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須賀敦子の世界展 / 神奈川近代文学館
◆ 神奈川近代文学館で充実のとき / 「須賀敦子の世界展」

ここまで大規模の須賀敦子さん関連展示は今後もう望めないのでは?と思わせるほど
周辺の資料をくまなく集めた展示が神奈川近代文学館で開催されている。


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圧巻だったのは、須賀さんの蔵書量の多さ。
和書・イタリア語、英語の本などが、読みこまれた跡をうかがわせつつ大量に置かれていた。

時折参照していた書には山のような付箋紙が付されていた。

一生のうち、一体どれだけの本を頭にたたき込まれたのだろう。
しかも軽い内容の本ではない。深く難解そうなものばかり。
くらくらしそう。
ものすごい集中力。

ネットに割く時間を全て読書にあてたとしても、
これだけのものを読みこなすなんて不可能、と断言できる。


さらに気づかされたのは、61歳で作家デビューされる前の”執筆”量。

日の目を見たイタリア語・日本語の翻訳だけでなく、
出版のめどを立てるために行った簡易訳、
個人出版の本(「どんぐりのたわごと」)
授業のための手元用資料(ダンテの神曲翻訳まで)、
分厚い束になった卒論(須賀さんの卒論は翻訳だった)。

そして夥しい手紙の数々。
編集者宛であってもビジネスライクではなく、時々の感情、周辺状況などが
盛り込まれており、ぬくもりのある内容だ。


「ミラノ霧の風景」があれほど完璧なかたちで出る前に、
相当な溜めがあったはず、とは思っていたけれど、
やはり須賀さんは、若いころから洪水のように書き綴ってきた人なのだった。

61歳から亡くなる69歳までの間で、出版されたのがわずか5冊というのはやや意外。

つまり大半の本が死後に出版された。
異例といえるけれど、自書が世に出る前にアウトプットされてきた言葉の膨大さを思えば、当然のようにも思われる。



ちなみに上述の「どんぐりのたわごと」は、全15冊が自費出版され、
毎回200人に配布されたそうだ。

その中には聖心女学院で6年後輩の現皇后・美智子様宛も含まれていた。
美智子様は、それらを丁寧に読まれていたそうだ。



これほどまでに充実した展示が可能になったのは、
須賀さん自身も含め、あらゆる人たちが関連の品を大切に保存していたからこそ。

蔵書はイタリア文化会館、東大、フィレンツェ大学などに寄贈されたので
大切に保管されているとしても、
原稿案からちょっとしたメモ書き、アイディアをつづった紙片にいたるまで残されている。
恐らく、これらは自身の血肉になったものという意識があったから?


手紙に関しては、受領者が大切にしまっていた様がうかがわれる。
煌めく宝石のような言葉を残した人からだからこそ、
人々は短いハガキひとつにも敬意を表したと思われる。

更に最近発見された新たな友人あての手紙も初公開されていた。


会場内、そこここでウキウキと踊る文字・活字・本、ゆかりの品々。
心底豊かな展示だった。



p.s.1 ちなみに文字・活字文化の日の10月26日は、入館無料。
さらにくじ引きによる景品付き。
ツーレはレターセット、私はハガキと常設展チケットを頂いた。

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p.s.2 唯一の心残りは、本日開催の「須賀敦子の魅力」と題した江國香織さん・湯川豊さんの対談を逃したこと。
気づいたときには満員だった。



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***

神奈川近代文学館
須賀敦子の世界展
 2014年10月4日(土)~11月24日(月・振休)
https://www.kanabun.or.jp/te0173.html
https://www.kanabun.or.jp/index.html

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2014.10.26 Sun | Books| 0 track backs,
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