FC2ブログ
日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
「日本の知らない風力発電の実力」
日本の知らない風力発電の実力 (2013/11/30) 安田 陽著  Ohmsha - オーム社
を読んだ。

東電福島原発の事故を受け、原発反対運動が一部で活気を帯びる一方で、
代替エネルギー案は電力会社任せの感が否めない。

政治の世界における野党の例を引くまでもなく、何事も、反対意見を述べたり、ヒール役を吊し上げることはいとも簡単。

「悪」を主張するのであれば、それに代わる「良し」と思ったことを理論だてて噛み砕いて説明し、
国民の同意を得るのが筋なのだけど、
「良し」を説くのは「悪しき」を声高に叫ぶより、遥かに難しい。
よって世の中、反対だけに終始した骨抜きのキャンペーンばかりが先行する。


その点、本書は、その逆を行っている。

原発事故をやり玉にあげることなく、つまりネガティブキャンペーンをすることなく、
純粋に再生可能エネルギーとしての風力発電の本質を説き、「食わず嫌い」是正を目指す。
まずこの点、好感がもてる。


データや各国の状況との比較により、さまざまなことに気づかせてくれ、
目からウロコの情報も多々。

・風はいつ吹くんだか、心もとないといった心配は、風力発電出力予測の精度向上で解消されるという。
・面積がない、森林と共存できない、といった先入観もあるけれど、ブレードの幅の分、土地が使用不可になるわけではないそうだ。
・また、水力発電はエネルギー回収期間が一番短いという事実は、言われてみればなるほどの長所なのだった。


系統連系、効率、コストなど総合的な問題について、いかに我々がまことしやかな話を信じ込んできたかを思い知らされた。

現代のエネルギー体系にどのようにフィットするのか、私のような素人にもわかりやすく説かれていて、
読後、風力に関する偏見は激減した。


人間、第一印象とか、イメージ的なものに支配されやすいのだとつくづく感じた次第。


本書ににより、エンジニアリングの側面に納得した今、次は実現のための根回しの話も聞きたくなった。
それについては、今度は実舞台側の人たちの進言にゆだねるしかないのだろうけれど。


例えば、立地の問題。
原子力に関していえば、廃棄物処分場探しの任命を受けていたNUMOが成果を上げることなく代替機関にとってかわられることとなった。
土地誘致の問題はネックとなる。


誘致する場所は、放射性廃棄物処分場と同様で、最適な土地の条件を備えた場所でなければならず、
とある自治体が誘致に前向きでも、最適と目された自治体でなければ意味がない。

例えば、放射性廃棄物処分場でいえば、ある程度核種封じ込めに適したミネラルを有した土壌が望まれる。
(土壌の最適条件については、吸着試験や核種移行モデルなどのデータが蓄積されている。)

風力発電立地であれば、地形も含めた風の条件などが問われるに違いなく。


保険・保障体制も気にかかる。
原子力にもなると、補償体制確立はかくも重視され、例えば輸送時には政府補償と保険会社の連合体から成る原子力保険プールの原子力賠償責任制度が整備されている。(法外な事故の場合は、ケースバイケースとならざるを得ないものの。)
風力発電では、故障時など、保険会社の体制はまだここまで確固たるものになっているのかどうか、など。


また、例え上記根回しが現時点でまだ不十分だとしても、この本に書かれた理論に導かれ、
今後状況が好転する可能性もあるかもしれない。


このように、今まで思考回路に入ってこなかった風力発電をもっと掘り下げて考えるようになった。
本書は啓蒙の書として有益であり、今後のエネルギー進化の一助として果たす役割は大きいと感じた次第。



日本の知らない風力発電の実力日本の知らない風力発電の実力
(2013/11/30)
安田 陽

商品詳細を見る


http://www.ohmsha.co.jp/kaihatsu/archive/2013/09/20100000.html
関連記事
2013.12.03 Tue | Books| 0 track backs,
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
"shw-greenwood" template design by Shallwill