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既存の家をくりぬいてつくられたミラクルな家 / 「建築家ピエール・シャローとガラスの家」展 1
パリ左岸に、ガラスブロックでできた家がある。
(現在も人が住んでおり、残念ながら基本的に非公開。)


既存の建物を全面リノベートして実現したのだが、
そのリノベート手法が並でない。

最上階・3F部分の住居の住人が立ち退かなかったため、
最上階は手つかずのまま、1・2F部分のみをくり抜いて、内部を3層にして3Fの家としてつくりなおしたというのだ。

(つまり、最上階は、今や4F。)
(最上階の住人、工事中うるさくなかったのだろうか、などと老婆心。)


このファンシーな家を実現したのが、フランスの建築家・デザイナー、ピエール・シャロー。

パナソニック 汐留ミュージアムで開催中の「建築家ピエール・シャローとガラスの家」展で、
そんな彼の業績がふんだんに紹介されている。


(*写真は主催者の許可を得た上で撮影しています。)
写真 1 (4)



かくして出来上がった家が様々な形でで紹介されているのだが、最上階部分とその下では、まるで別物。


改修後、中は一部吹き抜けになって開放的で、
前面にはガラスブロックが敷き詰められ、採光はたっぷりと。

空間の仕切り方も独特で、
多用された階段も、アクセントに一役買っている。


1920-30年代の設計とは思えぬモダンさだ。


昨今ジョージ・ネルソンのデザイン・建築展(本日終了)、ピエール ポランの椅子の展示(シャネル銀座)など、
絵画以外のデザイン系の展覧会がたまたま相次いでいるけれど、それぞれに時代がズレている。

シャローが活躍したのは20-30年頃だそう。
大恐慌さえなければ、もっと長い期間創造性にあふれる作品を生み出し続けただろうに。

彼のおよそ20年後に生まれたのがネルソンで、さらに20年ほど経ってポランが生まれた、
そんな時代感覚だろうか。



シャロー展に際しては、オリヴィエ・サンカルブル氏、千代章一郎氏の講演会を聞き、
1度展覧会を見ていたのだが、Web内覧会があるというのでそちらにも参加。

作品を前に解説を聞けたのが有益で、さらに多くのことに気がついた。


例えばガラスの家の設計図。
初回訪問時は、いくつか設計案をつくったのだな、という表面的な思いでさらっと過ぎたのだけど、
これが多くのことを語っていた。


一例として、導線を多重に取ることで、診療室へ行く患者さん(発注主は医師)、庭で遊ぶ子ども、
その他家の内部に行く人など、鉢合わせにならないようになっている。


廊下側と部屋の内側両方に観音開きの戸棚ががあって、
女中さんが洗濯後の衣服を廊下側から仕舞い、家族がそれを部屋の中から取り出す
そんな発明家的アイディアも!
思わず感嘆の声を漏らしそうになった。


写真 2 (1)



テキスタイルデザインなども手掛けていて、映画にも登場したそうだ。
ポランの椅子が、様々な映画で使われていたのを思い出す。

映画の場面に新鮮さを付加するためにこうしたデザイナー作品は、
格好の小道具だったのかな。

写真 3 (3)



更に目を引くのは、可動式家具。
モビリティがひとつのキーワードらしい。

この机も逆側がアコーディオンのようになって、引き出し部分が扇状に開くかたち。

ネルソンのデスクにやや似ているような感じのものもあったけど、
職人さんとのコラボで細部にも凝っていたシャロー vs 会社組織でカタログ販売していたネルソンの違いはあろうかと。


写真 2 (2)



手前の椅子もやはり可動式で、折り畳める。

家具にモビリテが取り入れられ、人にリベルテをもたらす、そんな意識だろうか。


さらにこの鉄という素材を家具に取り入れるのはかなり斬新だったはず。
(これについては別途その証拠があった。その話はまた後日)。


写真 3 (2)



もちろん、建築家としての側面も、スライド、建築例の写真や模型で説明されている。


公式サイトに素敵な紹介ビデオがあるので、こうした予備知識を吹き込んでから行くと
展覧会での味わい方も深くなるかと。






フレキシブルな家具、のびやかでモダンな家たち、
そしてそれらを可能にした、しなやかな発想。

ベルエポックを経て本格的な消費時代に向かう力・アイディアが随所に見られる展覧会だった。


既存の家をくりぬいてつくられたミラクルな家 / ピエール・シャロー展 その1
古びた書簡が伝える1920年代 / ピエール・シャロー展 その2


公式サイト:http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/14/140726/
展覧会名: 建築家ピエール・シャローとガラスの家 ―ポンピドゥー・センター・コレクションが魅せるアール・ デコ時代の革新
場所: パナソニック 汐留ミュージアム、
開館期間: 2014年7月26日(土)~2014年10月13日(月・祝)
午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
休館日:毎週水曜日、夏期休館8月11日(月)~15日(金)
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2014.09.18 Thu | Art| 0 track backs,
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