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横浜トリエンナーレ2014 その3 教会の一室のような第3話の部屋
引き続き、「第3話:華氏451はいかに芸術にあらわれたか」の部屋で。

石造りの本の展示があり、近づいてみる。


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マイケル・ラコウィッツ
どんな塵が立ち上がるだろう?
2012年手作りのバーミヤン産大理石



タリバンにより石仏が破壊されたバーミヤン産の大理石でできているといい、
上部アクリルボードには、それぞれの書物の来歴が日本語・英語で書かれていた。


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向かって右から:

● ここで表現している書物は、1941年英軍によって爆撃されたドイツ・カッセルの図書館の本の複製だそう。
カッセルの図書館もバーミヤンのごとく、破壊という負の歴史を背負っている。
イギリス軍がドイツのヘッセ州立図書館を爆撃し、かろうじて残った蔵書も2度目の爆撃で全滅。
やがて、この図書館の目録は、ナチスが世界中の図書館を襲って不法に入手した書物で占められるようになった、そんな象徴的な場所。


● バーミヤンの鍛冶屋の石像彫刻用チゼル。
破壊されたソ連軍の戦車と、廃棄されたアメリカ軍車両の部品からつくられたもの。


● タリバンが攻撃を加えたカブール大学の本


● バーミヤン仏像破壊首謀者の告白文。不本意であったが、仏像を修復したいという申し出は、餓死しかけているアフガニスタン人より無機物に思いを寄せる人間がいるということであり、これが許せなかったと。



左手のモニターでは、バーミヤン石仏破壊の後、修復の様子をドキュメントしている。
太陽降り注ぐ中復旧にいそしむ人たち。
悲惨な映像では全くないものの、登場人物たちの何気ない言葉にも、鈍痛のような悲劇性を感じてしまう。


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マイケル・ラコウィッツ
どんな塵が立ち上がるだろう?
ビデオ


バーミヤン石仏破壊修復の際、破壊前と全く異なる足がつけられたという話を聞いたことがある。
オリジナルに関するドキュメントがなにも残っていないらしい。
「復元」というのは、もとの形が把握できてこそ。
ここにあるのは「想像」の対話ばかり。


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貴重なガンダーラ派美術の一部が木端微塵にされた。
それだけでも、むごたらしい。
更に、修復という救済措置はどこか手探りで、想像を駆使するしかない心もとない状況。
喪失感が増す。


この物理的な破壊行為はさらに、思想的背景を伴うので根が深い。

丁度先月読んだ旧約聖書「モーセの十戒」。
いかなるかたちでも、天上、地上、水中、地下、すなわちどんな場所においても偶像をつくってはいけない、とある:
Tu ne te feras pas d’idoler, ni rien qui ait la forme de ce qui se trouve au ciel la-haut, sur terre ici-bas ou dans les eaus sous la terre.


旧約聖書の偶像崇拝禁止はユダヤ教により厳格守られており、これだけ年月が経っても、現存するかたちでは皆無という話。

そうした流れを汲んだイスラム教。
石仏破壊は、単なる武力見せつけでなく、綿々と続く強固な宗教イデオロギーに基づいたものだけに厄介だ。
実際、石仏の目の部分を集中的につぶすなど、深い憎悪が感じられる破壊行為もあったと聞く。



そんな宗教という大義名分で正当化された戦争を糾弾するのがこの《ビッグ ・ダブル・クロス》。

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エドワード&ナンシー・キーンホルツ《ビッグ ・ダブル・クロス》


ダブル・クロスというと、横棒が2本になっている形を思い浮べるが、
こちらは1本。

その代り砲弾を内包している。
みぞおちのへんに重く響くような、静かな抵抗を感じる。


英熟語でDouble Crossといえば、裏切りの意味。
作家の、「宗教の名を借りた戦争は、大きな裏切りである」というメッセージが込められているそうだ。



十字架に向かい合って、書見台には、一見、祈祷書のような「Moe Nai Ko To Ba」も。


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その他、表現方法を求めて奮闘する人々の熱い魂が感じられる釜ヶ崎芸術大学のコーナーも印象的。
法廷の特設舞台では、実際に模擬裁判的パフォーマンスもあるという。


ヨコハマトリエンナーレ2014 「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」は、
ビジュアルと論理的思考、右脳と左脳が同時にフル回転するような、刺激的な海だった。


公式サイト:
http://www.yokohamatriennale.jp/2014/


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横浜トリエンナーレ2014 序章 : アートのゴミ箱に捨てられた一歩手前の美術品たち
横浜トリエンナーレ2014 : その2 鏡文字は頭がクラクラするのだった
横浜トリエンナーレ2014 : その3 教会の一室のような第3話の部屋

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2014.08.15 Fri | Art| 0 track backs,
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