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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
サンタルカンジェロ・ディ・ロマーニャで見た秀逸ボタン博物館
「ロレートの町は大したことはないわよ」、
リミニのカフェテリアで隣の席になった女性とおしゃべりしている最中、こう言われた。


翌日はアンコーナからバスでロレートへ行くつもりだったのだが、その一言で辞めにした。

ロレートは、唯一 大聖堂が売りと聞いていたのだけど、モデナですごいのを見てしまったし、
ちょっと毛色の違うところに行こうか、という気になった。


そこで、リミニ郊外に行くことに。
理由は、広義のリミニを全域カバーするバスの7日券を所持していたから。


リミニ中心地の移動の場合1ゾーンの24時間券の方が断然お得なのだけど、
万が一ゾーンを乗り越ししたら嫌だし、都度検札機を通すのもめんどくさく、
私は郊外全てをカバーする7日券を買うことにした。

せっかく郊外バスに乗れるのなら、どこか行ってみようよ、という安直な発想だ。


観光案内所で郊外の見どころを聞き、勧められるがまま、
何があるのかも知らずにサンタルカンジェロ・ディ・ロマーニャ という街へ。

つまらなかったらさっさと帰ってくればいい。
バス代無料だし!?


宿そばの停留所から1時間で到着。

街の中心部がどっち方面かもよくわからず歩き出す。
なかなか感じのいい街だ。
中世風のお城もある。
(あとで地元の人に聞いたら、ここは一般公開はしておらず、個人の持ち主がいて、
夏だけの別荘といった感じで使用しているそう。)


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突如現れる古代風の柱。
こういうのが好きだ。
日常生活で出くわさないものを求めるのが旅だと思っているので。

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途中でインフォメーションオフィスを見つけ、地図をもらい観光スポットを聞く。

お勧めのひとつが入場無料のムセオ・デル・ボットーネ=ボタンの博物館だった。

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入ると、オーナーらしき男性が、さっとそばにきて説明を始める。

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「これはね、ピカソがココ・シャネルのためにデザインしたボタン。」

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「これは、マリー・アントワネットが使用した貴重なもの。」

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「とりわけ僕が好きなのはこれ。
冷戦終結で鉄のカーテンが取り払われ、米国とソビエトが手を携えた記念に作られたもの。
両国の融和の証として、単なるボタンである以前にシンボルなんだ。」

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見るとニューヨークの摩天楼とクレムリンが描かれたデザインだった。
USAとソ連を表すCCCPの文字。

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「この中で一番古いのはこれ。1600年の中国のボタンだよ。
中国まで買い付けに行ったんだ。」

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「買い付けのために海外に行くこともしばしばだ。
ベルリンの壁崩壊のときも飛んで行ったよ。」
(といって壁のかけらを見せてくれた。「お金を出せば買えた」、とのこと。)

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「シャネルやヴェルサーチといったブランド品のボタンもお気に入りだけど、
特に“xx”製のは、とびきりキレイだね。」
(“xx”という単語がわからず首をひねったら“コンキリア(の裏側)”と言っていたので、
フランス語でいうところのコキーユ=貝のことと思われ、螺鈿のことらしい。)

いかにもアフリカといった感じのお面ぽいボタンや
こうした美しいヴェネチアグラスのボタンなどは、見ただけで
どのあたりから来たボタンか わかるのも面白い。

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おびただしい数のコレクションなのに、
日本へは買い付けに行ったこともなく、日本製は1つもないという。

もともと着物文化の国だから、日本を象徴するような古いボタンなどは余りないのかもしれない。

でも、蒔絵のボタンとか、浮世絵入りとか、これぞ日本風のボタンがあったら
誰かこの博物館に寄付してくれないかなぁ、と思った。

この圧倒されるようなボタンの宝庫の中に、なにか日本のものを殿堂入りさせたい。


とにかくその数の多さは圧巻だ。

「クアル・エ・ラ・パッショーネ・ペル・イ・ボットーネ! マ・ペルケ?」
なんたるボタンへの情熱。でも何故?
聞くと、こんな答え。

「僕はもともとボタンを売っていたんだ。
みるみる間に膨大な数になり、店をたたんだあとはこうして見せることにした。
世界にボタン博物館はあちこちあるけど、売って・集めてという由来をもつ博物館はここだけ。
昨夜もラジオのインタビューに応じて30分もしゃべらされたよ。
テレビや雑誌にも出たしね。」


