世界中の美術館のコレクションが成立した背景には、それぞれに、なにやらキナ臭い背景や波乱万丈の経緯があるものだ、そんなことを強く実感した「プーシキン美術館展」@横浜美術館の夜間特別観覧会。
プーシキン美術館の場合、コレクションに寄与したのは、1917年の10月革命だったという。
革命により個人の美術所蔵品が国家によって接収されるという、ある意味において悲劇がもとで、結果的に多くの人々が美術館の展示として恩恵を受けることとなる。
今年2/10のDiaryに書いたとおり、美術館という概念が始まったのは紀元前3世紀のこと。
今では文部科学省文化庁長官になられた青柳正規先生が世界記憶遺産「山本作兵衛コレクション」シンポジウムで紹介されたお話によると、
とのこと。
(ちなみに国立西洋美術館館長でもあられる青柳先生は、美術館内での写真撮影容認派。実際常設展撮影OKで最初は驚いた。産経新聞記事)
以来、個人コレクションが基になったり、国家として収集したりといろいろな形態があるわけで、例えばフランスのピカソコレクションなどは、ときの文化相アンドレ・マルローの機転のお蔭で救われた、と聞く。
たしか六本木のピカソ展のギャラリートークで拝聴した話ながら、相続税を支払うため所有していたピカソの膨大なコレクションが放出される、といった事態を予見し、相続税として物納を許可する対策をとり、作品が散逸を免れたとのことだった。
つまり国家として買い上げてしまう方式。
プーシキン美術館設立の経緯は下記の通りだそう。1917年に注目:
*夜間特別観覧会の為、特別に撮影許可がおりました。以下の3枚は、その許可を受けて撮影したものです:
(この続きもあるけれどここではカット)
そして、核となったコレクター:
エカテリーナ2世、
ニコライ・ユスーホフ、
アレクサンドル2世、
セルゲイ・トレチャコフ、
セルゲイ・シチューキン、
イワン・モロゾフ
国による接収などという理不尽な目にあった個人収集家は気の毒だ。
モロゾフ氏はどは接収後、当該美術館の学芸員になるという屈辱を味わった後姿を消し、その後まもなく没している。
ただ、そんな悲劇を通してできあがったコレクションを、公共の民がいま共有させてもらっている。
個人収集家は、こんな具合に自宅の壁を絵画で埋め尽くし、分厚い鉄の扉などで厳重に保管するなどしていたらしいので、接収がなければ、日の目を見なかったことは想像できる。
ふと思った。
そういえばルーブルもエルミタージュも大英博物館も、むろん企画展はあるものの、常設展がメインとなる。
ところが日本の美術館は、たとえば、国立新美術館などが好例で、企画展のみの運営方式。
国立西洋美術館は確かに常設展が充実しているものの、あれはもともと松方コレクションが原型で、松方氏は、一万点もの作品を所有するに至り、私財を投じて美術館をつくろうとしていた。
しかし、ビジネスが傾き、放出を余儀なくされ、欧州に散逸。
ロンドンに渡った作品は火災ですべて焼失。
パリの400点のみがサバイバルし、フランス国家の所有物となったあと、日仏友好のしるしにフランスから返還されて日本が所有することになったわけだ。
(私は上記の経緯を国立西洋美術館のパネルで知ったのだが、最初にパネルに吸い寄せられた理由は、松方氏の美形の写真ゆえだったことを白状しておく。同じ解説がここのページにも出ている。)
日本というのは、国家として美術品の散逸を防ごうとする動きが鈍いのではないか?
山種氏だとか松尾氏だとか出光氏とか、個人に収集を任せているかのよう。
昨今、地方自治体の収集熱は盛んだけれど、国としてせっせと作品の収蔵を熱心にやってきたのは、竹橋の近代美術館ぐらいなのでは?
浮世絵にしても、私の場合、最初にまとまって目にしたのはクロード・モネの自宅の壁だったという始末。
大体、根付などというものの存在を知ったのだってヴィクトリア&アルバート美術館。
圧巻のコレクションで、一体日本は何をしているのだろう?と首を傾げた。
これでは略奪の憂き目にあったエジプトやギリシャが他人事ではないのでは?
