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「捏造の科学者 STAP細胞事件」(須田 桃子) 感想
「捏造の科学者 STAP細胞事件」(須田 桃子)読了。

STAP細胞という前代未聞の騒動を、抑えたトーンで語っていく様子が印象的だった。

驚くのは、記事という表に出る記録以外に集められた膨大な情報量。
更に、いつだれが、どうして入手した情報なのか、極めて細やかに
記録するその緻密さ。

この事件の中心人物が5年間に書き留めた2冊の大学ノートのお寒い状況とは
鮮やかな対比をなしていた。


この本を手にしたのは、ツイッターのつぶやきがキッカケだった。
すぐに図書館予約を入れたらすんなり手元に届いた。

他の本を読んでいたため、返却期限が迫り、慌てて読んだのだが、あっという間に読んでしまった。
次々興味が湧いて自然にテンポアップする感じ。


内容はというと、STAP細胞のスキャンダルを事を荒立てて
スクープ・スキャンダル風に語るのでは全くなくて、
地道に積み上げた情報を整理していく手法。


なんといっても、記者の人たちの取材現場が垣間見れて面白い。

どうやって情報を取るか、引き出しの多さがカギになるだけでなく、
笹井氏、若山氏など一流の科学者たちと渡り合えるだけの理解度がなくては
ここまでの取材は不可能だ。


さらに、うがった見方や、ネガティブな観点で取材を進めるわけでなく、
あくまで事実として認定できるか、ペンディングにすべきか、
それらを見極めつつ、結論の出ないものはニュートラルなままにして
独断で片付けない姿勢が随所に見られた。

(須田記者は、STAP細胞の存在自体は、データ捏造とは別にある程度の時期までは信じていたようだけど。)


故人となってしまったけれど、笹井氏のみならず理研の学者さんたち、若山教授らが、
素早く取材メールに長文の回答を寄せるあたり、
科学者の使命感も感じられるし、
記者さんの信頼度もうかがわれる。

渦中の女性からは、一切回答がなかったので、その人の目線で書かれる部分はないけれど、
(個人攻撃にならないよう、当初はとくに気を使った様子もうかがわれる)
理研側の責任者たちからは多くの回答を受け取り、その実文がふんだんに盛り込まれている。


多忙なハズなのに、真摯に回答をよこす笹井さんのサービス精神には驚く。
その数40通。
須田記者も、必ず先方を思いやる文章を盛り込むなど、この上ない人間性が感じられる。


かなり筋の悪い事件だったという印象も深まった。
中心人物の女性は、調査で依頼された資料を数々出さないなど、大胆な無視ぶりが目を引き、
小心者ではとてもできない態度。かなりの大物だ。

コピペだらけの大学の博士課程の論文も、「ドラフトを出してしまった」、と言い訳したものの、
では最終版の提出を、というリクエストを長期間無視し、
やっと出したものは、前日にちゃちゃっと加筆されたもの。
場当たり的な言い訳も目立つ。


その一方、笹井氏のみならず、早々たる学者さんたちの洗脳っぷりが痛々しい。

真偽を問う必要を感じないほど、ぞっこん信じ切っていた様子が、
本人たちのメールから溢れんばかりに感じられる。
次々不審点が出てもなお、信奉し続けているその怖さ。

恐らく、STAP細胞なる神話、およびその神話のミューズを信じたがっていた、
もうそれは理屈でなく、一種熱に浮かされたお祭りだった、
そんな風に宴の後には感じられる。



捏造の科学者 STAP細胞事件捏造の科学者 STAP細胞事件
(2015/01/07)
須田 桃子

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2015.02.03 Tue | Books| 0 track backs,
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