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暁斎展 @三菱一号館美術館 <感想>
縦横無尽、、そんな言葉が浮かんだ。

三菱一号館美術館で開催中の、「画鬼・暁斎—KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」展。

生涯にわたり、幅広い画風・画題の作品を生み出した河鍋暁斎、及び
彼の弟子であり、三菱一号館ビルを始め 明治期の洋風建築を支えたジョサイア・コンドルの作品が展示されている。


メインの暁斎の展示方は、墨一色、太い一筆書きにも近い「布袋の蝉採り図」のような作品から
サイケデリックな色彩が画面を埋め尽くすコテコテの妖怪戯画まで、ジャンルを超えて、実に幅広い。
次から次に着想が溢れた印象を受ける。


いつか読んだ本の中で、狩野博幸先生は暁斎を評するのに「デラシネ」=Déracinéという言葉を使われていた。
故郷喪失者。
料理に例えるなら無国籍料理のような。

江戸と明治時代の狭間に生き、浮世絵と狩野派に学び、あの時代において外国人とのコミュニケーションにも
臆する様子はなく、
さまざまなカルチャーがひとり人間の中に息づいている。

Déraciné =De(分離の接尾辞)+Racine(根)、というこの言葉のもとの意味を考えると、
(私の勝手な造語だけど、)Multi-racinéと称した方が近いような気もする。
四方八方に根が張り巡らされている、そんなイメージ。


前期に続き、今回内覧会の機会を得て、後期を見てきた。
(「青い日記帳×「画鬼・暁斎展」“ブロガー・特別内覧会”」)


私の一番は、
涼やかな目が印象的な「横たわる美人に猫図」と「美人観蛙戯図」。

※写真は、内覧会の折りに許可を得て撮影しています

P8060084.jpg


目の前の動物にすっかり心奪われて、エアポケットに入ったかのようなふたりの美女。
顔の輪郭・顔の造作は迷いのない筆でさらっと細く引かれ、
どちらも右寄りの縦の線と下方の横の線を交叉させたバランスのよい構図。


「横たわる・・」の方は、解説パネルに源氏物語との関連性が指摘されていた。

太い筆で大胆に襞が描かれた着物の様子が
やけにゆるんだ感じで、くつろいでるなぁ、と思っていたら、
帰宅して調べたところ、遊女だと知る。

ほつれ髪、赤い下着、キセルで気づくべきだった。
ほんのり・かすかな艶やかさには理由があった。


「美人観蛙戯図」の方は、相撲を取ったり、人間的な仕草をする荒唐無稽な蛙の姿と、
それをクールな眼差しで見る美女の組み合わせがなんともシュール。

架空と現実的な風景がいっしょくた。
美人画を型にはめない奔放さと大らかさ。
苔むす灯篭もいい。



こちらも線が美しい作品。
「吉原遊宴図」(右)。

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お茶屋の女主人が美形の若者を口説いている図かと思いきや、
学芸員の方に伺ったところ、銭袋を出し、男があてがわれた芸者を取り換える交渉をしている図、
という見方が主流のよう。
右端にひとり立つ女性がその芸者と見られている。
そういえば、表情には妙な緊張感が走っている。

そんな状況に、左のダルマがしかめつらをしている点に注目せねばならないが、
個人的には宴の席で供されている赤い魚2匹が笑いを誘った。
不穏な空気を読み取ったかのように、2匹は皿の上でのけぞっている。
手前の一匹などは大きな目をむいて。


そんな細部が面白い暁斎。
「閻魔と地獄太夫図」(左)もしかり。


P8060089.jpg


閻魔の方がたじたじになるほど、太夫に凄みがある。
なにしろ着物の柄がおどろおどろしい。
袖には腰巻姿の閻魔(?)身ごろには燃え盛る真っ赤な炎。
こんな柄、たとえ画中でも見たことない。


「蛙を捕まえる猫図」や「小禽を捉える鷲図」など、
一見あるひとつの動物図、と見える作品でも、
小動物が加えられ、食うか食われるかの世界が要素として付加される。


こうしたプラスのアクセントは、「鯉図」にも。(左)
鯉の群れの中に、うっすらと朱の身体を見せつつエビが一匹いた。

P8060014.jpg



ガラスケースに展示された画帳兼絵日記には日常生活がイキイキと描かれ、
(表現方法としての絵が本当に好きだったのだなぁ)
でも作品として描くものは、日常生活とは一線を画し、
あらゆる想像力を駆使した世界が広がっている。


(上から2番目の写真の左側)「書画展覧余興之図」の場面さながらに、かなり筆の速い人だったと聞く。
ストロークには自信がみなぎっている。


第2回内国勧業博覧会で2等賞となり100円で売った逸話が残る有名な「枯木寒鴉図」の脇には
その表彰状が展示されており、そこには授賞理由が書かれていると聞いた。

ガラスケースをしげしげと眺めてわかったのは、「平生狂戯ノ風習ヲ徹却セリ」のくだり。
いつもは狂戯風の画風ながら、それを今回排除し、そのうえで腕前が認められた模様。

凛とした孤高なカラスだ。


「九相図」などに見られる死体の図や、オオカミと生首など、
死に体当たりで向き合っている。

死体が転がっている風景に少年時代に遭遇し、
肉体が朽ち果てていく容赦ない死を若い頃から見つめたからこその冷徹な視線があり、
妖怪などおどろおどろしいもの全てひっくるめて、どこか身近な存在だったのではないか、などとも思った。


最後にコンドルの展示では、
暁斎作?と見まごうような絵もあり、また設計図や、
下の写真にあるような建築における業績を収めた本なども。

P8060006.jpg


以前行った清泉女子大の講義
建築家ジョサイア・コンドルの設計図に見る河鍋暁斎の影響
によると、暁斎と出会ってから、コンドルの設計図の色調に変化があったという。

下記手前はコンドル著「Paintings and Studies by Kawanabé Kyôsai」。


P8060091.jpg


去年だったか、コンドルが暁斎に師事していたことをTV番組で知り
この本の和訳を少し読んだことがある。
画法のところが専門的で、途中で止まったままだけれど。
見開かれたページが丁度その対応する原文だった。
原書はなかなか立派な本だった。


暁斎の才能にほれ込んだコンドルのおかげで、かくも詳細な伝記が後世に残った。
人となりだけでなく、制作過程や技術まで。

最上の出会いであったとつくづく思う。

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p.s. ロードレース観戦仲間が暁斎展を見たいというので、後期展示、また行きます。
きっと新たな発見が続々ある予感。


http://mimt.jp/kyosai/

場所: 三菱一号館美術館
展覧会名: 画鬼・暁斎—KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル
会 期: 2015年6月27日(土)~9月6日(日)*展示替えあり
前期: 8月2日(日)まで/後期:8月4日(火)から
開館時間:  10:00~18:00
(金曜と展覧会会期最終週平日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日: 月曜休館(但し、7月20日と8月31日は開館)
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2015.08.07 Fri | Art| 0 track backs,
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