日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
オルヴィエートの大聖堂(ドゥオーモ)
突っ込みどころ満載のサン・ブリーツィオ礼拝堂

◆ 自分を振った愛人を地獄絵の餌食にしたシニョレッリの復讐心
◆ レアな偽キリストの絵
◆ 描き込まれた自画像



オルヴィエートのドゥオーモ(大聖堂・1290年着工)には、正直それほど期待していなかった。

ファサードにある細い装飾柱(colonette=コロネット)が壮麗、ということなのだけれど、
数年前、これとよく似た雰囲気のシエナのドゥオーモに行ってしまったため、
これで十分かも、などと思ったのだった。

==>シエナ旅行記:「シエナのドゥオーモに溜息」


スポレートに行く途中に寄るスポットとして便利だったので、
急きょこの地に行くことにしたものの、楽しみは聖堂よりむしろ宿だった。


けれど実際目の当たりにした途端、「来てよかった」と実感した。

シエナとはまた一味違う上品さ 優雅さ 優美さに圧倒された。


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調べると、ファサードの建築主任ロレンツォ・マイターニは、シエナの大聖堂も手掛けており、
両者が似ているのはごく当然。

とはいえ、コロネット以外は、2つの聖堂の相違部分も目についた。

白亜の凝った彫刻が散りばめられ、動的イメージを与えるシエナに対して
オルヴィエートの方は、黄金のザイク画を引き立てるべく、彫刻は控えめで建物とうまく一体化している。
一方で、扉の浮彫は凝っていて、さまざまな聖書の物語を愉しめる。


さらに内部。
特筆すべきチャペル(礼拝堂)が2つある。

うちひとつはルーカ・シニョレッリのフレスコ画が壁面を覆う、サン・ブリーツィオ礼拝堂だ。


礼拝堂入口はこのとおり。
アーチ形の入り口には、外壁に取り入れられているのと似たコロネットが一部使われ、相似関係の印象をもった。

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シニョレッリのフレスコ画が『壁面』を覆う、と上述したが、
実際は側壁ではなくヴォールトに接した半月状のアーチなので、正確には『ルネット』を覆う、と記すべきだろう。

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全編を貫くテーマは最後の審判だ。
システィーナ礼拝堂に同テーマを描いたミケランジェロの発想源ともなったと聞く。
(出典:ABロード


シニョレッリ画”最後の審判”の特色は、偽キリストが登場する点だ。

下の構図で悪魔のささやきを聞くキリストのような人物は、偽もの。
修道士サヴォナローラの悪のささやきに翻弄されたフィレンツェを象徴するかのよう。

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この偽キリストの構図には、自画像が描き込まれている。
黒い装束の左が本人。
右は、最初に壁画を依頼されたフラ・アンジェリコ。

天国図の方でなく、この血なまぐさい図中に自らの姿を描き入れたシニョレッリの意図・感性がよくわからない。

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クローズアップ。
右のフラ・アンジェリコは、天井画の一部を制作したところでローマに招聘されてしまった。(*)

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さらにABロードのサイトで事前に知った情報によると、
シニョレッリは、自分に三下り半をくだした愛人の姿を地獄図の中に投入したそうだ。
だから犠牲者の女性の顔がみな同じなのだ、と。

何とも恐ろしいリベンジ!


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上の写真で見た女性以外にも、いるいる、似た顔が。

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みな、長い髪を真ん中で分けている。
地獄図の中でも女性が連れ去られるこの部分は有名なシーンのようで、「地球の歩き方」に使用されているのもこのカット。

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そのほか、「死者たちの復活」の場面では、地面からむっくりと這い出して来る人々の姿。
目に焼き付くシーンだった。

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本礼拝堂、ルネットの下部には、そのほかホメロスやダンテの肖像画も描かれていた。


どのルネットに、どの場面が描かれているのかを、事前に宮下孝晴先生の著書「北イタリア」で
調べて行ったのが役立った。

主題の流れを把握してから行かないと、ただ 筋肉質のおどろおどろしい絵、で終わっていたかもしれない。

しかもこの本は、多くの写真が白黒なので、実物を見た際に既視感を覚えずに済む。
イタリアの旅ではいつもお世話になっている。


上記(*)の情報も、下記の本を参照しました。

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2015.06.30 Tue | Travel-Italy| 0 track backs,
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