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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
山種美術館:「川合玉堂―日本のふるさと・日本のこころ」
さきほど、山種美術館で開催中の「川合玉堂―日本のふるさと・日本のこころ」のブロガー内覧会から帰宅。

穏やかな風景画に囲まれた至福の時。
そんな中、思わず、おお、と声に出してしまった作品がこれ。

「行く春」の小下図。
3番目と最後から4番目の写真以外はすべて、山種美術館の許可を得て撮影したものです

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所謂下絵なのだけれど、切り貼りが施してあり、慎重にあの壮麗な屏風の構想が練られたことが感じられる。

6曲・1双 の屏風なので、12区画に分ける仕切り線が縦に引かれているのが見える。

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以前ブログに書いたとおり、「行く春」は近美の所蔵画の中でも、大好きな1枚。

* 昨年11月のエントリー:「東京国立近代美術館 60周年記念特別展 「美 術 に ぶ る っ!」 夜間特別観覧会 その2」
(*)下記写真は、そのエントリーから。(国立近代美術館の許可を得た写真です)



下絵では、位置に腐心した水車がこういうかたちで↑ 入れられることになった。


そして、本ブログでは、過去更にもう一度、川合玉堂のことに触れている。


2009年12月のエントリー「写真美術館:木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン」の中で。


木村伊兵衛が撮影した川合玉堂氏のポートレート写真が印象に残り、
ちらりとコメントを残した。

たいそう立派な和室で画と向き合っている写真で、
あの展覧会のポートレートの中でもひときわ印象に残った。

すばらしくリッチな和室だなぁ、絵の具だらけの乱雑なアトリエとは無縁の
いたって静謐な場所で名画の数々は生まれたのかぁ、などと。


ところで、上述の「行く春」の屏風画では、実はよく見ると、桜の上に雨が降り注いでいる。
筆さばきによって、控えめに表されている細い雨と、ほのかに漂う湿度が艶っぽい。


本日見た「鵜飼」の絵をはじめ、氏の絵には水が多用されている。
さまざまな表現方法で、霧、雨、川、海、だけでなく、湿潤な空気で満たされている。


そんな水辺の景色を拾いつつ鑑賞。

「早乙女」の絵では、視点は水にはなく、あえてのっぺりと。


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対極の「瀑布」(玉堂美術館蔵からの貸出)はしぶきをあげ、ほとばしる滝のさまが
リアル力強く描かれ。


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掛け軸「湖村春晴」では船は点景なので、さざ波がおおらかに。

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更に、こちらの水表現は、一味違う。
抑え気味の極上の水色。
今回の展示作品の中でも見た瞬間恋に落ちるように、いいなぁと思った1枚。
「春風春水」。

いつまでも眺めていたい。
どちらかというと硬質な水辺の景色を和らげるかのように、手前の船上の人物がお茶目。

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「雨江帰漁」の雨の表現は、「行く春」で桜の木を濡らしていた雨よりも大胆で、
雷雨のよう。

湿気が充満し、雨が匂う。

そうそう、玉堂先生の絵の題は、4文字熟語が多くて、どれも秀逸。
お習字をたしなむ人ならではか。

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「荒海」の波には浮世絵のような縁取りがあり。

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霧に煙ったような「鵜飼」では、遠くにかすむ人々を見て、

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つい先日見たローマ・ジェズ教会のバチッチャの天井画を浮かべた。
双方とも遠景の人々が、淡くぼかされ描かれ、
「鵜飼」では水蒸気漂う中、天井画では雲のかなたに人物たちが消え入りそう。

まあ、画風は全く異質だけれど。




川合画伯の水表現において、驚いたのはー

33歳の時に描いた橋本雅邦氏的な「渓山秋趣」と、

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78才で描いた「涛声松籟」の趣が似ている点。
橋本雅邦の絵は、つい先日、泉屋博古館で見てきたばかり。

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生涯を通じて画風ががらりと変わってしまう人がいる中で、
晩年に初期の画風からそれほど大きく逸脱していないような作品が再登場している。

さまざまな手法を駆使しつつも、どこかぶれないというか、
精神的にも安定感のあった人なのだろうか。


最後、帰り際に、さらなるサプライズが一つ待ち受けていた。
これだ。

これが、安田靫彦によるものだとは失念していた。

それにしてもなんたる偶然、、、

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先日富士フィルム写真展「土門拳の古寺巡礼」を見たときの感想の中で、
「古寺巡礼」全集の題字を手掛けた安田靫彦についてちらりと触れたばかり:

*「土門拳の古寺巡礼」のエントリー

しかも、今日、古寺巡礼のレクチャーがあったので、山種に行く前に再訪して、
安田靫彦の「古寺巡礼」の題字を見てきたところだった。


いろんなことがつながって、穏やかな充足感に満たされつつ、眠りにつけそう。

***

http://www.yamatane-museum.jp/
山種美術館
<<川合玉堂―日本のふるさと・日本のこころ>>
2013年6月8日(土)~8月4日(日)
〔一部展示替 前期:6/8~7/7 後期:7/9~8/4〕
2013.06.23 Sun | Art| 0 track backs,
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