文字色● 「近頃、メンチョフは、くたびれたパソコンよりも頻繁にダウンするなぁ」
UKサイクルスポート誌が去年ジロに引き続きツールでも転んだメンチョフを見て、ため息交じりに書いている。
● 須賀敦子訳イタリア人作家ウンベルト・サーバの詩
恐らく、須賀さんのサーバ訳を読んだ人は、みんな同様の感想、つまり文の切り方に、興味を持つのではないでしょうか。
私も実は、原文を見てみたくなって、ネットで以前探したことがあります。
で、やはり原文からして、切り方がユニークだったのです。
文頭を赤で示して見るとわかります。
つまり、文末と文頭をつなげて、逆に文脈として続いているところで切っているわけです。
日本語にするとき、普通苦心しそうな感じがしますが、須賀さんは難なくやっている感じですね。
奇抜な区切り方を日本語で表現しただけでなく、原文も、日本語訳も、一行の長さが大体そろうように工夫されています。
Nella mia giovanezza ho navigato
lungo le coste dalmate. Isolotti
A fior d’onda emergevano, ove raro
un uccello sostava intento a prede,
coperti d’alghe, scivolosi, al sole
belli come smeraldi. Quando l’alta
marea e la notte li annullava, vele
sottovento sbandavano più al largo,
per fuggirne l’insidia. Oggi il mio regno
è quella terra di nessuno. Il porto
accende ad altri i suoi lumi; me al largo
sospinge ancora il non domato spirito,
e della vita il doloroso amore.
若いころ、わたしはダルマツィアの
岸辺をわたりあるいた。餌をねらう鳥が
たまさか止まるだけの岩礁は、ぬめる
海草におおわれ、波間に見えかくれ、
太陽にかがやいた。エメラルドのように
うつくしく。潮が満ち、夜が岩を隠すと、
風下の帆船たちは、沖あいに出た。夜の
仕掛けた罠にかからぬように。今日、
わたしの王国はあのノー・マンズ・ランド。
港はだれか他人のために灯りをともし、
わたしはひとり沖に出る。まだ逸る精神と、
人生へのいたましい愛に、ながされ
===
とくに最後の部分:
...............................Il porto
accende ad altri i suoi lumi; me al largo
sospinge ancora il non domato spirito,
e della vita il doloroso amore.
***
英語でざっくり訳すと
...............................The port
ignites to others its illumination; me to the offshore
still pushes out the untamed spirit,
and of the life the painful love.
***
それが彼女の手にかかると
港はだれか他人のために灯りをともし、
わたしはひとり沖に出る。まだ逸る精神と、
人生へのいたましい愛に、ながされ
****
人生へのいたましい愛に、ながされ
というのが海のイメージとマッチして心に沁みいるよう。
UKサイクルスポート誌が去年ジロに引き続きツールでも転んだメンチョフを見て、ため息交じりに書いている。
● 須賀敦子訳イタリア人作家ウンベルト・サーバの詩
厳寒のなか、僕は先日朝早くから東京出張だったのですが、
須賀さんの全集第1巻を持って行って(勿論文庫の方です)、電車の中で読んでいたら、以前からの疑問を思い出しました。
その疑問とは、彼女の、詩の日本語訳の書き方です。
例えば、「ミラノ 霧の風景」所蔵の「きらめく海のトリエステ」に出ているサバの詩は、こんな風です。
若いころ、わたしはダルマツィアの
岸辺をわたりあるいた。餌をねらう鳥が
たまさか止まるだけの岩礁は、ぬめる
海藻におおわれ、(以下略)
・・・・・・常にひとつの文の途中で改行されています。
普通に読もうとすると正直読みにくいのですが、わざわざこういう書き方をするのは何故なのでしょう?
原文との関係があるのでしょうか。
詩というものには全くなじみが無いので、ずっと疑問のままなんです。
それにしても須賀さんの本、混雑の中で自分の世界に入りたい時には最適です。
(SSさんから)
恐らく、須賀さんのサーバ訳を読んだ人は、みんな同様の感想、つまり文の切り方に、興味を持つのではないでしょうか。
私も実は、原文を見てみたくなって、ネットで以前探したことがあります。
で、やはり原文からして、切り方がユニークだったのです。
文頭を赤で示して見るとわかります。
つまり、文末と文頭をつなげて、逆に文脈として続いているところで切っているわけです。
日本語にするとき、普通苦心しそうな感じがしますが、須賀さんは難なくやっている感じですね。
奇抜な区切り方を日本語で表現しただけでなく、原文も、日本語訳も、一行の長さが大体そろうように工夫されています。
Nella mia giovanezza ho navigato
lungo le coste dalmate. Isolotti
A fior d’onda emergevano, ove raro
un uccello sostava intento a prede,
coperti d’alghe, scivolosi, al sole
belli come smeraldi. Quando l’alta
marea e la notte li annullava, vele
sottovento sbandavano più al largo,
per fuggirne l’insidia. Oggi il mio regno
è quella terra di nessuno. Il porto
accende ad altri i suoi lumi; me al largo
sospinge ancora il non domato spirito,
e della vita il doloroso amore.
若いころ、わたしはダルマツィアの
岸辺をわたりあるいた。餌をねらう鳥が
たまさか止まるだけの岩礁は、ぬめる
海草におおわれ、波間に見えかくれ、
太陽にかがやいた。エメラルドのように
うつくしく。潮が満ち、夜が岩を隠すと、
風下の帆船たちは、沖あいに出た。夜の
仕掛けた罠にかからぬように。今日、
わたしの王国はあのノー・マンズ・ランド。
港はだれか他人のために灯りをともし、
わたしはひとり沖に出る。まだ逸る精神と、
人生へのいたましい愛に、ながされ
===
とくに最後の部分:
...............................Il porto
accende ad altri i suoi lumi; me al largo
sospinge ancora il non domato spirito,
e della vita il doloroso amore.
***
英語でざっくり訳すと
...............................The port
ignites to others its illumination; me to the offshore
still pushes out the untamed spirit,
and of the life the painful love.
***
それが彼女の手にかかると
港はだれか他人のために灯りをともし、
わたしはひとり沖に出る。まだ逸る精神と、
人生へのいたましい愛に、ながされ
****
人生へのいたましい愛に、ながされ
というのが海のイメージとマッチして心に沁みいるよう。
2010.02.08 Mon | Language|
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