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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
2013年の展覧会を振り返る
今年もTakさんのブログ「弐代目・青い日記帳」で2013年 展覧会ベスト10が公開された。
自分もトライしようと思いつつ、順位づけは延々と迷いそうなので、8つの基準に分けて、それぞれ光った展覧会を書くことに。


1.【“比較”という見せ方が光った】
☆出光美術館(2013.11.12~12.15)「江戸の狩野派 ―優美への革新」
☆山種美術館(2013.10.22~12.23)「特別展 小林古径生誕130年記念 古径と土牛」
☆パナソニック汐留ミュージアム(2013.9.7~12.10)「モローとルオー -聖なるものの継承と変容」


この3つの展覧会は、対比によって本質が浮かび上がる構成になっていて、
鑑賞者としては嬉しい試みだった。

--- 出光美術館では、京狩野と江戸狩野の対照的ともいえる空間構成に、
かくも歴然たる差があったのかと東と西の違いを感じた次第。

探幽の「叭々鳥・小禽図屏風」はまさに、「行間を読ませる」描き方。
「いとおかし」という、いにしえの言葉表現に見られる余韻を残すそのスタイルは、
言葉や描写を積み重ねるよりも、奥深い。

最後の一室に横並びに展示された永納の「遊鶴図屏風」と安信の「松竹に群鶴図屏風」により映し出される
京vs江戸の対決は鮮やか。

自分のからだには、江戸スタイルが馴染んでいる、と感じた。
学生時代の「JJ」に、東の慶応ボーイ、西の甲南ボーイあるいは、
女子大生比較:東京編vs名古屋編みたいな企画が掲載されていて、
西のスタイルはこってりしてる、と感じたそれと似たような感覚で。

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---山種美術館では、同じように梶田半古径に入門した小林古径と奥村土牛という2人の画家が見比べられる。

同じ師に学んだ2人の画風はまったく異なっていて、古径の安定した優美な筆に対し、
土牛の方はなかなか画風がとらえにくい。どうやら大器晩成であった模様。

ただ、後半描かれた作品は存在感があり、本美術館がまだ九段下にあったころ、
買い求めたのがたまたま土牛の「醍醐」と「鳴門」だったことを思い出す。

両者とも、空気と風景が渾然一体となって、絵に吸い込まれてしまいそう。

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---パナソニック汐留ミュージアムでは、モローと教え子ルオーという斬新な切り口だった。

両者がやりとりした真心こもった書簡からは、両者が魂でつながれているさまが伝わる。

画風が全く異なるという印象があった2人だけれど、ルオーがモローの正当な後継者であったことが、
展覧会を通じて伝わってきた。

印象よりもっと確固とした触感がみなぎる展示であり、
また真髄の探究者モローがたどり着いたエボーシュへの傾倒という新たな一面も発見できた。

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2.【展覧会パンフレットが秀逸】
☆ DNPミュージアムラボ(2013.02.01~09.01)「古代ギリシアの名作をめぐって - 人 神々 英雄」

今年DNPミュージアムラボはギリシア時代の逸品をルーブルから借り受け、展示していた。

点数はヘラクレスをフィーチャーしたものなど、わずか4点ながら、それぞれ繊細で精緻な作品ばかり。

ヘラクレスのブロンズ像の引き締まった男性的な人体表現、
クラテルに描かれたヘラクレスvsアンタイオスの取っ組み合いに見られる肉体の塊同士が対峙する緊張の場面など、
技術の高さに感嘆し、惚れ惚れと見とれてしまった。

充実の解説もあいまって(特にシアターでは、赤像式、黒像式の違いなど詳細な解説あり)、
会期中計3回足を運んだ。(トークショー含め)

昨今美術関連の活動に力を入れているDNP 大日本印刷株式会社が最高の印刷技術を駆使してつくるパンフレットは、
さすがのクオリティ。

モチーフは、赤像式クラテル、通称<アンタイオスのクラテル>(BC515-510頃)。
つややかな素材にプリントされた壺は、本物さながら。永久保存にしたいと思ったほど。


