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古びた書簡が伝える1920年代 / 「建築家ピエール・シャローとガラスの家」展 2
ただの古びた紙切れ一枚なのに、雄弁に当時の様子を伝えている、そんな書簡に出会った。
パナソニック 汐留ミュージアムで開催中の「建築家ピエール・シャローとガラスの家」展で。


(*写真は主催者の許可を得た上で撮影しています。)
写真 1 (2)


黄ばんだレター用紙に手動タイプで打たれたその手紙は、建築家・デザイナーのシャローが、
作品の協力者で鍛冶職人のルイ・ダルベに宛てたもの。


ダルベが不在で電話に出ないため、緊急の用件で“手打ちの手紙”を送ったようだ。
連絡の内容は、一言でいうと、「明日午後一までにあのテーブルを持ってきて」といった要求。


今なら電話がダメならメールで送るであろうそんな性急な内容を、手動式タイプで手紙にしたためている。
なんだか“趣がある急ぎ方”だ。


展示ガラスの中に鎮座する、シャローの生の声が詰まった書簡を、読んでみた。

パソコンのプリントアウトと違い、タイプの文字のかすれ加減がヒューマンな感じ。
書かれた内容がまたリアルで、シャローの意気込みや2人の信頼関係などが、ふわっと浮かぶ。


『ダルベ様、
貴方にお電話で話そうとしましたが、いらっしゃいませんでしたので、伝言を送らせてさせて頂きます。』
そんな書き出し。


シャローは、錬鉄でできた家具一式(un ensemble de meuble en fer forgé)を
パリの顧客(女性)に提案しており、翌日の午後一番で(demain tout de suite après midi)
面会する予定になっているという。

そこで、自身の作品でありながら今はダルベの手元にあるテーブルと画板を家に持ってきてほしい、
と依頼しているのだ。


サンプル作品を見せ、発注にこぎつける、という戦略なのだ。


ここで目に留まるのが、以下のくだり。

「elle a grand peur de la froideur de fer」

彼女(顧客)は、鉄の冷たさに大いなる恐怖を抱いている、という。

そこで、彼は、なるべくモダンさがひきたつかたちで見せたい、と考え、くだんのテーブルが最適と考えたらしい。

鉄の冷たさが「怖い」、つまり当時としてはレアな材質だったことが分かる。


さらに感じられるのは、2人の絆。
Cher Monsieur xx様、とか貴方の丁寧語を使用(ヴーヴォワイエ)してるけれど、
単にビジネスレターだから当然、というよりリスペクトと受け取った。


単に慇懃さでヴーヴォワイエしているなら、
明日見せたい、持ってきて、なんて切羽詰ったリクエストは難しかろう。


さらに、「もしも過分に差支えがあるわけでなければ(お願いします)」という言葉。
単に「もし差し支えなければ」、と言うより少々強引?!


良好な関係が感じられるし、それは互いの技量を認め合ってこそなのでは。


会社形態で制作するのでなく、こうした職人的結びつきから生み出された鉄の作品の数々。

フランス人って、スマートなイメージが強いけれど、合理性だけでない泥臭さを好むとろがある。

それは、ツール・ド・フランスのチーム状況からも感じられること。
アメリカチームみたいにスパッと割り切れず、意外に昔のしがらみや手法を大事にしたりする。


そんなふたりの人間臭さ漂う制作ぶりが、“冷たい鉄”の無機質に血肉を与えているのでは、などと思った。


生の手紙から立ち昇る90年前の人のリアルな姿にワクワクしてしまった、シャロー展にて。


既存の家をくりぬいてつくられたミラクルな家 / ピエール・シャロー展 その1
古びた書簡が伝える1920年代 / ピエール・シャロー展 その2



公式サイト:http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/14/140726/
展覧会名: 建築家ピエール・シャローとガラスの家 ―ポンピドゥー・センター・コレクションが魅せるアール・ デコ時代の革新
場所: パナソニック 汐留ミュージアム、
開館期間: 2014年7月26日(土)~2014年10月13日(月・祝)
午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
休館日:毎週水曜日、夏期休館8月11日(月)~15日(金)
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2014.09.19 Fri | Private| 0 track backs,
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