マルローやジャック・ラングのような人が日本には現れなかったせい?
或いは、MEXT(文科省)の守備範囲が多すぎるせい?(規制庁ができるまでは原子力保障措置までカバー範囲だったし。)
歴史や歴史の宝を守る事業を個人の篤志家に任せている、ちょっと甘えているような印象もあり、
(山本作兵衛氏の炭鉱記録画を思い浮かべるにつけても)、
文化遺産の保存が軽視されているような印象もあり。
国家と美術品保護の在り方について、しみじみ、考えさせられる展覧会だった。
****
*美術館展:プーシキン美術館展
http://pushkin2013.com/index.html
会場:横浜美術館 ← いまここ
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
会期:2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
アクセス:※6月21日より、みなとみらい駅最寄り出口が、5番から3番へ変更
開館時間:10:00~18:00
(8月、9月の金曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日(ただし8月1日、15日は開館)
<<<<<<
会場:神戸市立博物館
〒650-0034 神戸市中央区京町24番地 アクセス
会期:2013年9月28日(土)~12月8日(日)
開館時間:9:30~17:30
(土曜・日曜は19:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館、10月15日(火)と11月5日(火)は休館)
プーシキン美術館の場合、コレクションに寄与したのは、1917年の10月革命だったという。
革命により個人の美術所蔵品が国家によって接収されるという、ある意味において悲劇がもとで、結果的に多くの人々が美術館の展示として恩恵を受けることとなる。
今年2/10のDiaryに書いたとおり、美術館という概念が始まったのは紀元前3世紀のこと。
今では文部科学省文化庁長官になられた青柳正規先生が世界記憶遺産「山本作兵衛コレクション」シンポジウムで紹介されたお話によると、
ギリシャにおけるムセイオン(今のMuseum)の発想は、紀元前3世紀にはじまった。
その100-200年前に、空前絶後の天才が続出し、もうああいう天才は不出だろう、
先達の偉業を残さねば、進歩はない、という発想に至った。
とのこと。
(ちなみに国立西洋美術館館長でもあられる青柳先生は、美術館内での写真撮影容認派。実際常設展撮影OKで最初は驚いた。産経新聞記事)
以来、個人コレクションが基になったり、国家として収集したりといろいろな形態があるわけで、例えばフランスのピカソコレクションなどは、ときの文化相アンドレ・マルローの機転のお蔭で救われた、と聞く。
たしか六本木のピカソ展のギャラリートークで拝聴した話ながら、相続税を支払うため所有していたピカソの膨大なコレクションが放出される、といった事態を予見し、相続税として物納を許可する対策をとり、作品が散逸を免れたとのことだった。
つまり国家として買い上げてしまう方式。
プーシキン美術館設立の経緯は下記の通りだそう。1917年に注目:
*夜間特別観覧会の為、特別に撮影許可がおりました。以下の3枚は、その許可を受けて撮影したものです:
(この続きもあるけれどここではカット)
そして、核となったコレクター:
エカテリーナ2世、
ニコライ・ユスーホフ、
アレクサンドル2世、
セルゲイ・トレチャコフ、
セルゲイ・シチューキン、
イワン・モロゾフ
国による接収などという理不尽な目にあった個人収集家は気の毒だ。
モロゾフ氏はどは接収後、当該美術館の学芸員になるという屈辱を味わった後姿を消し、その後まもなく没している。
ただ、そんな悲劇を通してできあがったコレクションを、公共の民がいま共有させてもらっている。
個人収集家は、こんな具合に自宅の壁を絵画で埋め尽くし、分厚い鉄の扉などで厳重に保管するなどしていたらしいので、接収がなければ、日の目を見なかったことは想像できる。
ふと思った。
そういえばルーブルもエルミタージュも大英博物館も、むろん企画展はあるものの、常設展がメインとなる。
ところが日本の美術館は、たとえば、国立新美術館などが好例で、企画展のみの運営方式。
国立西洋美術館は確かに常設展が充実しているものの、あれはもともと松方コレクションが原型で、松方氏は、一万点もの作品を所有するに至り、私財を投じて美術館をつくろうとしていた。
しかし、ビジネスが傾き、放出を余儀なくされ、欧州に散逸。
ロンドンに渡った作品は火災ですべて焼失。
パリの400点のみがサバイバルし、フランス国家の所有物となったあと、日仏友好のしるしにフランスから返還されて日本が所有することになったわけだ。
(私は上記の経緯を国立西洋美術館のパネルで知ったのだが、最初にパネルに吸い寄せられた理由は、松方氏の美形の写真ゆえだったことを白状しておく。同じ解説がここのページにも出ている。)
日本というのは、国家として美術品の散逸を防ごうとする動きが鈍いのではないか?
