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「フランス絵画の贈り物」/ 泉屋博古館分館(東京) 住友家の美術コレクション
住友家のコレクション保存公開のために開館した泉屋博古館は、
住友家第15代当主春翠(外部からの後継者で、西園寺公望の実弟)の時代の収集品が核を成す。

別子銅山で財を成した家柄なので、ごく自然な流れとして青銅器のコレクションが中心的で、
絵画の収集品はそれほど多くはない。


多方面の美術品収集に興味があった春翠氏。実は西洋絵画収集の意欲もあったようだ。
しかし、あまりうまくいかなかった。

留学の資金援助をした画家・鹿子木孟郎に、現地で絵画の名品を購入するよう依頼したものの、
鹿子木は購入はさておいて、その資金を自らの絵の具代にあてた。

せっせとルーブル美術館に所蔵されている有数の作品(アングルなど)を模写し、
それを住友家に差し出し、
買えない一級品の模写にこそが価値があるのだと、説得してしまった。

鹿子木孟郎が児島虎二郎だったら、コレクションの中身もずいぶん違っていたわけだ。


この逸話を以前から知っていたため、鹿子木は一切絵画を持ち帰らなかったと思っていた。
しかし今回の展覧会で初めて知ったことがある。

購入してきた絵画もあったのだと。
とくに、自分が師事した歴史画家ジャン=ポール・ローランスの絵画については大作を手にし、
住友家に差し出していたようだ。


今回の展覧会では、そのようにして手に入れた作品を含め住友家に残る絵画の数々が展示されている。

これまで見たことのないローランスの大作《マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀たち》を
まのあたりにし、こんなものが日本に存在していたのか、と驚いた。

中央には、20代で戦死したフランスの名将フランソワ=ゼウラン・マルソー将軍のなきがら。
右手に描き込まれているオーストリアのカール大公は、敵方ながら、葬儀に参列した。
脅威を与えた名将に敬意を払うためだ。
参列受諾を得た代わりに、フランスへの遺体引き渡しに応じた。

そんな歴史の一コマが荘厳なリアリティで描かれている。

後年アカデミズムは時代遅れとされたものの、当時としては
一級品だったことだろう。


大きすぎて船舶輸送にするしかなかったという《ルターとその弟子》は焼失してしまったものの、
写真が残っていて展示があった。

モネの《モンソー公園》はなつかしい景色。
地元のオアシスとして親しまれ、冷たいパリのイメージとは程遠い
暖かなぬくもりあふれる公園だった。

おそらくモネのあの絵は、下の写真の構図の逆側から写生したものではないだろうか。

P1370906.jpg


そのほか、ボナールの《曲馬》、ドランの《鳥と雪景色》のようにデザイン性に富む作品、
洒脱で青色の妙が光るミロの《弓を射る人》など、
これまでカタログなどで一切目にしたことのない作品が並び、
プライベートコレクションならではだ。


アカデミズム・新古典主義から印象派を経て抽象・表現主義まで。
質実剛健な住友家の気質・嗜好を反映した展覧会だった。


サイト: http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/

展覧会名:特別展「フランス絵画の贈り物」
会場: 泉屋博古館分館(東京)
期間: 平成27年5月30日(土)~8月2日(日)
時間: 午前10時00分~午後5時00分(入館は4時30分まで)
期間中の休館日: 月曜休館(ただし、7月20日は開館、翌21日閉館)  
入館料: 一般 800円(640円) / 学生500円(400円) / 中学生以下無料
※20名様以上の団体は( )内の割引料金
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2015.06.07 Sun | Art| 0 track backs,
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