展形ではなく、そこにとどまった人たちなので、後継者とは言い難い。
印象派から前進していったキュビズムやフォービズムの画家のほうが後継者にふさわしい。

”最後の印象派”の画家たちは時代の潮流に乗らなかったせいで知名度は低く、
一般的によく知られているのは幻想的な画風のカリエールぐらいだろうか。

そのほか私が知っていたのは、たとえば大原美術館で一目ぼれしたル・シダネル、
後期印象派展にも時折登場するアンリ・ マルタンあたり。
でもあとは初見の画家がズラリ。


筆致としてはみな印象派の延長線上にあるけれど、象徴主義の色合いも多少身にまとっている。


写真 3 (54)


ル・シダネルの世界は、人影がなく静かで親密な雰囲気。
大原美術館で見た運河沿いの無人のテーブルに似た風情の
テーブルをアップにした絵もあった。
またしても主なきテーブルが、想像力をかきたてる。

闇に包まれたコンコルド広場の絵もあった。ただ雨音だけが聞こえる日常に神秘が混ざり合った世界。

エタプル(ベルギー近郊)にも画家村があったことを初めて知る。


さらなる発見もあった。
ブランシュなる画家の絵は見たことがない、と思っていたら、
実は彼が描いた1枚は、これまでよく目にしていたと知る。
世に知られる(例のやや女性的な)プルーストの肖像画を描いたあの画家だったのだ。


そしてプルーストといえば、ルネ=グザヴィエ・プリネの絵に「カブールの浜辺」というのがあって、釘づけになった。
映画のワンシーンをストップモーションにさせたような絵で、
フランスのリゾート地を背景に、母娘が風に衣服をなびかせて画面を横切っていく。

これぞ、プルースト作「失われた時を求めて」の舞台バルベックのモデルとなった街。

実はこの7月、プルーストとカブールの特集記事をル・モンド紙の中に見つけたばかりだった。
タイトルが洒落ている。
A la recheche de Marcel Proust。
マルセル・プルーストを求めて。


IMG_6777.jpg


記事は2ページ続きの大特集で興味深かった。

1907年、カブールのグランドホテル開業の話題をフィガロ紙で知るや
プルーストはさっそくこのホテルを訪れる。

以来、夏の定宿とするのだが、3部屋借りるのが常だった。
自分が泊まる部屋、そしてその両側。
騒音を避けるためだ。

そしてここで、かの大作「失われた・・」が生み出された。
バルベックのイメージは、実はノルマンディの海岸をいくつか合体させたものなのだが、
カブールのイメージが大半を占めたそうだ。

1914年、戦火迫る中、このホテルは野戦病院へと転用される。
プルーストは、最後の客だったという。


IMG_6779.jpg


プルーストがあの作品の第一巻を発表したのは、1913年。
著作活動は19世紀末からで、この展覧会の画家たちの活動時期と重なる。

そのせいか、サロンを描いた絵が「失われた・・」の雰囲気と一部重なった。
(ヴェルデュラン夫妻のサロンのシーンなど。)

また、バイオリン奏者のいるサロンの絵などは、
最近読んだ「印象派のミューズたち」の本に登場するドビュッシーらが出入りしたサロンを彷彿させた。

文学の世界にも浸りつつ、じっくり鑑賞した2時間だった。



p.s. アマン・ジャンの描く女性が魅惑的だった。

* * * *

展覧会名: もうひとつの輝き 最後の印象派 1900-20′s Paris
場所: 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
会期: 2015年9月5日(土)~11月8日(日)
休 館 日: 月曜日(ただし9月21日、10月12日は開館)
会場: 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
〒160-8338新宿区西新宿1-26-1損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
開館時間: 午前10時-午後6時、金曜日は午後8時まで(入館は閉館30分前まで)
関連記事
2015.09.15 Tue | Art| 0 track backs,
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
"shw-greenwood" template design by Shallwill