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イタリア古寺巡礼 その2 :アッシジとフィレンツェのフランチェスコ
ローマ、ナポリ、シチリア、アッシジ、フィレンツェ、ボローニャ、ラヴェンナ、パドヴァ、ヴェネツィアから構成されている和辻哲郎氏の「イタリア古寺巡礼」。

ナポリ以外は行ったことがあり、実際に見たものであふれているので文章を追うごとに、感心しきりだ、和辻氏の洞察力と、造詣の深さに。
繰り返しになるけれど、1927年に書かれたものとは思えない。

いや、今と違って情報量が少ない昔だから知識量も少なかったであろう、などという浅はかな自分の考えを恥じるべきかもしれない。
今も昔も、ものごとの価値を見分ける力をもった人はいる、ということだ。

そして改めて思う - こういう人こそが、真に芸術の都に行くに価する人なのであり、私なんぞが半端なガイドブックの知識で行った気になることが、そこはかとなく軽薄に感じられて仕方ない。

今日読んだのは、アッシジの章。
なんとあの有名なジョットの壁画をけちょんけちょんにけなしている。


「写真で想像していたよりも実物の方がよいと思ったのは二つしかない。そのひとつは、、、<聖フランチェスコ小鳥に説教する図>である。」



「そして、<ラザロの復活>の絵にいたっては、おおぜい並んでいる人物の衣が、あまり感じのよくない赤や青に塗ってあって、それがひどく感じを損なっているように思う。」

とある。

「しかしこの絵などはまだいい方なのである。ほかに二間四方もあろうと思われる大きい画面で、赤い色の使い方の実にひどいのがある。フランチェスコが手を上げて立っている絵などでは、街の中に見える塔がいくつも赤い色に塗ってある。それが非常に目障りである。」




恐らくこの絵のことだろう。(ガイドブックの絵から:右)


P1210566.jpg


悪魔たちを追い払うフランチェスコが描かれているのだが、この悪魔の様子がお茶目で笑いを誘う。
そして建物のパステル調のファンシーな色使いが現代的でハイカラだと思った。

だが、言われてみれば、この赤の色のモダンともいえる色使いが、荘厳なイメージを損なっているのは確かで、ちょっとファンシーすぎるかもしれない。
赤、というより桃色、ともいえる少々品のない色、という見方もありだろう。

ただ、”巨匠”の絵を前に、素直に見るより先に、まずすごい絵という先入観が先に来るので、これを桃色だなんて思うことに考えが至らないわけだ。

和辻氏は、写真を見たりして、下調べをばっちりしているようなのでこの絵のこともすでに知識として持った上で対峙したに違いないけれど、有名な絵、上手な絵、という先入観なしで、自分の目で見て、自分の言葉で語っている。

名声に左右されない鑑識眼、読むほどに圧倒される。

下左が、小鳥に説教するフランチェスコの絵。
突飛な色使いがなく、彼がほめている絵。
私などは、周囲の絵がカラフルなので、この絵の寒い色調が地味でさびしく思えたのだった。


P1210567.jpg


ただしその後のフィレンツェの章で、和辻氏は、ジョットの聖母子の絵を高く評価している。
特に色使いに拘って鑑賞しているのがわかる。

「。。この赤色の効果は、金色と絡み合うことによって発揮されているのであって、両者をひき放すことはできないであろう。マリアの光背やキリストの光背の金色、さらに玉座の背面の壁の金色などはいうまでもなく、マリアの衣の縁には金糸の装飾があり、玉座の敷物にも、装飾文様にも、すべて金の細い線が入り混じっている。その金色が濃朱や濃紺の色と相映発して、なかなか荘厳な感じである。」



このあとパドヴァの章もあるので、スクロヴェーニ礼拝堂のジョットの絵を、彼はどのように評価するのか、楽しみだ。


そして、ダヴィンチの絵に話は移り -

「こういう点を考えていくと、ジョットーやフラ・アンジェリコのころまでは宗教芸術であったものが、15世紀後半に至って宗教芸術でなくなってくる、という1つの転機を認めなくてはならぬ。
題材は同じものを襲用していくのであるが、しかしそれを現す人間の姿は、題材から独立したそれ自身の意義を担ってくる。ここにイタリアのルネッサンスの根本的な意義は現れているように思われる。」



ルネッサンスの絵画を目にして、言葉があふれ出てくる和辻氏。
真の芸術に圧倒されつつも、それを自分の中で受け止め、一旦自分なりに咀嚼して、外に向けて発信できる技がうらやましい。

次々と論評し、語っていく様子はすなわち感動の証であり、興奮しながら鑑賞した様子が伝わるようでもある。
2012.10.15 Mon | Art| 0 track backs,
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