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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
ルーベンスのイタリア・マントヴァ滞在期を中心に
「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」(Bunkamuraザ・ミュージアム他)
監修者中村俊春氏(京都大学大学院文学研究科教授)による講演会
H25.3.9

土曜日、ルーベンスのマントヴァ滞在当時の話、という貴重な講演会に行ってきた。


マントヴァには前からもう行きたくて行きたくて、
2011年、ボローニャから電車を乗り継いで念願を叶えた。

ジュリオ・ロマーノやマンテーニャらは、ゴンザーガ家のお抱えだった。
芸術のパトロンがいた町ってすごい。

ゴンザーガ家は、美術品の収集で最後は傾いたそうだけれど、
単に収集しただけでなく、
お気に入りの芸術家たちをお抱えとして重用し、育て、
芸術を開花させた、その功績のおかげで、町全体が輝いている。


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(ドゥカーレ宮殿 2011)


さて、今回の講演会。実はタイトルにちょっと不思議な印象を受けた。
私が行ったマントヴァには、ルーベンスの影など
ありはしなかった。

だから、え?お抱え芸術家だったの?と驚いた。

そんな感じでワクワクしつつも、ややいぶかしく思いつつ講演会に足を運んだ。


そして、話を聞いて、私の印象はある意味間違っていなかったと知る。

1600-09年イタリアへ渡ったルーベンスは、ゴンザーガ家に仕えたものの
実際には、ローマの教会画以外で、ほとんど出番はなかったという。

スペイン王にゴンザーガが絵の贈り物をしたとき、
運び屋として任命されたものの、その絵の中に
彼の作品は皆無だった、、、
そんな屈辱も味わった。


今回のレクチャーを聞いて、ふと思ったのは、ゴンザーガはやはり
最終的にはフランドル派の画家をイタリア人画家より下に見ていたのではないかということ。


イタリアでは、フランドル絵画は細密・感情重視だが、知性がない、といわれた時代。
最後までその偏見を拭い去ることはできなかったのではと。


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(ドゥカーレ宮殿 2011)


ルーベンスの唯一のイタリアでの功績は、
ローマのサンタ・マリア・イン・ヴァリチェッラ聖堂の絵を頼まれたこと。

1607年のこと。

下記右は、その聖堂画の第一バージョンの習作として用いられたそうだ。
そのほか、アントワープ王立美術館所蔵の絵も、この習作が下敷きになったよう。

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ただし、下絵に描かれているフランドル独特の個性的な表現は、聖堂用に描かれた時には排除され、
抽象的な女性へと変えられた。

イタリアの絵に近づくためだ。

そのヴァリチェッラ聖母画の第一バージョンは現在、グルノーブルにある。

つまり最初に描いたこの絵は不採用となったわけ。

カンヴァスに描いたため、光の反射で見えないとわれ拒否されたともいわれ、
第二バージョンは、カンヴァスではなく石に描かれる。

そして、今度は採用。


丁度その頃マリアの死(カラヴァッジョ)が売りに出される。

ルーベンスはその絵を評価、ゴンザーガに購入を勧める。
ゴンザーガは、迷っていたが買うことを決めた。
 
ルーベンスは当時絵のよしあしのアドバイス役も仰せつかっていた。

そのほか彼はロンガリのローマの絵も評価し、主に勧めたことで、
1608年、ゴンザーガの収集は、(当時でいうところの)現代の絵にも広がった。

そこでルーベンスは内心ひそかにチャンス到来を予感する。

ヴァリチェッラ教会で不採用になった第一バージョンの絵を買うよう
ゴンザーガに自ら勧めたのだ。

ところが!それは拒否された。
1608年、彼は失意のまま、
マントヴァ公にあいさつもせずローマから直接アントワープに帰国する。
(母が危篤で)

これでゴンザーガとはうやむやのまま縁切りとなり、二度とイタリアを訪れることはなかった。


なるほど、マントヴァにルーベンスの足跡を見つけられないのは当たり前なのだ。

彼はゴンザーガに仕えこそしたが、ロマーノやマンテーニャのように
自身の芸術制が同等に高く評価されたわけではなかった。

挙句の果てに、美人画を描け、などという注文を受けたりして、
それは断固断ったのだとか。


なりたい姿と、求められる姿のギャップに、苦しんださまがうかがわれる。


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左がルーベンス、右はティツィアーノ。


ちなみに当時、巨大画が評価された結果、ルーベンス工房で3-4mの連作が描かれ、
今ルーブルの一室を占めてる。

見に行ったことがあるが、あまりにルーベンス一色で、1つ1つの違いがよくわからず、
ほとんど素通りしたのを覚えている。


パリ在住の友人は何週間も通い詰めて、この部屋を攻めた。
それぞれの絵の解説本とつけあわせしたそうだ。

そのぐらいしないと、大味で余りじっくり鑑賞する気が起こらない。


つくづく思った。
絵は、ちょこっと来日して、ありがたく拝見するほうが、心に残る。


というわけで、Bunkamuraミュージアムでルーベンス展開催中。
2013.03.12 Tue | Art| 0 track backs,
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