DNPといえば、ルーブルのスペイン絵画コーナーや、ブリヂストン美術館「カイユボット展」においてタッチパネルなどを提供している。

特にカイユボット展のタッチパネルの、画家交流関係図は興味深かった。
カイユボットを中心として、当時の一流画家たちが周りを取り囲み、一人ずつ画家のアイコンを押すと、
両者の交友関係がわかる仕組み。

例えば、ゴーギャンはカイユボットを毛嫌いし、それは攻撃的なほどだったらしく、
それに辟易したカイユボットは(お坊ちゃん争い好まず、の印象)、仲間と距離を置くようになったそうだ。

また、ドガとの確執もあったものの、それでもカイユボットは彼の絵を買い、支援したという。
モネに対しては家賃を肩代わりしていたようで、支払額が情報の中に盛り込まれていた。

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3.【収集力が圧巻だった】
☆ブリヂストン美術館(2013.10.10~12.29)「カイユボット展」
本Diaryでのエントリー

展示リストを手にした時、驚いた。コレクション展示(常設展)66点とは別に、今回の特別展示作品が、なんと100点。
ブリヂストン美術館が所蔵するカイユボットの作品は1点だけのはずなのに。

つまり、よそから圧倒的な数の作品を借り受けて行ったことになる。

もっとも、参考作品として同館所蔵のセザンヌやマネなども置かれていたし、
弟マルシャル撮影の写真も公開されていたので、全てがカイユボットの作品というワケではないけれど、
それらを差し引いたとしても、よくもまあ、あれだけのものを集めてきたものだ。個人蔵の物も目についた。

画中に描かれたエラールのピアノまで探し出してきた執念は拍手もの。

特別展の展示部屋数は7室。

部屋から部屋へと歩みを進めるうちに、画家の内面に踏み込もうとする自分に気が付いた。

パリ在住のとびきりのブルジョワで、弁護士の資格をもち、船の設計までやってしまう器用な人物でありながら、
生涯職につくことなく、趣味の世界に生きた。

都市という題材にこそ外向きの姿勢が垣間見れるものの、人物を描くときはもっぱら家族や身近な人たちをモデルとし、
彼の目線はあくまで内向き。さらにゴーギャンらとの確執で、
いっそう同じ毛並の内輪の界に閉じこもって行った感がある。

育ちが良すぎたことは、彼にとって幸福と言えたのだろうか。
凡人には真似のできないハイソな趣味をもつことはできた。

でも、ハングリー精神が生み出す瀬戸際の緊張みなぎる渾身の傑作は見当たらず、
煩わしい物から逃避した消極的な姿勢が滲んでいるように、私には思えた。

食べるために描かねばならぬ画家だったとしたら、彼はどんな絵を描いていたのだろう?
満ち足りていることによって摘まれてしまった才能はなかったか・・そんなことを探りたくて、
会期中、たびたび展覧会を訪れた。

(何度も再訪したのは年間パスのお蔭、、、ともいえる。
行くたびに様々な友人を誘ったりしたので、それぞれみな、感想や視点が異なっていて、それもまた一興だった。)

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4.【個人的テーストに合致】
☆東京国立近代美術館(2013.9.3~10.6)「竹内栖鳳展 近代日本画の巨人」

9/20のDiaryに書いたけれど、画伯の目がとらえた西洋が新鮮で、
過去の竹内栖鳳展とまた一味違っていた。

栖鳳作「ベニスの月」をもとに製作されたビロード友禅の「ベニスの月」の精緻さも素晴らしかった。

ベニスの絵、ローマの連作、パリ・ルーブル美術館から家族にあてた絵ハガキなど、
画家が心に留めたものに共感できる喜びを感じつつ。

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5.【華やかさ】
☆国立新美術館(2013.4.24~7.15)「貴婦人と一角獣展」
本Diaryの関連エントリー

