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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
「水の音―広重から千住博まで―」展(@山種美術館)
今、山種美術館で、水の音をテーマに、涼しげな展覧会が行われている。


波、滝、川、雨 ・・様々な水の顔が楽しめる中、あの作品もあった。
奥村土牛の『鳴門』。

ある時、といっても本美術館がまだ九段にあった頃、
「今日見た絵の中で一番お気に入りはコレダ!」と“指名”したのがこの絵だった。

ウグイス色とも呼べる微妙な緑の色合い、白濁する渦潮の勢い。
絵の題材としての”渦潮”に当時馴染みがなく、斬新に感じたのを覚えている。
吸い込まれてしまいそうな荒々しい水の勢いを絵筆でここまで表現できるんだなぁ、
と何度も絵の前に戻って繰り返し見入った。

以来、『鳴門』は『醍醐』とともに、私の中の土牛作品双璧。


なつかしい絵といえば、奥田元宋さんの『奥入瀬(秋)』もあった。
奥様の奥田小由女さんが講演会でおっしゃっていたのを覚えている。
画家は「自分が水・流れになったかのよう」にこの絵を描かれた、と。
だからこその水と木々の一体感。
(8月17日の日曜美術館アートシーンで「奥田元宋・小由女美術館」が取り上げられるようだ)

赤の表情が実に多彩。
力強さも感じ、渾身の力で描いたことがしのばれる。


*以下、写真はブロガー内覧会の機会に許可を得て撮影しています。

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●奥田元宋/『奥入瀬(秋)』



今回は、これまでの酷暑もあいまってか、千住博さんの
『ウォーターフォール』や『松風荘襖絵習作』の滝の、ツララのような鋭利な冷たさが心地よかった。
耳で聴くというより、肌で涼を感じるといった触感先行型で。

前者は、水面から立ち昇るミクロな水しぶきが眼前に広がって、大迫力でありつつ繊細。

後者は闇に浮かぶ水の層が、まるでオーロラのよう。

音で表現するとどうなるだろう:
様々な表情をもつ水の紋様が奏でるのは荘厳なリズム、
水のほとばしりは大胆なのに、どこか相反した静けさも感じる不思議な世界。

暗い背景と滝だけの組み合わせ。
和の絵が集う会場内で、シャープなモダンさが際立っていた。


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●千住博/『ウォーターフォール』


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●千住博/『松風荘襖絵習作』



会場には、千住さんの立体作品もあった。
木目風の渓流、と思って見ていた『水 渓谷』が、よく見たら陰影がついていて、木片を置いてつくられたものだと知った。
しなやかな発想。
いい感じで木の紋様が川のように流れていた。
流れが変わる中洲のような部分には一羽の鳥という趣向。


一方、趣きはガラリと異なって、横山大観『夏の海』は、右上から左下へと流れる男性的なリズムが小気味よい。

浮世絵のような手前の波と、おおらかな うねりが全く違う筆致で描き分けられ、
2種類の波とギザギザ岩が、三つ巴にがっつりぶつかり合う。
元気がもらえるようで、この作品も好き。

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●横山大観/『夏の海』

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●横山大観/『夏の海』(部分)


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●横山大観/『夏の海』(部分)



その他、素晴らしい着想、細やかな技法で心に残ったのは、『水花火(螺)』(宮廻正明氏)。
点描のコバルトブルーの水を背に広げられた花火のようなまっ白い網が鮮やか。
網が咲かせた大輪の花のインパクト。


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宮廻正明/『水花火(螺)』



「波のイメージ」、「躍動する波」、「きらめく水面」で川、滝、海を見た後は、第4章に「雨の情景」が待っている。

雨の情景といって浮かぶのは、国立近代美術館の『小雨ふる吉野』(菊池芳文)。
奥の雨に煙る風景に対し、手前の桜を打つ雨は水滴としてではなく、空気として描かれている。

そんなしっとりとした空気感を、川合玉堂の『水声雨声』の中にも見た。
背景はうっすらと霞み、幻想的でそこはかとなく美しい。
縦に広がる空間の中、傘を差したふたりの女性の小粒さ加減が愛らしく。


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●川合玉堂/『水声雨声』



前半に展示されていた同じ川合玉堂の『鵜飼』も、濃淡で魅せる作品。
奥の人物たちは霞んで、手前と違う空気感。
浮世絵のように線で表された波。

鈍く光る金色が美しく、ふと思い出した、山崎館長の言葉。
炎を金泥で描いていると。

船の上のおじさんの表情が柔和で心が和む。
この絵だけではない。
いつもどこかしら“癒し”を感じる、川合玉堂の絵に。


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●川合玉堂/『鵜飼』

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●川合玉堂/『鵜飼』(部分)