とにかく壁中ボタンだらけ。
ほかにも例えば -
ヴァチカンの傭兵のくるみボタン。

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モーツァルトが使用したもの。

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ファシストのボタンはやはりいかめしい。

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マリー・ローランサンの絵をボタンで作った額。

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2間続きの部屋の奥にはこんな洞窟も。
この住居兼博物館、歴史的建造物を利用しているようだ。

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最後に、「ちょっとちょっと、こっちへ来てごらん」というので奥へ行くと、
「この中からこっそり君だけにひとつプレゼントするよ。スワロスフキーのボタンか、これ(花の模様の大き目のボタン)。」

見せられた箱には100個ぐらいボタンが入っていて、
入館者に「君だけに」などと毎回言ってあげているのだろう。
スワロフスキーの小ぶりのものを頂いた。

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更に、「そのカメラ、セルフシャッターは付いているだろう?
ツーショットを撮ろう」と言ってくる。

使い方がわからない、というと、じゃあこうして撮ろう、
と、カメラをこちらに向けて2人を収める格好でツーショット写真をまんまと撮影してしまった。


こんな夫の様子は毎度のことらしく、
傍らでは奥さんが、知らん顔して別のお客さんに説明していた。

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このオーナー、大したものだな、と思ったのは、子供たちが目の前を通り過ぎたとき。
素早く彼らを呼び止めて、ボタンの説明を始めた。

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そして中に呼び入れ、子供たちに様々な啓蒙的な話をしていた。
チャラチャラ女性だけを捕まえて熱弁をふるうだけではない。
筋金入りのボタン愛好者だ。


博物館を後にして、あとは地元出身の芸術家のギャラリーに寄ったり、ローマの遺跡らしきものを見て回ったり。



ぶらりバスの旅。
小さな街で見つけた至宝のような博物館。
雄弁で情熱的なオーナーが抱くボタンへの思い入れ。

有名な観光地巡り以上に思い出深い1日となった。



この驚くべきボタン博物館のサイトはこちら:
http://www.bottoni-museo.it/default.htm



* * * * *

◆ イタリア/エミーリア・ロマーニャの旅 エントリー一覧:

・ ラファエルの故郷ウルビーノにて ラファエルを見守る父の像を発見
・ ハイライトはウルビーノにあるラファエロの生家
・ ウルビーノの城門に上る
・ ウルビーノの画材屋さんで見つけたこんな演出 vs 秋葉
・ ウルビーノのドゥカーレ宮殿

・ リミニの円形闘技場
・ リミニ市立博物館の実力
・ リミニ/2世紀の外科医の家 その1 患者の落書を読んでみる
・ リミニ/2世紀の外科医の家 その2 出土されたガイコツは
・ リミニ/2世紀の外科医の家 その3 再現編
・ リミニとウルビーノ/マラテスタ寺院と国立マルケ州美術館の十字架像

・ サンマリノ共和国・グアイタの砦で石に書かれた署名探し
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・ イタリア/エミーリア・ロマーニャの旅 サンマリノ共和国・街の至る所に3つの塔

・ モデナのドォーモの浮彫 序章・ モデナのドォーモへの道
・ モデナのドォーモの説教台に描かれた最後の晩餐
・ モデナのドォーモ正面に彫られたアダムとイブ・ モデナの大聖堂壁面に描かれたカインとアベルの物語(前半部分)
・ モデナの大聖堂のカインとアベル続きとノアの箱舟

・ 海と古代と中世と。豊かなアンコーナ
・ サンタルカンジェロ・ディ・ロマーニャで見た至宝のような博物館
・ 終章 サンタルカンジェロ・ディ・ロマーニャの家並み


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2014.05.26 Mon | Travel-Italy| 0 track backs,
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