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オンニサンティ教会のボッティチェリ「聖アウグスティヌス」
◆ 「春の戴冠」をフィレンツェで拾う その1


以前書いたボッティチェリのお墓があるフィレンツェのオンニサンティ教会は、
中心部からややそれる場所にあるもののお勧めのスポットだ。

お墓だけでなく、見どころがいくつもある。

辻邦生著「春の戴冠」には、この教会にある絵が登場する。
サンドロ・ボッティチェッリ作「聖アウグスティヌス(アゴスティーノ)」。

引用してみる -

そのリネア描線の鋭い、燃えるような鮮明さは、物象の描出のなかで<神的なもの>を模索していたサンドロの苦悩の反映であることは疑えない。(略)

聖アゴスティノの置かれた部屋の極端に誇張された遠近法のために、
人物が前へ浮き出していること、その身体に比して異様に長い手が、
苦悩の様子をまざまざと語るように一つは胸に当てられ、
一つは机の上の書物を支えていること、
下半身に対して上半身が長く描かれ、
空間のなかに深く浸ったアゴスティノの迷走が感じられること、
彫刻のような円い高々と聳えた額、眉と眉の間に緊迫した苦悩を示して刻まれる皺、
長い眉の下に見開かれた苦しげな眼、鋭く突出した鼻と白い顎髭に囲まれた
意思的な唇が肉的なものとの果てしない戦いを表していることー 

こうした事柄が、この聖堂内壁に描かれた壁画に息苦しいような緊張をつくっていたのは事実である。



その絵がこちら。

P6220620.jpg


描線がくっきりしていて、人生の荒波を知り尽くしたような皺が厳しさを漂わすフレスコ画だ。


P6220621.jpg


辻氏は、この絵をまたこうも表現している。

一種の、どぎつい、人間の弱点への凝視を感じさせた。その表現は、その弱点を誇張し、拡大し、鈍化して示すような露骨な、むきだしな、残忍な率直さで貫かれていた。



またこの著書の中で、「サンドロとギルランダイオの競り合い」と言及されているように、
この教会の壁面には、上記のボッティチェリの聖アゴスティーノと対になるように、
ギルダンダイオの「聖ヒエロニムス」が向かい合っている。


P6220637.jpg


こちらの方は装飾性があり明るい雰囲気を漂わせている。

ヒエロニムスの目は鑑賞者を見つめ、視線が心に染み入ってくる。

双方の絵とも、赤を中心にその補色である青緑を使用している点は共通するものの、
あとは対比的な絵だ。

厳しさと穏やかさ、
見ていて気持ちが外に向くボッティチェリと、内に向くギルランダイオ。


P6220638.jpg


こんな名品が手軽に教会で味わえるイタリアの懐の深さが好き。

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2015.07.07 Tue | Art| 0 track backs,
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