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須賀敦子さんがヴェネツィアで見たものは、分断された絵の片方 ~ コッレール美術館のカルパッチョ
8/8付エントリーでチラリと触れた江戸東京博物館の「魅惑の芸術‐千年の都 世界遺産 ヴェネツィア展」。

本展覧会の目玉のひとつはヴィットーリオ・カルパッチョの「2人の貴婦人」の絵なのだが、
私はヴェネツィアで、一足先にこの絵と対面してきた。





展覧会は9/23から、私のヴェネツィア滞在は8/28からだったので、まだ本作品は日本への旅に出ていないだろう、
と安心して出掛けた。

たまにあるのだ。
目当ての絵がある場所を広い展示室からやっと探し当て、いざ劇的な対面の瞬間となるはずだったのに、
目の前に現れたものは、壁に貼られた「xxに出典中」の貼り紙と、20cm四方の絵の白黒コピーだった、なんていうことが。


忘れもしない、真夏のロンドン一人旅。
印象派絵画コレクションで有名なロンドンのコートルード美術館で、
印象派の代表作がごっそりお出かけ中だったときは、立ち直れなかった。


さてこの実物の貴婦人の絵を見た感想といえば、
「あら、つるつるして、たった今描かれたみたいに新しい」、、
などというもので、絵の主題そのものではなくやや的外れなところに思考が向かってしまった。

そして先に書いたとおり、私としてはこの絵の対象物は、
2人の高級娼婦、コルティジャーネを描いたもの、という当初の説に同調したかった。

なんとなれば、同じヴェネツィアにあるアッカデミア美術館には、やはりカルパッチョのウルスラ物語で埋め尽くされた部屋があり、そこに描かれた可憐な乙女の姿とこの2人の貴婦人とは雰囲気を全く異にしていたからだ。


(アッカデミア美術館は館内フラッシュなしで写真撮影OK)


だが、このほどその私の推測とは裏腹に、完全にこの絵が貴婦人を描いたものであることが判明したという。
知人から教えてもらったその証拠はこちら:


おなじみ「二代目・青い日記帳」のエントリー。


恐るべき新説を耳にした。
この絵には切り取られた上部分が存在し、そこにはラグーナ(干潟)で狩りをする男性たちが描かれていたのだと。

となればこの「2人の貴婦人」の主題はただひとつ:
狩猟にいそしむ夫たちの帰りを待ちわびた本物の”貴婦人たち”を描いたものに他ならない。
画面を覆う鬱な雰囲気は、職業柄ということではなく、むしろ「退屈」から発散されるものだったのだ。


かつて須賀敦子さんの目を捉え、そのアンニュイな姿からザッテレの河岸の治る見込みがない病院に閉じ込められた娼婦たちへと彼女が思いを馳せたあの一枚は、想像力だけをかき立てて、無難なところに収まるタチのものだったらしい。

とはいえ今まで見たことのない淀んだ感じを発散させているこの絵は、アッカデミア美術館のジョルジョーネのテンペスト同様、「なにかが違う」と感じざるを得ない不思議な作品だった。


ちなみにコッレール美術館内では、この絵は至って殺風景なところに置かれていた。

ロープで立ち入り禁止になった、くぼんだ一角に、無造作にイーゼルの上にのせられていた。

ロープや個室を与えられているところから珍重されているのではあろうけれど、それにしては雑然としていて、それでなくてもあれこれ様々なもので溢れかえった展示場内で、素通りされても仕方ないだろうと思われた。

写真はコッレール美術館入り口:
P1760670.jpg


それがひとたび来日するとなると、江戸博物館の立派な建屋に移送され、これほどまでに脚光を浴びて、
外遊も悪くはなかろう。

なお、この絵は切手にもなっている模様:



=====
* コッレール美術館情報 *

私はサンマルコ広場内美術館共通券(サン・マルコ広場周辺共通券)を購入。
お値段は14ユーロだったが、なんと2011年10月1日からは16ユーロに値上げとなる。

この共通入場券で見られるのはドゥカーレ宮殿(それだけでも価値がある)、コッレール美術館、考古学博物館、マルチャーナ図書館。
Palazzo Ducale - Museo Correr - Museo Archeologico Nazionale - Sale Monumentali della Biblioteca Nazionale Marciana

つまり、サンマルコ広場を取り囲んだ建物に入っている美術館が一括で見られるというわけ。
考古学博物館とコッレール美術館は入り口が一緒で、コッレール美術館側から入れば、中でつながっている。

コッレール美術館の入り口は分かりにくいが、Correrと書かれた横断幕が目印。

本共通券の情報はこちら:
http://www.museiciviciveneziani.it/frame.asp?pid=197&z=2&tit=_IT_biglietti
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2011.10.01 Sat | Art| 0 track backs,
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