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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
唯美しく ザ・ビューティフル
数か月前、三菱一号館美術館の「唯美しく ザ・ビューティフル」展のフライヤーを見て、ちょっと感激した。
「おお、Midsummerが来日するのね」と。

ラファエル前派に夢中だった留学中、6ポンド弱で手に入れた手のひらサイズの冊子
(下記=タイトルは「The Pre-Raphaelite Vision」=私のバイブル)に ---

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--- この絵(下)、アルバート・ムーアの「Midsummer(真夏)」の絵が載っていた。

エキゾティックでちょっとけだるくて、オレンジ色が強烈。

ロセッティが描いたファム・ファタル系の作品とはどこか違って、異彩を放っていた。

これもラファエル前派のくくりになるのか、と少々意外に思いつつ、はて実物はどこにあるのかな、
と巻末の情報を見てみれば、Russell-Cotes Art Gallery所蔵の由。

場所は英国ボーンマス。
食指が動く場所ではなかった。


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その後、世紀は1つ進み、そんな出来事もすっかり忘却のかなたとなったこのタイミイングで、
突如、先方の方から顔見せにやってくるなんて!
なんとも素敵なサプライズ。


実物のタッチは、印刷で見て感じたよりも意外に粗め。
衣服の襞が目の前に迫る。
学芸員の加藤さんの言葉通り、「チベットのような衣装」。

椅子の装飾や台座の模様など、見れば見るほど国籍不明。
両脇の女性たちはまるで、画面に扇子でアクセントを与えるための装飾品のよう。
中央の女性に涼を与えるでもなく、心ここにあらず風に、てんでばらばらな視線の向き。
その目の先を追っていけば、我々の視線は右回りに誘われ、、、
行きつく先は、真夏の白昼夢。


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*会場内の写真撮影に際しては、ブロガー内覧会ということで事前許可を受けています。

衣装の襞といえば、同じ作家の「花」にも見られる。(下左)
学芸員さんの説明にもあった通り、幾重にも重なるドレープが、ローマ・ギリシャ彫刻を彷彿させる。

昨年都美で開催された「ルーブル美術館展」で見たギャビーのディアナも衣装の襞が見事だった。
この絵の女性は、右足に重心がかかっていて、古代彫刻のコントラポストを意識しているようでもある。

シャヴァンヌのように、薄いパステル調のフィルターがかかっていて、
サーモンピンクの色調が目に優しい。

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意外だったのは、ホイッスラーのエッチング。
彼の作品というと、幽霊のような、実体があるようなないような女性の姿が浮かぶけれど、
風景画もあったのだ。

「宮殿」と題された一枚には、ヴェネツィアのパラッツォらしき建物。(左)

ヴェネツィアのスケッチは、去年のターナー展にもあった。
画家たちを惹きつけて止まない場所なのらしい。
かくいう私もまた、魅せられている一人な訳だけど。

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描かれているのはどこのパラッツォだろう、と手持ちの写真を探してみたけれど、
これぞ、というものはなかった。
例えばこれなど、近いだろうか。
グランカナルに面した宮殿のひとつ。

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溜息橋のスケッチも、この絵の2つ手前に掛かっていた。

私が実物の橋をかの地で見た時はドゥカーレ宮殿の牢獄につながる渡り廊下等が修復中で、
なんとも風情台無しの姿なのだった。

ホイッスラーはこの写真の左手から橋を描いていた。


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ビアズリーのコーナーには、サロメを題材としたものもあった。

ギュスターヴ・モローのサロメ同様、ヨハネの首は宙に浮かんでいる。
ブラック&ホワイトで描かれているので真紅であるはずの血のしたたりは白抜き。
だからといってソフトな訳でなく、逆に白と黒のシャープなコントラストのせいで、どぎつさが増幅されている。


最後の方の展示室には、エイスチンが建てたアトリエの内装を描いた絵画がある。

室内装飾を担当したのはムーア。
モチーフは孔雀。

その装飾は、建物とともにすでに消失しているようなのだが、その下絵は残され、今回展示されている。

写真上部がその下絵。下の額が、建造物の室内を描いた絵。
孔雀の模様がどのように使われていたかがしのばれる。


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エドワード・バーン=ジョーンズとジョンョン・ヘンリー・ダールのタペストリの上部には、絵のタイトルでもある「Pomona」の文字が書かれていた。
リンゴを抱いていることから、恐らくフランス語のりんごPommeの語源となった言葉なのだろう。

帰宅して調べたところ、Pomona(ポモーマ)とは果物の女神のようだった。

背景がウィリアム・モリス風だ。


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写真下は、ルイス・フォアマン・デイの布地。
リズミカルな繰り返しで水仙が描かれている。
タイトルは「ナルキッソス」。

ナルシストの語源となったこの言葉。
そういえば、ナルキッソスの死後、水仙の花が咲いたという言い伝えなのだっけ。

ラファエル前派、よく考えれば、ナルシストの一面も併せ持つ。
展示にあった仮装系の写真もその一例。

ウィリアム・モリスが小花を多用し、さらにひまわりや白百合が当時アイコンとして使われたと聞くにつけ、
花々とラファエル前派は切っても切れない縁があるようだ。


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2012年のロンドン滞在ではロンドン大の宿舎に泊まったため、
V&A(ヴィクトリア&アルバートミュージアム)は目と鼻の先で、何度か通った。

しかし昔見たロセッティの絵が見つからない。係員に聞いたところ、
”ツアー中”との返事だった。
つまり、外部美術館巡回中。

帰国後1枚はブリヂストン美術館のドビュッシー展で発見。
更に今年、三菱一号館で、たっぷり堪能できた。

本場イギリスで果たせなかった再会を、東京の地で叶えた上、
まだ見ぬ「真夏」の絵とも巡り会えた。

日本の美術館の底力を見せつけられた次第。



展覧会名:ザ・ビューティフル 英国の唯美主義

会場名:三菱一号館美術館

開催期間:1月30日(木)~5月6日(火・振休)
休館日:月曜
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜日~20:00)

公式サイト:http://mimt.jp/beautiful/

再掲:*会場内の写真撮影に際しては、ブロガー内覧会ということで事前許可を受けています。
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2014.03.08 Sat | Art| 0 track backs,
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