パンフにはこう書かれている:「うっとり、しませんか?」
本当にうっとりした。

ルーブル美術館で今年、ミルフルール=花が散りばめられたタピスリーをあれこれ見たけれど、
これほど秀逸なものはなかった。

色の妙、貴婦人の気品と衣装などのゴージャスさ、草花の描写など、
中世美術館から借り受けた「貴婦人と一角獣」の完成度は群を抜いている。

本作品が来日中にパリ中世美術館に行った。
タピスリーがなくとも作品数は膨大で、見ごたえがあったのだが、貴婦人と一角獣が入るべき部屋は、丁度改築中。
NHKの補助金によるものと書かれていた。


タピスリーというと、古びて埃っぽいというのがヨーロッパで見た感想だったけど、
色褪せ修復後の本作品や、近代の作品を並べた松濤美術館 「シャガールのタピスリー展」などで、良さを再発見した。

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6.【とってもタイムリー】
☆三越日本橋本店(2013.12.27~2014.1.13)「心の美「富士山」を描く名画展」

80点の堂々たる出品。新年をはさんで富士山をズラリと並べたタイムリーな展覧会。
大観の雄大な富士、片岡球子さんのカラフルでボリュームある富士、
現代のアントニオ・ロペスばりの写実絵画、奥村土牛の、「鳴門」を彷彿させる緑の富士。

日本のシンボルとして、それぞれの画家の心象風景を垣間見ることができる。
大観の富士に込めた思いもボードにて披露されている。

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7.【展示の創意工夫】
☆東京国立博物館 平成館(2013.10.8~12.1)特別展「京都」

むろん、洛外洛中の多種多様な人間模様は見ていて飽きることなく、見るほどに味わいが増すのだが、
それ以外も見どころがあった。

二条城の二の丸殿黒書院が、スペースいっぱい使ってうまい配置で再現されていた。
夫が夢中になって読んでいた日経新聞小説に出てきたあの黒書院、これだったか!

教会の祭壇画は教会にあってこそ映えるけれど、襖絵もやはり元の寺院・屋敷にあってこそ、と思う。
この展示には、それに近い雰囲気を出そうという心意気があった。

龍安寺の四季折々の投影も、在京の自分には嬉しい試み。

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8.【とりわけよかったギャラリートーク】
☆パナソニック汐留ミュージアム(2013.9.7~12.10)「モローとルオー -聖なるものの継承と変容」関連のミュージアムセミナー

港区三田図書館の貼り紙で偶然見つけた上記セミナーが心に残った。
図書館で無料で作品解説が聞けるなんて、、、半信半疑で参加。

学芸員の萩原敦子さんによるセミナーは、開催までの経緯、モロー、ルオーの生い立ち、2人の美術学校での絆、
ヴィジョンとマチエールなど、多岐にわたった。

配布されたルオーとモローの生い立ちが横並びになった年表もわかりやすく。
図書館でなぜこんなに2時間もたっぷりと主催者側の深い話が聞かれるのか不思議だったけれど、
なんでもパナソニックミュージアム、もとの所在地は三田だったと知る。

そのゆかりで、今回のサービスとなった由。
地元の仲間意識を、移転後も保持し続けるとは。

主催者ならではの、ルオー美術館との提携関係、モロー美術館とのやりとりなど、裏話も。
モロー美術館で先にルオーvsモローをやる予定が、フランスらしい時間感覚がゆえに(!)、「お先にどうぞ」となったそう。

かたやルオー美術館はスタッフが律儀で、スピーディな対応とのこと。
そんな美術館ごとの違いも面白い。

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番外編:【圧巻の常設展】
ルーブル美術館 / ヴァチカン博物館 / 東京国立博物館

今年行った美術館ということで、この3つ。
やはり常設展が充実しているということの意義を改めて感じた。
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2013.12.31 Tue | Art| 0 track backs,
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