ちなみに雨霞といえば、最後の展示室にあった小茂田青樹『春雨』にも、雨交じりの湿潤な空気が描かれていた。

Cafe椿では、毎回いくつかの作品をもとにつくられた菊家さんの和菓子が用意されるのだけど、
今回私が選んだのはこの『春雨』にちなんだ「花の露」。
雨を含んだ淡い桃色のカイドウの佇まいを思い出しつつ、舌つづみ。


写真 (41)


事前に「青い日記帳」のTakさん、山崎妙子館長のお話もあり、充実の時。
今回も感謝です、「青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会 第4弾」。


展覧会名: 「水の音―広重から千住博まで―」展
http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html
会期: 2014年7月19日(土)~9月15日(月・祝)
休館日: 月曜日(但し、7/21, 9/15は開館)
会場: 山種美術館
開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
2014.08.10 Sun | Art| 0 track backs,
横浜トリエンナーレ2014 序章 : アートのゴミ箱に捨てられた一歩手前の美術品たち
サッカーボールには「HI BI NO」の文字。
日比野克彦さん制作のサッカーボールだ。
横浜トリエンナーレ2014会場特設の”ゴミ箱”に、これが埋もれていたワケとは・・・

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* * * * * *

8月1日から、約3ヶ月ほど続く横浜トリエンナーレ2014が始まった。

ビエンナーレやトリエンナーレというと、現代芸術がどさっと集合し、全体感が捕えがたいイメージもある。
けれど実際に行ってみて、全く難解という感じではなく、想像以上に心の中にぐいぐい響いてくるので驚いた。


本トリエンナーレのタイトルは「華氏 451 の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。

「忘却」というメインテーマを軸に見ていくせいか、散漫にならず、作品同士が有機的に結びついているのを感じた。
そんな一つの大きなまとまりの中で、個々の作品から様々な感情が湧いてくる。


◆ ヴェネチアの風景

ここでまず、このトリエンナーレという言葉について。
triathlon=トライアスロン(3種類競技)、triangle=三角形、triple=3倍に見られるように、
「トリ=Tri」というのは数字の「3」を表す接頭辞。
つまり、Triennale(トリエンナーレ)は3年に1回の開催だ。


ちなみに、二輪車=bicycle同様、2を表す接頭辞「bi」がつくビエンナーレ(biennale)は2年に1度の美術祭。

ヴェネチア・ビエンナーレ会場の前を、水上船ヴァポレットで通りかかったことがある。
(ジロ・ディタリアのプレスセンターが、この近くだったのだ。)
その時は会期外で、専用の公園のようになっていた。


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場所は、島の端っこの方だけど、サンマルコ広場までそう遠くはない。

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ヴァポレットの駅名もズバリ、ビエンナーレだ。

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◆ アート・ビンに埋もれていた森村泰昌さんの着衣のマハ!


昨年10-12月、原美術館で「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」展を見た際、
次の(つまり今回2014年)横浜トリエンナーレのアーティスティックディレクターが森村氏であることを知り、楽しみにしていた。


もっともいざ行ってみると、会場で森村さんが黒子にならず、あからさまかたちで登場(?)するのは序章に置かれている<アート・ビン>だけ。
<アート・ビン>=芸術のごみ箱は、忘却の容器という位置づけだそう。

つまり、失敗作、未完成作など、名作になる途中で日の目を見なかった作品たちを、このビン(ゴミ箱)に投入することで、
完成品に到達するまでの道程で、地となり肉となったであろう試行錯誤の形跡を掘り起こそう、といった試み。


会場のひとつ横浜美術館内、写真右手の階段踊り場から、作品をひょいと投げ捨てる儀式が先に行われた。
但し投棄可能なのは、芸術品と見なしてもいいよね、といった作品のみ。
(また、生ものその他、NGのものについては事前に規定あり。)


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森村さんによると、「心の眼」で見るものが芸術品という定義なので(いい言葉だな)
アート・ビンの中には、まあちょっと微妙な物体も多々。

そして冒頭のサッカーボールはこちらの左隅に。
つまり、芸術品としてこれ自体は大成しなかったけれど、その過程が別の形として結実される、
そんな証言者が廃棄箱にあるこのボールであるのだろう。

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なによりド派手にアート・ビンの一角を占めるこれこそ、ザッツ森村さん。

原美では、裸のマハ(森村さんがなりきってゴヤが描いたマハを演じ、それを写真と絵画で表現したもの)を見たことがある。

こちらは、着衣のマハが上下につらなる作品。
完成品とその一歩手前を分けるものがどこなのか私にはわからないけど、
なにしろ、おさらばすべき作品のようだ。


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さて、いよいよメイン会場へ。

(続く)

公式サイト:
http://www.yokohamatriennale.jp/2014/index.html

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横浜トリエンナーレ2014 序章 : アートのゴミ箱に捨てられた一歩手前の美術品たち
横浜トリエンナーレ2014 : その2 鏡文字は頭がクラクラするのだった
横浜トリエンナーレ2014 : その3 教会の一室のような第3話の部屋

2014.08.10 Sun | Art| 0 track backs,
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