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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
ツール・ド・フランスのときに見た 「最後の審判」と、名著「名画でみる聖書の世界」
これまで何度も触れてきた「名画でみる聖書の世界」の本の最後は、ボーヌの施療院にある祭壇画の話だった。
この絵は実際に見たことがあったので、感慨深く最終章を読みふけった。

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3年ほど前のツールで、ブルゴーニュ地方のボーヌに宿をとったことがある。
ゴール地点は確かボーヌから3-40km地点。

スタート地点でプロトンご一行様を見送った後、直接ゴール地点のプレスルームに向かうつもりだったが、途中で気が変わり、高速をそのまま降りずにボーヌに直行した。

この街にはオテル・デューという施療院があり(今は博物館)、以前訪れた際、屋根の柄の妙に魅せられた。折角なら再訪したいと思ったのだ。

初回の訪問では見た記憶がなかったのだが、2度目の時、別館で最後の審判の祭壇画を見た。
最後の審判というと、やはり思い浮かべるのはシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロの壁画だろう。

裸体が躍動的に乱舞する様子は、天国と地獄、というよりはぱっと見た印象では地獄図のよう。

ところが、このワイデン作と言われるボーヌの最後の審判は、そんなにおどろおどろしくない。
地獄に行った人たちがパラパラと逃げさまように過ぎない(右側が地獄)


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中央が聖ミカエルで、天秤を持っている。
天秤は罪の重さを示しているそうで、左の天国側が重量が軽い=天秤が上がっている。
それまでは、天国側は、徳が重い=天秤が下がっているかたちで描かれることが多かったそうだ。
しかし、昇天のイメージに合わせるために、ワイデンは、天国行きが上にくるようなロジックを用いたというから、合理的。

このように、ボーヌの最後の審判が、ミケランジェロのそれよりよほど静かな印象を与えるのには理由があったのだと、上述の本を読んで知った。


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病院に掲げられた絵という性質上、地獄行きへの不安感をあおるような絵はふさわしくない。

祭壇画を置くのであれば、救いを求めて祈る病人に癒しを与える絵でなくてはならない。

オテルデューにはじめて行った時、ベッドの脇がチャペルになっていて違和感を最初感じたのだが、不治の病に冒された人が、病室で祈りを捧げるために、それは必要だったと気がついた。


須賀敦子さんが歩いたヴェネチアにインクラビリの施設(治る見込みのない人の施設)があったけれど、恐らくその施設内にも、祈祷する場所が設置されていたに違いない。

現代では、重い病気の人の精神的負担を軽減するため、本来の患部の治療と並行して心療内科の重要性を説く声が聞かれる。
病に冒されると、精神バランス維持という二義的な問題にも直面するけれど、そんなとき、祈りが果たす役割は大きい。


西岡文彦先生によると、オテルデューは、ヨーロッパで最初の病院なのだとか。

でも病院とは思えない華麗なたたずまい。
病気が悪魔にとり付かれた証拠、などと思われたような時代。イタリアでは病院にインクラビリなどという配慮のない看板をつけたりしていた、そんな時代に、この病院は、なぜか癒しを全面に押し出している。

祭壇画にもその配慮が投影されている。
そんな背景を知ってから、この絵を眺めると、なるほどなぁ、と思う。


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屋根の文様はこの地方独特のもので、町中でいくつか同様の屋根は目撃したけれど、オテルデュー施療院のものに勝るものはなかった。


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今では、こちらは博物館としてだけでなく、毎年ワインの競り「栄光の三日間(Les Trois Glorieuses)」の行事が行われている。

(11/21のエントリー

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「名画でみる聖書の世界」(講談社)および、この本を紹介してくれたビアンキ・シモンさんにはつくづく感謝。

宗教画を見る上で、これまでの疑問を解消し、キーポイントをくまなく網羅した一冊だった。
私にとっては、直球ど真ん中ジャストミートの本だった。

今まで単独の絵画としてのみ眺めていたものが、様々な要素の絡み合いの中で鑑賞すべきもの。
時代においてその絵が、その被写体が、その描き方がどういう意味を持っていたのか、知れば知るほど奥が深い。
そして知れば知るほど、絵は一掃深みを増し、面白くなる。


名画でみる聖書の世界 新約編 (講談社SOPHIA BOOKS)名画でみる聖書の世界 新約編 (講談社SOPHIA BOOKS)
(2000/10)
西岡 文彦

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2010.04.19 Mon | Travel-France| 0 track backs,
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