日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
三井記念美術館  / 展示室は重役室食堂 つづき 
三井記念美術館で開催中の「特別展 超絶技巧!明治工芸の粋」の逸品の中から、まずは2点のみピックアップ。


● 並河靖之「蝶に花の丸唐草文花瓶」(七宝)

黒で仕切るモンドリアン的発想が斬新で、なんてモダンな柄!と唸ったのはこちら。

難しい色合いを統合しているけれど、ちょっとした構図の変化でバランスが崩れてしまいそう。
かなりチャレンジングな作品。

形は徳利のようで、小ぶり。
西洋の風味を感じさせつつも、一輪ざしというささやかさが日本的で、
なんともいとおしい。

*以下写真は内覧会用に特別許可を得て撮影:

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● 安藤緑山「パイナップル・バナナ」(牙彫・木彫)

今回の展示の売りのひとつが安藤緑山の彫刻作品群。
象牙という堅い素材を自在奔放に扱っている。

やや黒ずんだ剥きかけのバナナなど、リアルな果物たち。

ただ、単に写実に拘った作家、というよりも、
キレイで無傷な果物ではなく、ありのまま、或いは食べられようとする過程を写し取っていることから、
それら果実を、単なる鑑賞対象としてではなく、命を吹き込まれた我々同様の生物として
安藤緑山は捉え、表現しようとしていたように思う。

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内覧会の所感など、本展覧会に関する続きはこちら:
http://masciclismo.blog.fc2.com/blog-entry-6.html


***

サイト:http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
場所:三井記念美術館
展覧会名:「特別展 超絶技巧!明治工芸の粋」
会期:2014/04/19~2014/07/13
会館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日、5月7日(但し4月28日・5月5日は除く)
料金:一般1300円、大学・高校生800円、中学生以下無料

※「5月18日(日)「国際博物館の日」を記念して、5月18日当日に限り外国人および大学・高校生の方は無料でご入館いただけます。」とのこと。


(以下詳細を折りたたんで掲載)
「特別展 超絶技巧!明治工芸の粋」 2014年04/19~07/13 @三井記念美術館
近頃、個人コレクターの名品を、名だたる美術館で目にする機会が増えている。

斎藤文夫氏の浮世絵コレクションが並んだ三菱一号館美術館「浮世絵 Floating World 珠玉の斎藤コレクション」(2013年6月22日~9月8日)、
今夏公開の橋本貫志氏指環コレクション展「指輪 神々の時代から現代まで ― 時を超える輝き」(国立西洋美術館・氏から同館へ寄贈された指環の展示という形式)、
そして現在三井記念美術館で公開中の「超絶技巧!明治工芸の粋―村田コレクション一挙公開―展」。

これまで展覧会というと、“油絵”が“テーマ別・作家別・様式別”に展示されているもの、というイメージがあったけれど、
これらは、“(小規模美術館に置かれた個人コレクションのような)目に触れる機会が少ない”“博物館的な展示物”。


美術館増殖により多様なテーマが求められるようになったせいなのか、
あるいはネット媒体など拡散能力のある宣伝手法を得てマイナーな展示へのチャレンジが可能となったせいなのか・・
いずれにせよ、絵画一辺倒から視点が広くなって、喜ばしいことには違いない。


今回の「超絶技巧!明治工芸の粋―村田コレクション一挙公開―展」は、村田理如氏の収集品で構成され、平素は京都の「清水三年坂美術館」で公開されている。


内容は、七宝、自在、牙彫・木彫、薩摩、漆工、金工、刺繍絵画、刀装具、印籠等で、いずれも精緻を極めた名品揃い:
単眼鏡を使って、やっと判別できる米粒のような蝶の一面模様、
堅い素材を自在に操って生み出した彫刻や細工もの・・などなど。


目を見張る工芸品の数々を鑑賞し、そのうえで
個人的に一番気になったのは七宝だった。

特に並河靖之の七宝は、いずれも柄の配置が絶妙で、当時としては新感覚だったに違いない、と思わせ、吸い寄せられるように見入った。

先に別途触れた「蝶に花の丸唐草文花瓶」や、入口正面に堂々と置かれていた「花文飾り壺」の極小模様の技巧もさることながら、
下の作品など、黒というシックな背景に抑さえた色彩の蝶が舞い、ハイセンス。

(以下、パリとトーハクの写真を除き、内覧会出席時に、許可されて撮影した写真です。)


● 並河靖之「蝶図瓢形花瓶」(七宝)

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下ぶくれの丸みに合わせて蝶を配し、形と柄の融合具合が絶妙。

その他桜の花模様の花瓶もあり、上部の膨らみに合わせるかのように桜が満開に咲き誇り、
花瓶の上の花見に酔いしれる。

これら技法は有線七宝というそうだ。


片や無線七宝という技法を用いたのがこちら。


● 濤川惣助「富嶽図シガレットケース」(七宝)