山種氏だとか松尾氏だとか出光氏とか、個人に収集を任せているかのよう。
昨今、地方自治体の収集熱は盛んだけれど、国としてせっせと作品の収蔵を熱心にやってきたのは、竹橋の近代美術館ぐらいなのでは?
浮世絵にしても、私の場合、最初にまとまって目にしたのはクロード・モネの自宅の壁だったという始末。
大体、根付などというものの存在を知ったのだってヴィクトリア&アルバート美術館。
圧巻のコレクションで、一体日本は何をしているのだろう?と首を傾げた。
これでは略奪の憂き目にあったエジプトやギリシャが他人事ではないのでは?
マルローやジャック・ラングのような人が日本には現れなかったせい?
或いは、MEXT(文科省)の守備範囲が多すぎるせい?(規制庁ができるまでは原子力保障措置までカバー範囲だったし。)
歴史や歴史の宝を守る事業を個人の篤志家に任せている、ちょっと甘えているような印象もあり、
(山本作兵衛氏の炭鉱記録画を思い浮かべるにつけても)、
文化遺産の保存が軽視されているような印象もあり。
国家と美術品保護の在り方について、しみじみ、考えさせられる展覧会だった。
****
*美術館展:プーシキン美術館展
http://pushkin2013.com/index.html
会場:横浜美術館 ← いまここ
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
会期:2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
アクセス:※6月21日より、みなとみらい駅最寄り出口が、5番から3番へ変更
開館時間:10:00~18:00
(8月、9月の金曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日(ただし8月1日、15日は開館)
<<<<<<
会場:神戸市立博物館
〒650-0034 神戸市中央区京町24番地 アクセス
会期:2013年9月28日(土)~12月8日(日)
開館時間:9:30~17:30
(土曜・日曜は19:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館、10月15日(火)と11月5日(火)は休館)
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2013.07.07 Sun | Art|
0 track backs,
人生七転び八起き。
大げさながらつくづくそう思う。(いや、かなり大げさ)
なんとなれば、思いがけずランチ難民になり、周辺をあちこち徘徊して、「えいや」でたまたまロシア料理店を選んだのだが、これが予期せぬナイスチョイスだったのだ。
と、いうのもー
店の名前は「マトリョーシュカ」。
店内には、ズラリと並んだマトリョーシュカ。
(よく見ると、手前のみならず、奥にも小さいのが)
だがこの時、私は夜のイベントのことは全く意識していなかった。
実は、モスクワにあるプーシキン美術館からきている絵画展を鑑賞することになっていた。
そして夜。
20時まで、1時間半ほど横浜美術館で「プーシキン美術館展」の夜間特別観覧会を堪能した後、出口へと続くショップに足を踏み入れた途端、あっと、小さく叫んだのだった。
ま、またしても、マトリョーシュカ!
(*ショップの写真ですが、夜間特別観覧会の為、特別に撮影許可がおりました。)
下記のようなTシャツまで!(デザインのみならず、並べ方も!)
