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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
東京藝術大学大学美術館「夏目漱石の美術世界展」
美術館の展覧会に夏目漱石??
文学者の美術展って一体どんなもの?

想像もつかなかったけれど、なるほど美術好きの漱石が、自身の著書の中で時にさりげなく、
時に大胆に触れてきた芸術家の作品を実際に並べて、書物中の対応部分の引用とともに鑑賞する、
などという斬新、且つ実践的(本を読む際、イメージが浮かべられれば、内容も深まるというもの)な
内容だった。
(先週行われたブロガー特別内覧会にて)

目新しくて斬新、、、な一方で、個人的にはなつかしさを覚えた。
ナショナルギャラリーやテートギャラリーに通った日々を思い出しつつ、
夏目漱石とテーストを分かち合ったような気分。


そもそものっけから、アンドレア・デル・サルト(但し本物の絵でなくパネルで紹介)が登場する。

この名前が漱石の「吾輩ハ猫デアル」に登場することなど全然覚えていなかったわけだけど、
この(下の写真のパネルに出ている「若い男の肖像」)絵はよく知っている。

特別有名そうな絵という印象ではなかったものの、
ナショナルギャラリーの展示の中でもなぜだか目立っていて、記憶に残る一枚。

この目つきがきつくて、鋭くて、でもちょっと魅惑的で、射すくめられる。


「吾輩・・」の中では、デル・サルトの名言だと言って人を担ぐ場面が出てくるのだそうだ。
再読せねば・・・

それにしても、ナショナルギャラリーにはカラヴァッジョあり、印象派あり、あれこれある中で、
随分地味な画家をピンポイントで登場させたものだ。。。と驚いていたら、
ヴァザーリの「芸術家列伝」で評価が高く、これを漱石が知っていたせいらしい、との解説。
なっとく。


vP1360379

以下すべての写真は、美術館より特別な許可を得て写真撮影をしております


また、王子幽閉のほか、ジェーンの処刑についてもポール・ ドラローシュの「ジェーン・ グレイの死」を参照しつつ、
「倫敦塔」の中で書いているようだ。

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この(上の左)「ジェーン・ グレイの死」という作品は、ナショナルギャラリーの中でもひときわ目立っている。
画面の手前に横線がひかれ、処刑シーンが舞台で行われているかのような効果を与えている。

そしてテートにあるターナーや、

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ロセッティも!!

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去年テートに行って、ロセッティの「ベアタベアトリクス」と久々の対面を果たす予定だったのに、
テートモダンに全精力を傾けているせいか、テート本家の方は倉庫状態で、
一室にメインの絵がごちゃまぜに掛けられ、随分荒れていた。

ミレイのオフィーリアも、3段の一番下に無造作におかれ、ロセッティはわずか2枚だけ。
「ベアタ・・」はなかった。

人気もなく、閉鎖されている部屋もあり、美術館のていをなしておらず、残念だった。
過渡期なのだろうか。

代わりに今はV&A(ヴィクトリア&アルバート美術館)に勢いがある感じ。

***

そして、今回の美術展の中で、なんといってもウケるのは、漱石の日本の同世代画家に対する辛口批評。

例えば、南薫造の「6月の日」の絵に対しては、
「白樺で南君の書いた田舎の盆踊りの光景を読んで大変おもしろいと思ったがこの画あの文章ほどの旨味がない」とか。
(近代美術館で見た絵だ。他に近代美術館で強烈な印象があった青木繁の「運命」もあった。)


今尾景年の「踊鯉図」(下の左)に対しては、「鯉は食ふのも見るのも余り好かない自分である。
ことに比踊り方に至っては甚だ好かないのである」と。


P1360508.jpg


そんな痛烈な批評をたっぷり見せたあとで今回の展示一番のオチが最後に待ち受ける。

漱石自身が自ら描いた絵画が並んでいるのだ。


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それの絵を美術館側が(結構鋭く)批評するするさまは、まさに痛快としかいいようがない。

例えば、
「大雅も蕪村もターナーもあれほど好きだった漱石なのに、
その先達たちの画中の光と風ののびやかさがここにはない。」など。

ほかにも、「だがこの作は賦彩もあまりに淡々しく心細い」
(最晩年の作品だった。)

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思わず、お後がよろしいようで!といいたくなる構成。

***

今回の美術展、これまでのものと一線を画していて印象に残った。
文学を読むとき、対象となった画がビジュアルで見ると、なるほどと納得したり、
漱石が肩入れしたタイプの絵が意外に思えたり。

(ロセッティやウォーターハウスなど、ラファエル前派と漱石の組み合わせは、やや意外。
自分のような乙女?向きの画風だと思っていた。何気にロマンチスト。)

和辻哲郎の「イタリア古寺巡礼」などの美術書で触れられている彫刻などに、知っているものが出てくると
共感したり、批評の鋭さに感嘆したりするけれど、
でも、純文学でそうした美術鑑賞ができるとは。


文学+絵画という組み合わせを見せることにより、漱石の感性がよりいっそう浮かび上がる気がした。

ふと、ボローニャの聖ドメニコ教会にあったグイド・レーニの絵に、
演奏家たちの姿が描きこまれていたのを思い出す。
「レーニは元音楽家だったんだよ。音楽・美術・文学、大きな意味で芸術だからね」、
そんな教会係員のおじさんの話とともに。


【現在開催中】
東京藝術大学大学美術館
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2013/soseki/soseki_ja.htm
「夏目漱石の美術世界展」
会期: 2013年5月14日(火)- 7月7日(日)
午前10時 - 午後5時 (入館は午後4時30分まで)
休館日: 毎週月曜日
会場: 東京藝術大学大学美術館
観覧料: 一般1,500(1,200)円 高校・大学生1,000(700)円(中学生以下は無料)

【「夏目漱石の美術世界展」・次回巡回予定】
静岡県立美術館
http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/
開催期間: 2013年 7月13日(土)〜8月25日(日)
開館時間: 午前10時〜午後5時30分
※展示室への入室は午後5時まで
休館日: 毎週月曜日
※7月15日(月・祝)は開館し、翌7月16日(火)は休館
観覧料: 一般 1,000円(800円)、70歳以上 500円(400円)、大学生以下 無料
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2013.06.06 Thu | Art| 0 track backs,
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