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大英博物館展@東京都美術館 <感想> 個別作品編
東京都美術館で開催中の 「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」。

特色は、200万ー180万年前から現代まで、そして世界各地から、
幅広いコレクションを披露することで、何かしら、どこかしら
響くものが見つかる点ではないだろうか。
それは、客観的な歴史的価値といった枠を超え、個人的な体験であるはずだ。

歴史に対するある視点・着目点が、
新たな(しかも強力な)エビデンスで裏付けられ、深く頷くことも多々あった。



個人的にツボだったのは、たとえば《トナカイの角に彫られたマンモス》。

単なる古い彫刻でなく、これが武器の一部だった点に注目。
※会場内の画像は(「大映博物館展ナイト」の折りに))主催者の許可を得て撮影したものです。


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トナカイの角に彫られたマンモス》/1万4000-1万3500年前/フランス、モンタストリュック/大英博物館蔵


投槍器のパーツだといい、解説によると以下のような具合らしい。

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実はかねてから、武器の装飾の起源について、気になっていた。


展覧会で、兜に蒔絵が使われているのを見たり、
(実戦用ではないにしろ)
西欧中世の甲冑に装飾がしつらえられていたり、
(Ref.パリの 軍事博物館のエントリー
春日大社の国宝 金地螺鈿毛抜形太刀の豪華さを知るにつけ。


解説によると、芸術的な作品は4万年前ほどから散見されるものの、
こうした武器への応用は1万6千年前ほどから始まったそうだ。

中世どころかそんな太古の昔から!
デモンストレーションや儀式用でなく、当時はきちんと実戦に使用していた。

男性的な戦闘と繊細な装飾は、一見相容れない組み合わせだけれど、
古代の人にとっては違和感は少なかったようだ。
装飾も一種の挑戦であり、士気を高める効用を見出したのだろうか。



その他の発見は、古代の化粧用パレット。

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古代エジプトの化粧パレット(ウシ)》/紀元前4000-前3600年/エジプト/大英博物館蔵


以前古代オリエントの話を聞きに行った際、化粧という慣習が古い歴史を有することを聞いた。
絵に描かれたエジプト人の目元には、確かにいつも黒いアイラインが入っている。
これは化粧にほかならず、同時期の遺物として小ぶりの壺が発見され、
化粧薬品の調合に使われていたと推測されている。
・・・とここまでは知っていた。

それに加えて、こんな現代でも通用しそうなパレットがあったとは!
しかも動物の型どりがされている。

生きる上で不可欠でないものへの関心が湧き出でるということは、
生活が安定期に入っていたということか。

(もっとも、いまや余裕がなくともゆとりの隙間をつくることが求められていると感じる今日この頃=
忙しい時でも化粧直しぐらいせよ、という私の心の声。)



それから響いたもの。
紀元前3100-前2000年の”給与”記録!

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楔形文字を刻んだ粘土板》/紀元前3100-前2000年/大英博物館蔵


給与、といっても貨幣支給ではないが、労働者に配給するためのビールの量がしるされている。

先日バロック時代の画家が几帳面につけていた収入記録を絵画展で見た。
絵の対価が細かくしるされており、レアな記録!と感激した。
しかしこちらの粘土板は、年代的にその比ではない。

つくづく思う。
こうして記録・管理すべき必要性が生じてこそ、文字の発明へとつながるのだ。



本展の目玉のひとつは、《ルイス島のチェス駒》だそうだ。
ハリーポッターにも登場したという。
ただ私はハリーポッターを見ていない。
有名なものだから感激しなければならない、というものではないだろう。

確かに表情は愛らしく、背中部分の浮彫は細密だった。
けれど私としては、800年頃のキリスト誕生の物語の彫刻の方が、感激した。

サイズはわずか、
長さ 16.8cm
幅 6.45cm
厚さ 0.6.cm (数字はBritish Museum サイトより)

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カロリング朝の象牙彫刻》/800年頃/おそらくドイツ、アーヘン/大英博物館蔵


最上段は、受胎告知。
大天使ガブリエルの衣のひだまで繊細に彫られている。
(白ユリは不在か?)

次はキリスト誕生。
産後の疲れを癒すべくゆったりした姿勢のマリアの姿がしなやか、且つリアル。
超隅っこに置かれ、相変わらず存在感の薄いヨセフ。
目撃者たる牛たちは愛嬌たっぷり。
一般的に生誕場所は馬小屋とされるが、家畜小屋、とも言われており、こちらでは馬でなく牛が採用されているようだ。

光輪もしっかり描かれている。

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上記《カロリング朝の象牙彫刻》 <部分>


アップ写真はないが、最下段は、東方三博士で、3人の博士と幼子イエスの心の通い合いまでうかがわれる。



その他、《ミトラス神像》の風になびくマントも秀逸だったし、

《乾隆帝の詩を刻んだ璧》には、たまげた。

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乾隆帝の詩を刻んだ璧》/紀元前1200年頃、銘は1790年/中国/大英博物館蔵


紀元前1200年の円盤状の玉器に、1790年、銘を入れているというもの。
この璧の用途に関する自説(腕を置くためのもの)を詩にして
この上に刻ませたとのことだ。

新石器時代の品に、勝手に3000年後字を入れるとは、なんと大胆。

中国の書においては、鑑賞者による印や跋文など、ぺたぺた後から追加されていたりするので、
かの国では、芸術的完成後になんらか付加することへの抵抗感は薄いようだが、それにしても
3000年というへだたりをも軽く超えてしまうのは驚きだ。
その鷹揚さには感動すら覚える。



海外の大規模美術館では、展示品の有名・無名に関わらず、なるべくくまなく見るように心がけている。

学生時代は、ルーブルに行けばモナリザの部屋へ、大英博物館ではミイラの部屋へ直行した。
しかし、逸品だからといって必ずしも感動するとは限らない。
むしろ、感動しなければ、といった強迫観念がうっとおしと気が付いた。


個人個人が自らの感性で自由に見る、それがなにより。

とはいえ大英博物館のような巨大な宝庫では、どうしても強烈な個性のものに
目が惹きつけられやすい。
それを今回の展示で補足することができた気がする。


大英博物館展エントリー:
1.大英博物館展@東京都美術館 <感想>
2.大英博物館展@東京都美術館 <感想> 個別作品編
3.大英博物館展@東京都美術館 <感想> エピローグ

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展覧会名: 「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」
会場: 東京都美術館 企画棟 企画展示室
会期: 2015年4月18日(土) ~ 6月28日(日)
休室日: 月曜日、5月7日(木)
※ただし、5月4日(月・祝)は開室
開室時間: 9:30~17:30 (入室は閉室の30分前まで)
夜間開室: 毎週金曜日は9:30~20:00 (入室は閉室の30分前まで)
観覧料その他詳細は、HPを参照
東京都美術館の本展覧会サイト: http://www.tobikan.jp/exhibition/h27_history100.html
特設サイト: http://www.history100.jp/
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2015.04.20 Mon | Art| 0 track backs,
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