かくしてマトリョーシュカに始まり、マトリョーシュカの隊列に見送られて帰宅、という、マトリョーシュカ・オンパレードのメモリアル的1日となったのだ。
***
*ランチ:マトリョーシカ 恵比寿店
東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 アトレ恵比寿6F
http://r.gnavi.co.jp/g261001/menu1/
いただいたランチメニュー;
ツーレのチョイス - ボルシチとサラダと
チキングリルとドリンクのセット
私のチョイス - サラダとチキンストロガノフと
壺焼き(チョイスで私は小エビ+キノコ)とドリンクのセット
ドリンクは、2人ともロシアンティーを選択。
これでひとり1300円弱というお得なセット。
ちなみに、最初目指したのは、恵比寿・千疋屋のランチだった。
ところが、かつてない大行列で断念。
この混雑、向かいの神戸屋等が入っている一角が改装で一時閉店になったのが一因と思われる。
かくして20分ほど、路頭に迷ったのだった。
*美術館展:プーシキン美術館展
http://pushkin2013.com/index.html
会場:横浜美術館 ← いまここ
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
会期:2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
アクセス:※6月21日より、みなとみらい駅最寄り出口が、5番から3番へ変更
開館時間:10:00~18:00
(8月、9月の金曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日(ただし8月1日、15日は開館)
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会場:神戸市立博物館
〒650-0034 神戸市中央区京町24番地 アクセス
会期:2013年9月28日(土)~12月8日(日)
開館時間:9:30~17:30
(土曜・日曜は19:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館、10月15日(火)と11月5日(火)は休館)
大げさながらつくづくそう思う。(いや、かなり大げさ)
なんとなれば、思いがけずランチ難民になり、周辺をあちこち徘徊して、「えいや」でたまたまロシア料理店を選んだのだが、これが予期せぬナイスチョイスだったのだ。
と、いうのもー
店の名前は「マトリョーシュカ」。
店内には、ズラリと並んだマトリョーシュカ。
(よく見ると、手前のみならず、奥にも小さいのが)
だがこの時、私は夜のイベントのことは全く意識していなかった。
実は、モスクワにあるプーシキン美術館からきている絵画展を鑑賞することになっていた。
そして夜。
20時まで、1時間半ほど横浜美術館で「プーシキン美術館展」の夜間特別観覧会を堪能した後、出口へと続くショップに足を踏み入れた途端、あっと、小さく叫んだのだった。
ま、またしても、マトリョーシュカ!
(*ショップの写真ですが、夜間特別観覧会の為、特別に撮影許可がおりました。)
下記のようなTシャツまで!(デザインのみならず、並べ方も!)
かくしてマトリョーシュカに始まり、マトリョーシュカの隊列に見送られて帰宅、という、マトリョーシュカ・オンパレードのメモリアル的1日となったのだ。
***
*ランチ:マトリョーシカ 恵比寿店
東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 アトレ恵比寿6F
http://r.gnavi.co.jp/g261001/menu1/
いただいたランチメニュー;
ツーレのチョイス - ボルシチとサラダと
チキングリルとドリンクのセット
私のチョイス - サラダとチキンストロガノフと
壺焼き(チョイスで私は小エビ+キノコ)とドリンクのセット
ドリンクは、2人ともロシアンティーを選択。
これでひとり1300円弱というお得なセット。
ちなみに、最初目指したのは、恵比寿・千疋屋のランチだった。
ところが、かつてない大行列で断念。
この混雑、向かいの神戸屋等が入っている一角が改装で一時閉店になったのが一因と思われる。
かくして20分ほど、路頭に迷ったのだった。
*美術館展:プーシキン美術館展
http://pushkin2013.com/index.html
会場:横浜美術館 ← いまここ
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
会期:2013年7月6日(土)~9月16日(月・祝)
アクセス:※6月21日より、みなとみらい駅最寄り出口が、5番から3番へ変更
開館時間:10:00~18:00
(8月、9月の金曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日(ただし8月1日、15日は開館)
<<<<<<
会場:神戸市立博物館
〒650-0034 神戸市中央区京町24番地 アクセス
会期:2013年9月28日(土)~12月8日(日)
開館時間:9:30~17:30
(土曜・日曜は19:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館、10月15日(火)と11月5日(火)は休館)
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2013.07.07 Sun | Gourmet|
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