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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
ブリヂストン美術館ナイト
プチな発見もあった一夜の贅沢

2012年12月2日(日)17:30〜20:00、東京京橋のブリヂストン美術館で夜間内覧会が開催された。
嬉しいことに受付開始は16時から。
トークショー開始前に、じっくり人影まばらな館内で鑑賞することができた。

おかげで、これまで見逃していたトリビアを幾つか発見。


日本人画家のサインは・・・

岡田三郎助の十八番、和服美人の作品「婦人像」。
作家のサインにふと目が留まり、思わずニヤっとしてしまった。

三郎助のローマ字をSaburosukeではなく、Sabourosouké  とフランス語式につづっていた。
Beaucoup=ボク、という発音のとおり、フランス語では「ou」で「ウ」の音になる。
そして、「ke」を「ké 」と綴ることで、サブロスクでなく、フランス人にもサブロスケと読んでもらえる。

純和風の題材に、フランス語のアンマッチさが微笑ましい。
彼はフランスに数年留学していたようだ。

更に、お隣りの部屋にあった小出楢重もしかり。
「帽子をかぶった自画像」ではKoidé
「横たわる裸身」に至ってはさらにトレマ(ö やï など、上にちょんちょんがついている文字。仏後で母音が2つ続くときに使用される)も駆使して、Koïdé と綴っていた。

自画像を見るにつけ、小出楢重画伯はこういうサインをしそうな人だ。
ちょっぴりフランスかぶれっぽい感じ。


絵の具の隆起

最近カタログや絵画本などを見る機会が多くて、実際に見た絵だったか、図録で見たのみなのかわからなくなることがある。

なので、間近に見てこそ、といった見方を試したい、と思い、今回引いて(=遠くから見る)だけでなく、かなり近づいて鑑賞。

すると、薄塗りに思えるセザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」の絵の表面に、意外と絵の具のぼつぼつした小さな水泡のごとき塊が残っていることに気が付いた。

それが妙に生々しく、セザンヌという実在の人の息使いが伝わる。
写真では得られない生身を感じる瞬間。

ピカソの「道化師」も、つるっとした仕上がりなのだけど、頭部に髪の毛を表すようにいくつか隆起する細い線が引かれていた。


・セザンヌのサントヴィクトワールは、ここのがイチバン好き!

セザンヌついでに言うと、昔初めてセザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」と対峙した時、この山は、彼の他のヴィクトワール山とは違ってぴか一だ!そう思った。

特に惹かれるのは、微妙な色合いや筆のリズミカルな動きだけでなく、他の作品にはない裾野の、のびやかな広がり。
さらに上下に気の葉を配し、その合間から、自らもまさにこの山を望んでいるかのような気分になる。


17:30からのトークで知ったのだが、この絵はほぼ門外不出らしい。
かつて一度だけ、横浜美術館展で貸し出されたものの、これは歴史的背景に起因する例外中の例外。
(ちなみにこの作品は、もともと原三渓氏の一族が購入した絵なのだとか。)

そして、「完成度の高い絵」、という評価がトーク中あり、これを一番好きなサントヴィクトワール山、と決めた自分に賛同者が現れた気分。

先に行われた国立新美術館のセザンヌ展の2点のサントヴィクトワール山と相対した時、ブリヂストンのあの1点に比べてなんだか冴えないなぁ、と思ったことは内緒。

この絵が最初に日本に入ったセザンヌだったこと、
シャトーノワールとあの山を一緒に画面に入れて描いたのはこの絵だけだったこと、
シャトーノワールには今でも住人がいて、外見の写真撮影を禁じていること、
などは、新たな発見だった。

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*写真は、この日限定的な条件付で撮影許可されたもの


カイユボットのピアノ

やはり16時からゆっくり鑑賞したおかげで、ドビュッシー展では見逃していたカイユボット作の「ピアノを弾く若い男」の絵の細部に見入った。

ピアノの全面に、ピアニストの手が映っている様子まで国名に描かれていた。
中央には金色で洒落た英文字のエンブレム。

その後のトークでこれが当時フランスでグランドピアノの代名詞とされた「エラール」というブランドのものだと知った。
一種ステイタスとなるようなお高いブランドなのらしい。

ピアニストはカイユボットの弟がモデル。
一家の裕福な暮らしぶりがしのばれる。

さらに、この絵に描かれている楽譜(ピアノの上)がやけに分厚いなーと思って見てたのだけど、これは実はドビュッシーの師匠による楽譜である、といった秘話も公開された。


2日連続で見たアンリ・ルソー

前日MOMATでルソーの「第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神」の絵を再見したばかり。
さらに、ルソーの絵のミステリーを描く、原田マハさんの「楽園のカンヴァス」を読了したばかり。
再びここで、ルソーの絵2点と出会うとは。

いつもとは違い、ルソーの人生を胸にじろじろと鑑賞。

驚くべきは、「牧場」の絵の方が、彼が亡くなった年に描かれたものだったこと。

反対側に飾られている「イヴリー河岸」(1907年ごろ)よりも上手くなっている気がする。
イヴリーの方は、人間がおもちゃみたい。
シュールに配されていて独特な雰囲気を醸しているが、細部は粗雑。
「牧場」は隅々まで丁寧に描き込まれている。
中央の牧童が、我々にさようならしているかのよう。去り際の作家を彷彿させるように。


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*写真は、先日MOMATで撮影(写真OK)。ルソーの自由の女神。アップで見ると、意外に”麗しくない”のだった。




トークも興味深かったけれど、長くなったので、概要のみ:

式次第は:
第一部> 学芸員対談 
ブリヂストン美術館学芸員 賀川恭子さん & 三菱一号館美術館学芸員 阿佐美淑子

第二部> アートブロガーさんを交えての意見交換会
「青い日記帳」T a kさん / はろるどさん / 6次元 中村邦夫さん

写真は第二部の模様。
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トーク&鑑賞後は、こんな素敵な計らいも。ワインも出た。
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わくわくした一夜だった。
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2012.12.03 Mon | Art| 0 track backs,
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