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金属線を後で抜くことで、ぼかしと滲みが生まれ、雲・雪山の雰囲気を醸すことができる由、説明を賜った。
ただ、並河靖之の作品のような密集した細密模様には不向きと見える。
所有者の村田理如さんが、「有線の方が好き」ときっぱりおっしゃったのもうなずける。



● 海野勝珉「鳳凰花桐文銀装兵庫鎖太刀拵」

明治天皇への奉納用につくられたものの、15年もかかってしまい、崩御前に収められなかった、、
そんな逸話が残る太刀がこれ。

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なるほど、納め先が皇室とあって鳳凰なのか。

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こうした太刀だけでなく、武具にデコレーションというのは最初は違和感があった。
初めて見た機会はサントリー美術館で出会った華美に総装飾された兜。

がしかし、その後、派手な装飾を施された鞍や甲冑など意外に多く存在していたことを知る。

やがて、日本のみならず、海外でも同様の現象を目の当たりにした。


以下昨年訪れたパリ軍事博物館でも、

デコレティブな大砲など。

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把手はアムール!

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古今東西、散り際は美しく、命を賭けた戦でも男の美学を貫いた証なのだろうか?

と思ってふと解説を読めば、パリで見た大砲は、実践用ではなく、初めから装飾品として作製されたそう。

上述の村田コレクションの太刀も、天皇家奉納用だったわけで、こうした華麗に飾り立てられた武具は、実用としてでなく、はなから鑑賞用としてつくられただけのよう。
戦意を盛り立てる意図があったか、武具を芸術品と見立てた理由はわからねども。



その他、薩摩の茶碗に描かれた人々も生き生きしている。
ここまで微細な線で、あの動き・表情をつけられるとは。


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薩摩は茶碗だけではない。貝合わせの趣向も。


● 陽山「浦島太郎図貝合形蓋物」(薩摩)

あでやかな竜宮城がミクロの世界に広がって、ワクワクする。
波の模様も絶妙だ。

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洋風の薩摩もある。

● 錦光山「菊唐草文ティーセット」(薩摩)

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輸出用と聞くが、敷き詰められた金銀の菊花のこの繊細さは海外の陶磁器には真似できない。

リモージュ焼きを彷彿とさせる藍色に金色の極細模様が浮かぶトレイは小宇宙のよう。


蒔絵の硯箱も。

● 白山松哉、守屋松亭、押川霊華「勿来関蒔絵硯箱」(漆工)

蓋の内側には春爛漫、桜咲き乱れる勿来(なこそ)関の風景。
「吹風をなこその関とおもへともみちもせにちる山桜かな」

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外側は馬の絵。
今年は午年。

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草花を描いた細部も手抜きはない。

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このたびの展示では、安藤緑山など、埋もれて日の目を見ない工芸作家たちを見直す機会を狙ってもいるようで、
”有名人”に言及するのは関係者の意図とは異なるかもしれないけれど、
老猿を思い起こさせる狸のしっぽの流れるような毛並が印象的で
人間のような肢が可愛くちょっぴりセクシーだったので掲載 - 


● 高村光雲「法師狸」(木彫)

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更には、”自在”のシリーズや、「展示室は重役室食堂:三井記念美術館」で触れた安藤緑山など見どころ多々。

自在もまたどれも精巧にできていて素晴らしかったが、トーハクで見た伊勢海老に衝撃を受け、あれこれじっくり見まわしたせいもあり、
今回余り写真は撮らなかった。


野菜の牙彫の生きの良さが目を引く安藤緑山は山下先生によると、弟子もとらない偏屈で、お墓の場所も特定されていない、謎多き人物。
それだけに作品は埋もれがち、正当な評価を受けているとは言い難いようだ。

絵画などは画家の人生をたっぷり耳にして、更に作品を掘り下げる機会が得られることが多いけれど、
このように、出自不明の捕えがたい作家の場合、作品自体から様々感じることはあっても、
それ以上の何か、作家の人間性を浮かべるなどの作業が困難で、やや不利な部分もあるのかなぁ、
或いは、野菜シリーズなどの作品が芸術品としてより民芸品ととらえられ、評価が一定ラインを越えにくいのかなぁ、
などと思ったり。


村田さんのお話の中で印象的だったことがある。
一旦購入したものを、状況次第で手放すというくだり。

もっと上を目指し、更によいものを入手するために、
最上級品と思えなくなった手元の美術品を売ってしまうのだそう。

執着するばかりでなく、攻める姿勢が極上のコレクションを生んでいるようだ。


美術館として展示に関し力を置くポイントなどは、以下を参照:
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
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2014.04.27 Sun | Art| 0 track backs,
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