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夢二からちひろへ / ちひろ美術館 
◆ ちひろ美術館 / 夢二からちひろへ ―子どもの本の先駆者たち―


ゆらりゆらりと行き交う大小様々な魚たち。
釘づけになってそれを物珍しそうに眺める子どもたち。

水族館の前に集う子どもの様子は、今となんら変わらない。
着物や袴と洋装が混在する、という点を除いては。


現在、ちひろ美術館で「夢二からちひろへ ―子どもの本の先駆者たち―」が開催されている。


竹久夢二が子供の本の挿絵を?

美人画のイメージが強かったせいで、少々意外な気がしたが、
夢見るような、あるいはほのぼのした瞬間を切り取る技は子供の世界においても健在だった。


上述の水族館の他にも、花の中に立つ少年少女たちなど、
柔らかくて優しい雰囲気が漂うと同時に、
母による絵本の読み語りの絵に見られる繊細な描線はモダニズムを漂わせ、
対象が子供であれ手を抜くことなく、心を込めて描かれている。


*以下写真は、内覧会の折りに許可され、撮影しています。


その他、挿絵が使われた本の陳列も。


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モダンといえば、清水良雄の「なわとび」「シャボン玉」「おひるね」「にほい」の
小型の連作などは、色の風味と構図の妙が際立ってとてもアーティスティック。

「なわとび」では、縄が描く円弧の中で子の身体はよじれて傾き、
弧、伸ばした腕、自身の影が斜めに並び、
大人すらも魅了する、ムーブメントの芸術だった。


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清水氏の履歴を見れば、“東京美術学校・西洋画科卒業。
黒田清輝、藤島武二に師事(WIKI)より”とあり、これら構図の妙のワケが頷ける。


こうした西洋的な芸術性は一部の初山滋の作品にも感じられた。

黒い線で描かれた神話のシリーズ。
アダムとイブや、クピド(キューピッド)なども描かれて、
解説にあるとおり、まさにアールヌーヴォーなのだった。


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その他、岡本帰一の細部まで丁寧に描かれた子どもの世界や、
武井武雄のメルヘンなど、
特徴あるそれぞれの筆致で、児童向け挿絵の領域を進化させていた。


明治~大戦前の時代に創刊された「幼年畫報」、「赤い鳥」や「コドモノクニ」などが並ぶコーナーは華やかで、表紙に随分力点が置かれていたことを感じる。
情操教育として芸術に触れることの大切さを大人が自覚したことの表れか。


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ところがショックなことに、2Fの企画室に入るや、築かれつつあった文化は退化する。
戦争という悪によって。


戦後、子供に配慮した動きがようやく出るものの、1F展示室と時代が逆転したかのよう。
紙が粗末なのは仕方ないとしても、
描かれた子どもたちはもんぺ姿で働かされ
色使いも地味。


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労働の一助となることを洗脳するかのような内容で、
子供の素直な目を通した明るい世界観は見えない。

あれほど華やかに踊った色彩、綿密な筆遣い、夢想的華やかな世界は
一気に萎む。
戦争は、大小さまざまなところで時代を逆戻りさせてしまった。


そんな中、
茂田井武氏の絵が、傷ついた子供たちを癒そうとするかのごとく、
周囲を照らす。

渡欧中に見たらしいアントワープの大聖堂の光を受けたステンドグラス、
それを見入る子どもたち。


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或いは、世界各国の衣装をまとい、楽しそうに踊る子どもたち。

世界にはまだまだ楽しいことがいっぱいあって、
見知らぬ世界、見知らぬ人々が待つ明るい未来があるんだよ、
そんなことを語りかけているかのよう。


その後の展示には、やはり戦争を経たいわさきちひろさんの絵、絵本の数々。


初期のやや硬い筆致はまたたく間にマリー・ローランサン的軽やかさを見にまとい、
相変わらず絶妙な子供の仕草、その観察眼には驚かされる。


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形態模写しているだけではなく、
表出という結果を生み出す前提となった好奇心や喜び楽しさなどまでも写し取っていて、
それゆえのリアリティ。



さて、内覧会のあとは、来た道とは違う道を歩いてみようと思い、ちょっと遠回り。
(白状すると、途中でやや迷い、なおさら遠回りに。)

商店街に行きあたり、ふと頭上を見上げると、
あちこちにちひろさんのイラスト入りのフラッグが、風にはためいていた。


写真 2 (13)


駅には看板。


写真 1 (16)

街に根付いた美術館なのだった。

***

戦前戦後の児童絵画・絵本の歩みが、悲しい歴史を挟みつつ目の前に現れる、
そんな「夢二からちひろへ ―子どもの本の先駆者たち―」展は、
以下要領にて。



場 所 :   ちひろ美術館・東京
公式サイト: http://www.chihiro.jp/tokyo/museum/schedule/2014/0107_1841.html
<企画展>夢二からちひろへ
―子どもの本の先駆者たち―
期 間 : 2014年11月6日(木)~2015年1月31日(土)
場 所 : 展示室1~4
主 催 : ちひろ美術館
ちひろさんの絵の他、竹久夢二、岡本帰一、清水良雄、武井武雄、初山滋、深沢省三、村山知義、茂田井武氏らが手がけた挿絵などが見られます。
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2014.11.17 Mon | Art| 0 track backs,
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