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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
河野裕子さん逝く
日経新聞夕刊のプロムナードは大好きなコーナーで、その日のうちに読めなかった時は、通勤のお供にして電車の中で読むようにしているほど。

そんな日々の中、目についたのは、最近までコーナーを担当されていた細胞学者で歌人という永田和宏さん。

存じ上げなかったので、最初この理系・文系の組み合わせを奇異に感じた。
理系苦手意識ゆえか、その双方で才覚があることが、超人間的な感じを受けて。

藤原正彦さんみたいだな、とも。
数学者でありながら、「若き数学者のアメリカ」で鮮烈に文壇デビューし、その後は周知の通り。
両親が作家だから文才はわかるにして、そういう人が数学者という事実にあきれたものだ。

話がそれたけれど、その永田さんの随筆である日心を突かれた。
有名な歌人という奥様の河野裕子が癌再発で、治る見込みがないと。

夫である永田さんは細胞学者なだけに、楽観視できない辛さがある。

「転移・再発がどういう状況を意味するのかは、癌に関わる研究をしていた私には、誰に言われなくともよくわかる。にわかに妻との時間が抜き差しならない切実なものとして、心を占め始めた。」


そして、楽しく過ごそうとして、楽しい分だけ減って行く1日が惜しまれるとも。


悲哀はますます強くなり、共有した時間の意義は、2人で話題にしてこそ意味があり、思い出す時間が共有できなくなることの寂しさは、「想像がつかない」とも。


リアルタイムで綴られた言葉のひとつひとつがとても生々しく、締め付けられるような思いで読んでいた。


そして今回の訃報。


病床にあってますます冴え渡ったとも言われる奥様の歌、そして呼応するご主人の歌の数々。

特に河野さんの歌は昇華されたような響きがあり、おふたりにとって歌が救いになったのではないかとも思えた。

ご冥福をお祈りします。
2010.08.18 Wed | Society| 0 track backs,
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