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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
『ユトリロとヴァラドン 母と子の物語』展@損保ジャパン日本興亜美術館 <感想>
対象物にぐいぐい迫った肉食系のヴァラドン vs 絵ハガキを見ながら描いた草食系のユトリロ


新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で、親子画家の展覧会が開催されている。
タイトルは、「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語 -スュザンヌ・ヴァラドン 生誕150年-」。
母ヴァラドンと息子ユトリロの競演だ。


感想としては、
母と息子の描き方が対照的で、
画風の差異がそのまま性格の違いを如実に反映しているようで興味深かった。
肉食系の母、草食系の息子・・・

ヴァラドンの方は肖像画が多く、相手にぐいぐい迫るように観察し描いた、と思われる。
ボリューム感をしっかり掴み取って、物怖じしない。
黒い縁取り線もいたって大胆。
絵ハガキをもとに描いたというユトリロのニュートラルな匂いとは異なり、
母ヴァラドンの絵にはエネルギーがみなぎっていて、私は好きだ。


単に2人の画家の絵が時代順に掲げられているだけでなく、
両者の相互関係を感じ取りながらそれぞれ異なる絵の世界を散策できた点で、
なかなかレアな展覧会だったと言える。


奔放な母は遊び歩き、幼児期の彼は祖母に預けられたも同然の生活だったそうだ。
けれど、魅力的な母への思慕の念は強かったと思われる。

母の写真を部屋に飾り、
その前を通るとき、ユトリロは必ず十字を切った、そんな逸話が残されている。
(会場内にはその貴重な写真が飾られていて、下方に、その逸話が文章で書かれている:
Lorsqu’il passait devant, il faisait à chaque fois son signe de croix.)


一方、ユトリロの妻も、別の意味でエネルギッシュだったと思われ、
夫の死後、残されたパレットに、
「これはユトリロが最後に使っていたパレット」などと文字を記して、
夫の事を知っているのは私、と主張しているかのよう。



<個別の感想>

ユトリロの絵は、長年折につけ見る機会は結構あった。
昔のユトリロ展のカタログももっている。

けれど、ヴァラドンの絵を見るのは恐らく初めて。
ルノワールを始め、さまざまな画家のミューズで、
見よう見真似するうちに画家になったというのは知っていたけれど。
(ロートレックと付き合っていたのは初耳だった。)


絵の価値としては息子に軍配があがり、ユトリロの方が絵は高値で売れたそうだ。
母の絵の方は、部屋に置くには、少々強烈なものもある。

たとえば「黒いヴィーナス」。
夫の愛人を描いたものなのだとか。
素知らぬ顔で描く人、描かれる人、
腹の探り合いはあるのか、ないのか、
情念があからさまでない分、どこか静かに怖い。

一方、「窓辺のジュルメーヌ・ユッテル」などは瑞々しくて気に入った。



母と違い、ユトリロは、人物像はほとんど描かなかった。
対人関係面で、引っ込み思案だったのでは。

彼の風景画のほとんどが絵ハガキを見ながら描かれたものだというが
ひとつ、これは絵ハガキではなく、写生に基づくものに違いない、
と思った絵があった。

彼がお熱を上げた女給がいた飲み屋がある界隈の絵だ。
タイトルは:「ベル・ガブリエル、サン=ヴァンサン通り」。

色は全体的に茶っぽくて地味、構図も、整ったサクレクールの絵などとは大違いで、ごつごつしている。
主役であるはずの緑色の居酒屋はわざと隅の方にそっと描かれていた。
(店名 「A La Belle Gabrielle」の一部が読める。)

恋い焦がれた人ゆかりの建物を中央に配置しない点で、彼の控えめさを感じたのだった。


******


展覧会名: ユトリロとヴァラドン 母と子の物語 -スュザンヌ・ヴァラドン 生誕150年-
会期: 2015年4月18日(土)~6月28日(日)
休 館 日: 月曜日(ただし5月4日は開館)
会場: 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
〒160-8338新宿区西新宿1-26-1損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
開館時間: 午前10時-午後6時、 金曜日は午後
公式サイト: http://www.sjnk-museum.org/program/current/2978.html
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2015.05.02 Sat | Art| 0 track backs,
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