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横浜トリエンナーレ2014 : その2 鏡文字は頭がクラクラするのだった
ヨコハマトリエンナーレ2014のタイトルは、「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。
レイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度(Fahrenheit 451)』から着想を得ているという。


華氏451=摂氏232.8度。
紙が自然発火する温度を題名にもつ本小説は、“焚書”を暗示しているかのよう。
実際、近未来において書物は非生産的なものとみなされ、燃やされる、というストーリーだそう。

そんな書物虐待を暗示するような作品が、展示室第三話の部屋にあった。

山積みになったペーパーバック。(これ全体が作品)
表紙にはFahrenheit 451の文字。



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ドラ・ガルシア/『華氏451度』


元に戻すこと前提で、テーブルの上の本は、自由に手に取って開いていいという。
めくってみる。
何語だろう?読めない。


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上下逆だったか?と思わず逆さにしてみたり。
なんだか気分が悪くなる文字だ、、と思ってふと気が付いた。
左右逆、つまり鏡文字なのだ。

撮影可能だったので本を写真に収め、自宅でPC上に画像を出し、左右反転することに。


こうやってPC画面の脇に鏡を直角に当ててみる。
表紙がノーマルになった。


P1610898.jpg


中の文章。鏡を当てると英語と判別できた。

P1610899.jpg


鏡を通すと確かに読める。
「鏡」文字を実感する。


P1610896.jpg


読んでみる。

“Why, it was at –“
She stopped.
“I don’t know” she said.
H was cold. “Can’t you remember?”
“It’s been so long.”


これらの本、作品タイトルは『華氏451度』だけど、作者はドラ・ガルシアになっている。
つまり、これは、ブラッドベリの書をもとにした別のアートのかたちだったのだ。

表紙には燃え盛る炎。
読むことを禁じられた近未来、読むことが禁じられ、読めないようにしてしまう発想。
鏡文字の奇妙さもあいまって、強い反逆精神を感じる。


この第三話の部屋は、足を踏み入れた途端、教会の様相を呈していて、戦争がらみのものが多く見られた。

忘れてはならない事実を突き付けるかのごとくヘビーな空気に包まれており、
忘却の海から拾い出さなければいけないものたちで満たされていた。


例えば、画家・松本竣介の妻禎子宛書面。

ガラスケースに入った地味な展示だけれど、その手紙の日付を見た途端、
足を止めずにはいられなかった。

几帳面な字で綴られた3通の手紙、
日付はそれぞれ、1945年8月14、8月15日、9月4日。
終戦記念日とその前後という劇的な瞬間のものだった。

もうこの手書きの日付だけでも、強いメッセージ性がある。
悲惨な歴史の証言が、生々しいぬくもりで胸に迫る。


写真撮影禁止だったので、手紙のさわりを一部書き写してみた。
終戦前後の心境の変化を追ってみたくて。
誤記もあるだろうけれど、以下。


1945年8月14日
「戦争は実につまらぬものになってしもうた。少しでも人々の生活に美しい物を残していくような仕事のできるような者にしなければならない(以下略)・・・」


1945年8月15日
「痛恨やるかたなし 事ここに至ってはもっとも正しい道であろう(以下略)・・・」


1945年9月4日
「マケタマケタニホンハアメリカニマケタ オトコノコハミナメニナミダヲタメ
ゲンコツヲニギリテ ザンエンダザンエンダト イッテイルヨ」


文面からは、戦争から距離を置く姿勢が感じられるけれど、それでも敗戦後、意気揚々といった感じでもなく、
あらゆる思想を持った者にとり、この戦争はなんらかのかたちで禍根を残したことがうかがえる。

彼自身戦争には行かずに済んだものの、当時の画家たちの宿命だった戦争画家の道を拒んだと聞く。
NHK「日曜美術館」でも彼の絵は紹介されている。


対面の壁にはバーミヤンの仏像破壊を取り上げた一連の作品。
この問題は深い。一筋縄ではいかない・・・
じっくり見ないといけない作品だ。


(続く)

****

横浜トリエンナーレ2014 序章 : アートのゴミ箱に捨てられた一歩手前の美術品たち
横浜トリエンナーレ2014 : その2 鏡文字は頭がクラクラするのだった
横浜トリエンナーレ2014 : その3 教会の一室のような第3話の部屋

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2014.08.11 Mon | Art| 0 track backs,
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