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セザンヌ展、山口晃さんの講演会
現在国立新美術館で開催中の「セザンヌ パリとプロヴァンス展」。

展示会のロゴはリンゴで、その中に「100%セザンヌ」と書いてあることからもわかるとおり、オールセザンヌの作品で埋め尽くされ、例えば”ピカソ展”と銘打ちながら数点以外は同時代の画家の作品、などという騙しはない。

一方で、うまいことやったな、と思ったことがひとつある。
同美術館では先日「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」が開始となり、セザンヌ展と同時開催となったのだが、セザンヌ展の中に、エルミタージュ美術館からきている作品が数点あったのだ。

つまり、一か所から一気に搬送して、2つの美術展に分けて使っちゃう、などという合理的なアイディアというわけ。

さらに、国立の美術館にしては商才にたけている、と思わせるのが、雑誌「ブルータス」とのコラボ。

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(2012/04/16)
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この「西洋美術総まとめ」の号に、セザンヌ展の企画記事が掲載されている。
画家の山口晃さんをエクサンプロヴァンス(画家のアトリエのある場所)に飛ばせ、現地で多角的に画家の本質に迫ろうとするもの。

実はこの雑誌、西洋美術総まとめというタイトルに大いに惹かれ、買う気満々で昼休み、オフィスビルの本屋に駆け込んだのだが、数ヶ月前に買った「OFF」と「Pen」の美術館特集とルネサンス特集と比べてしまったため、買うのを止めたのだった。
(2誌に比べ、記事に割くページ数がかなり少なく、アウトラインにとどまっていたので。また、オリジナルな突っ込みや視点が欲しいところ。)

その際気付かなかったが、同誌の後半の方に、山口氏の漫画で綴るセザンヌ表敬訪問の旅日記が出ていたそうだ。
その絵日記を実際にスライドに映しながらの講演会だった。

入るといきなり山口氏のスケッチ(正確には、氏がスケッチする姿のスケッチ)が白板に書かれていた。
(でも、ほどなく消され、別の落書きスケッチが披露され・・・)

P1080535.jpg


話の途中には、こんな落書きが追加に。

P1080540.jpg

何かと言えば、上から順に、

メゾンエルメスで行った企画展の話、
日曜美術館の話、
ブルータスの宣伝
5月8日(火)青山ブックセンター本店でトークショー&サイン会開催、
その他違う話、

をしよう、という覚書なのだった。
(白板のABCは、青山ブックセンター)

セザンヌは、山を周りこんで描きこんでいた(=山の裏側まで描くような心意気)、と盛んに言っておられたので、必死でそのあと展覧会でセザンヌの筆致を追ったけれど、結局輪郭を描いて中を塗り込んだようにしか素人目には見えず。

とはいえ、印象派の絵を筆致の流れから読み解くという手法には、意表を突かれた。
短に点か線か、という違いではなく、筆の方向性による画家の心理状況を読み解こうという気概。

一方で、講演会は、新国立美術館始まって以来の、やわらかーい、内容で(それは氏も冒頭で警告していた)、終始一貫小話のような軽妙な語り口。

ブルータス取材の旅には奥さん同行だったそうなのだが、サントヴィクトワール山に実際に上る場面では、急にその奥さんの方は具合が悪くなり(?)山登りはあっさりスルーした、などという話を苦笑しつつ披露。

また、風景を描く際、山という固体を描くことに専心して描かれたものと、周囲の空気から描きこんでいって山が実像として浮かび上がるものの2パターンが見られること、など。

展覧会で、その違いを再び私は見出すことはできなかったけれど、画家にありがちなように、後年にいくほど力が抜けて、空気と木々が溶け合って行く様子を追うことはできた。

展覧会の話は後日にまわすとして、多視点であるかどうかという肝心な論点について、氏は日曜美術館の思惑には反し、結論としては多視点ではない、と言っていた。
画家の脳に画像が入り、それを絵筆にのせるまでの造形の微妙な変化、揺らめく視点の範囲内でのズレ、など、それらすべては誤差範囲内、というわけだ。

彼は撮影の際、多視点ではない、と言い切ったそうだが、それでもそのあとで司会者から、「多視点の訳はなんでしょうか」と振られガクときた、断言した部分はカットされただろうな、などと苦笑していた。

が、NHKも、落とし所を上手く心得ていた。
日曜美術館を視聴したところ、セザンヌは、キュビズムを意図して多視点で描いたのではなく、結果としての多視点があり、キュビズムがある、そんな軟着陸で、番組をまとめていた。

あっぱれNHK。
ちなみに、司会の森田美由紀さんはセザンヌのよさが分からないんですよね、と言っておられたそうだ。(山口氏談)。

それから、千住明氏も森田さんも、台本を相当読みこんでおられる、と山口氏は感銘していた。
徹底的にシナリオを作りこんでから作品を撮るNHKらしさを再認識した次第。

~~~~~

そうそう、講演会の前には月島のスペインクラブでランチ。
前の週には仕事先の人と この場所でディナー。
2回とも偶然同じテーブルだった。

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2012.04.30 Mon | Art| 0 track backs,
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