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公然わいせつとみなされ、県警と闘った美術館
東京国立近代美術館で行なわれたシンポジウムにて。


去年、愛知県立美術館が県警から撤去指導を受けた一件につき、当事者の方
(愛知県美術館学芸員の中村史子さん)のお話を聞く機会があった。

講演のタイトルは、「美術館(公共空間)で作品を見せること」。


愛知県美で開催されたグループ展「これからの写真」に展示された
写真家、鷹野隆大さんの作品が公然わいせつとみなされた。

県警より撤去指導を受けたのだが、撤去はせず、その弾圧を世に問うかたちで
あえて一部目隠しするという展示方法をとった、その経緯についての詳細な報告だ。


キッカケは、市民からの通報。
警察署が写真を撮るなど現場を調査。

翌日、県警から撤去の指導がきた。
確認にきた警察署でなく、見てもいない県警からの通達はおかしい、として美術館側は反発。

異例のことながら県警みずから訪問し、結局、指導内容は変わらず。

美術館側は、自分たちの判断だけでは絶対に撤去しない、という姿勢でのぞみ、
鷹野氏と協議。
副館長、出張中だった館長ともに、学芸員に非はないので警察に謝る必要はないと援護。

芸術性を考慮しない即物的な判断に応じることはできないという強い鷹野氏の態度を知り、
撤去しない方向で館側の各関係者の意思が固まった。

さらに、介入の根拠を残せないか検討。
結論として、薄い布で問題箇所を覆い、世に問題を問うた。


いまでも悔しい思いをにじませる学芸員の方のお話からは、
作家への強い支持と、それが終始揺るがなかったことをうかがわせた。

そもそも、開催にあたり、作家の作品に共感を覚え、
問題になりそうな部分を綿密に調べ上げ、相当慎重に検討・対応した上での展示だった。
(過去の事例や弁護士への相談、鑑賞者に理解を求めるための館内パネルによる説明、
口頭での説明、年齢制限設定、カーテンの仕切りなどなど)。


同じ県の組織下にある美術館が県警に楯突くのは随分勇気がいったはずだけれど、
展示前の段階で作品への共鳴、作家への理解、入念な調査の裏打ちあってこその、
毅然とした態度だったのだろう。

(そして、直近の例においては、それの欠落を疑っている。)


ただ、ひとつ気になる。
最初に通報した市民の存在がなければ、こういう経緯は辿らなかった。
通報を受けると、警察はまず現場に行かねばならないらしいのだ。

当時、県警批判は耳にした。
権威を批判するのはしごくたやすいけれど、受け手の側に根強い偏見があり、
それを警察への通報というかたちで行動してしまうことについては
議論は聞かなかった気がする。


あれほど仕切り、説明のための館内のパネルや声かけなど最大限の配慮をして、
鷹野さんの作品への理解を求める発信をしてもなお
一般の鑑賞者の理解が得られなかった事実が気になった。

ただし今後、春画展などでだんだん一般の抵抗感は薄まっていくのかもしれないが。

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2015.08.02 Sun | Art| 0 track backs,
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