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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
意外と知らない日本のこと: 壮観な塙保己一の「群書類従」
それは國學院博物館への道すがら。

木々の切れ目から顔をのぞかせた座位の男性像の、
その穏やかなその風情に惹かれてふと立ち止まれば、


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江戸時代の盲学者塙保己一のお姿なのだった。

背景となる曲線使いのポルティコがお洒落な建物は、塙保己一の資料館なのだという。
よく見れば、建物は重要文化財のプレート。

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翌9月29日日曜日はこの場所で文化伝統芸能三題が開催されると知り、
再訪してみた。

イベントは計2時間なので途中休憩時間があり、その際、
塙保己一が編んだ群書類従がずらりと並ぶ壮観な図書館に足を踏み入れる機会に恵まれた。

かつて社会科で習ったうっすらした記憶では、群書類従といえば、書物=紙というイメージだったが、
そこに並んでいたのはおびただしい数の版木の列だった。

版木の例は下記、絵ハガキから。


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保己一は、収集した書物を紙で再現したのではなく、
専用の木彫り職人に依頼し、版木を製作させたのだ。

この版木に墨を塗って和紙をのせ、できあがった和紙を綴じて製本されるということだ。


丈夫な桜の木でできているため、また両端に添え木をしているため、ゆがみもせず、
ピンと張った状態で保存されている。

なにより関東大震災、世界大戦を潜り抜け、完璧に残っているのは、
地下室まで作って守り通した人々の情熱ゆえ。


盲目の保己一は、散逸・消滅が懸念される、貴重な史書や文学作品を校正に残す大事業に取り掛かる。

面白いことに、徒然草の一部などはこの版木に残されているものの、「源氏物語」はこの中に含まれていないのだそう。

理由は、すでに大量の書物がでまわり、散逸の恐れがないから、と。

そういう意味で、保己一は、単に保存を目指したのみならず、
どの書物が重要かつ消滅の危機にあるかを見分ける鑑識眼に秀でていた。
さらに、版を重ねて原文が複数あるものについては、どれがオリジナルに最も近いかといったことも
深く洞察したという。

そのためには、目まぐるしいほどの量の書物を買い求め、
書店のセールスがひんぱんに訪れるようになる。
いいと思ったものは、言い値で購入し、またすでに所持しているものでも、
勧められれば購入。
もったいない、と諭す弟子に、「こうすれば、次回いい書物を持参してもらえるから」と弟子を説得したのだった。

おかげで後世三代まで、借金を背負うことになったとか。


---と、こんな話を、資料館の方からうかがうことができた。


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さて、この日のメインイベント・文化伝統芸能三題の方は、落語・講談・説教節の3つを無料で拝聴でき、2時間余り。

説教節は塙保己一を題材にした内容で、三代目若松若太夫さん。
三味線を、ギターのように上から下へとじゃら~ん、と流し弾きする様に古典のモダンさを感じ。
同時にしゃべり言葉が文語ではなく現代にも通じるものなので分かりやすく、とっつきにくいという
イメージは払しょくされる。


講談では、机上に叩きつけられる張り扇の快音に、背中がピンと伸びるような感覚を味わい。

そうそう、あの張り扇の和紙には、特定の地方の希少なものを使用しているという講談の宝井琴柑さん。
伊東屋で、わざわざ仕入れてもらってやっと手に入るそう。
玉川上水にまつわる虚々実々とりまぜた講談ファンタジーを披露。


地元すぐそばにある広尾高校出身という落語家の扇亭小柳馬さん。
いい加減な主人公を通じて、気に食わぬことを天災と受け止める鷹揚さを改めて説かれ。


我が国の伝統芸能でありながら、エキゾチックにも感じられる古典の世界をしばし堪能した日曜の午後だった。
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2013.09.30 Mon | Sports| 0 track backs,
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