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日常風景 * 写真・文章 Copyright@”Mas Ciclismo Diary”
ヴェネツィアのゲットーにて 4 - 足を踏み入れる
ヴェネツィア回想の続き。
「5月にヴェネツィアに行きますからねー」とあちこちに宣言したせいか、いろいろな人がさまざまなアドバイスをくれて、あの本を読め、あれがいい、これがいい、とか。

それらの言葉にのせられて読んだのが、陣内秀信氏のシリーズであり、退廃的なあの「ヴェニスに死す」(トーマス・マン)であり、はたまた塩野七生さんの「海の都の物語」だった。

須賀敦子だけはわざと読み返すことはしなかった。先入観をもちたくなかったから。彼女が感動を覚えた場所に行ったら、自分も感動しなければならない、そんな自分への無理強いが嫌だったし、他の人の感情で自分の気持ちがブロックされるのは避けたかった。

事前に絶対に見ようと入念に下調べをしておいたのは、総督(ドージェ)邸、ドゥカーレ宮殿。けれど、風邪気味の観光客の多さで気勢がそがれ、予定を変更。ふらりとゲットーに行くことにした。

朝食を済ませてすぐにヴァポレットの乗り場に向かう。ジロのチームプレゼンは15時から。時間はたっぷりある。ゲットーの所在地はちゃんと調べていなかったけれど、サンタルチア駅を出て左に進むらしいことは知っていた。行けばどうにかなるだろう。。。

。。。どうにかなった。げんこつ橋を右に眺めつつ、左前方に進路をとると、街の色が、匂いが、雰囲気がガラリと変わった。

いきなり目に飛び込んできたのは、アラビア文字のような看板であり、ユダヤの象徴ダビデの星(写真の青い星)だった。

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ポンテデゲットーヴェッキオ、カンポデゲットーノーヴォの看板がほどなく現れた。古いゲットーの橋、新しいゲットーの広場。

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ソットポルテゴデゲットーノーヴォと書かれている。新しいゲットーのトンネルの意。ソットポルテゴは建物に付随したトンネルのこと。
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広場に足を踏み入れて、ドキっとさせられたのがこのレリーフ。いきなりホロコーストの彫刻。前回書いたように、この地を訪れるに際し、ゲットーとホロコーストを頭の中で直結させていなかったため、軽いパンチを食らった。

狭い土地に押し込められたユダヤ人の姿にゲットーの悲劇を感じていたけれど、ホロコーストというユダヤ人全体の悲劇にまで思いが至らなかった。

ちょこんと頭にのせる黒い帽子・キッパを被った人、書店に並ぶホロコーストの歴史書、見慣れぬ文字や人名、痛ましいレリーフ、といったユダヤを偲ばせるものたちが詰め込まれた広場は、ちょっと前まで風景を楽しんだヴェネツィアの中心部とは別世界。

昔と違って、出入りを限定する門があるわけでもないし、街の入り口にカギがかかっているわけでもない。物理的に開放されてはいるものの、逆に内側から扉を閉ざしているような印象がある。頑ななまでに、アイデンティティを失うまいとする空気がそこには充満していた。

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2009.06.22 Mon | Travel-Italy| 0 track backs,
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